29 / 46
29.分かった・・・
しおりを挟む
「姉貴は恐れたんだよ、モルさんを。 モルさんはひとつ残らず、1パーセントも残さずユニを攫って行っちまうって。 そんなのはイヤだって、許せないって・・
全部なんてズルいって・・まぁ、よく分かんねえ事言ってたよ。」
それで自分が全部持ってったのか? 許せないのはこっちだ・・!
「ユニは最初からハッキリ宣言した。 子供の父親にはなるけど、姉貴の夫にはならねえって。 結婚は子供の為、書類上だけだって。 姉貴は承諾した。
・・・また浅はかに、そんな事言ったって、一緒に居れば男と女、なるようになる、って思ってたんだ。 でもユニは宣言通り、ピコの父親として、それだけの存在でい続けた。 ・・・ずっと、モルさんを想い続けてた・・・」
・・でも、今は別の誰かと居る。 別の誰かを想っている・・・
多分、3年前から・・・
「・・1か月後のピコさんの誕生日、成人の祝いの日、多分ユニは来ないと思います。 あのスーツは多分、ユニのではなくて、フットさんの為にあつらえた物でしょう・・・ユニからフットさんへのプレゼントですよ。 あれを着て、フットさんが父親としてピコさんとダンスを踊る為の・・」
「えぇっ!? 何言って・・はっ・・
あの時ユニはスーツを俺に見せて『どう思う?』って訊いて来た。 俺は『いいじゃねえか! いい色だ! 俺、この色大好きだよ!』って言ったら『良かった! きっと似合うよ!』って・・・ まるで俺に似合うって言ってるみたいでちょっと変に思ったけど、『ユニなら何でも似合うさ!』って返して・・ユニはニッコリ笑った・・・あれ・・まさか、だって・・」
「・・スーツを見せてもらった時、色がフットさんに似合いそうだと感じました。 ・・帰ったら袖を通してみて下さい。 ユニとフットさんでは体型が違う。 着てみれば分かります。 きっとピッタリだと思います。」
叔父としてピコさんを見守るフットさんに父親としての幸せを返そうとユニなら思うだろう。 ピコさんもユニが実の父でないと知っているのだから、受け入れるだろう・・実際、フットさんとピコさんは仲の良い実の親子にしか見えない・・
「俺は・・俺は父親失格なんだ・・! 俺は恐くて、ピコが生まれても遠くの村に逃げてずっと会わなかった・・なかった事にしたかった・・でもピコが2才になる少し前、ユニがピコを抱いて俺に会いに来た。 俺はあんなに恐かったのに、ピコを見た途端、可愛くて可愛くて、夢中になっちまった。 それでユニがよ、一緒にピコを守ろう、育てようって言ってくれて・・・だから、今があるんだ・・・!」
大柄なフットさんが体を丸めて俯く姿は、長い間の苦悩を感じさせる。
「・・・その頃だと思う。 ユニがピコは自分の子じゃないと確信したのは。 体が弱いのを心配して、大きい病院でピコを診察してもらって・・医者に言われたんだろう、親子関係は無いって。 ハッキリとじゃないけど、そんな事言ってたような・・それに、ピコの病気が・・」
リリリ~~ン、リリリ~~ン・・・
その時、シティ行きの列車の到着を報せるベルが響き渡る。
「はっ・・、あ、じゃモルさん、また・・。 あ、コレ、スーツの箱の裏に貼ってあった受取証! ユニが出稼ぎに出る日の朝、スーツ預けにウチに寄る直前に、仕立物屋さんから受け取って来たって言ってたから、その受け取りの日がユニが出稼ぎに出た日だよ! あと、これ、ピコから手紙・・列車の中で読んでやってくれ。 ホラ、乗り遅れるともう今日の便はねえよ? じゃ、気を付けてな、」
フットさんに急かされ、バタバタと列車に乗り込み、ブンブン手を振るフットさんに手を振り返す。 きっとフットさんもこれから急いで反対方向行きの列車に乗り、オーム街のアパートの部屋に大事に保管しているスーツに袖を通してみるだろう・・
・・ふぅ・・動き出した列車の中で、ピコさんの手紙を開ける。
ありあわせの紙に大急ぎで書いた様な文字・・・何かピコさんらしくないな・・
『モルさんへ。 叔父さんから、モルさんが私の入院先と入院期間を知りたがっていたと聞いたので、手紙を。 今聞いたので、時間が無くて、汚い字でごめんなさい!』
・・ああ、そういう事か・・
・・フッ・・ 何かあの二人のドタバタ劇が想像出来ておかしい・・・
妙にほっこりしながらピコさんが大急ぎで書いてくれた手紙に目を通し ―――
背筋がゾクリとする。
慌ててフットさんが渡してくれたスーツの受取証の日付を確認する。
・・・ッッ!!?・・・
・・な、何だ!? この符合は!? 何を意味している!?
イヤ待て・・嘘だ! 違う、そんな事あるはずない!! 違う! そんな・・
考えまいとするのに頭はどんどん一つの可能性に向けて突き進んでしまう。
重要じゃないと見逃していたモノ、聞き逃していた言葉・・・何よりも・・
自分が持っている証拠・・・
・・・あぁ・・・
分かった・・・
分かって・・しまった・・・
ユニが、今、どこにいるのか・・・
全部なんてズルいって・・まぁ、よく分かんねえ事言ってたよ。」
それで自分が全部持ってったのか? 許せないのはこっちだ・・!
「ユニは最初からハッキリ宣言した。 子供の父親にはなるけど、姉貴の夫にはならねえって。 結婚は子供の為、書類上だけだって。 姉貴は承諾した。
・・・また浅はかに、そんな事言ったって、一緒に居れば男と女、なるようになる、って思ってたんだ。 でもユニは宣言通り、ピコの父親として、それだけの存在でい続けた。 ・・・ずっと、モルさんを想い続けてた・・・」
・・でも、今は別の誰かと居る。 別の誰かを想っている・・・
多分、3年前から・・・
「・・1か月後のピコさんの誕生日、成人の祝いの日、多分ユニは来ないと思います。 あのスーツは多分、ユニのではなくて、フットさんの為にあつらえた物でしょう・・・ユニからフットさんへのプレゼントですよ。 あれを着て、フットさんが父親としてピコさんとダンスを踊る為の・・」
「えぇっ!? 何言って・・はっ・・
あの時ユニはスーツを俺に見せて『どう思う?』って訊いて来た。 俺は『いいじゃねえか! いい色だ! 俺、この色大好きだよ!』って言ったら『良かった! きっと似合うよ!』って・・・ まるで俺に似合うって言ってるみたいでちょっと変に思ったけど、『ユニなら何でも似合うさ!』って返して・・ユニはニッコリ笑った・・・あれ・・まさか、だって・・」
「・・スーツを見せてもらった時、色がフットさんに似合いそうだと感じました。 ・・帰ったら袖を通してみて下さい。 ユニとフットさんでは体型が違う。 着てみれば分かります。 きっとピッタリだと思います。」
叔父としてピコさんを見守るフットさんに父親としての幸せを返そうとユニなら思うだろう。 ピコさんもユニが実の父でないと知っているのだから、受け入れるだろう・・実際、フットさんとピコさんは仲の良い実の親子にしか見えない・・
「俺は・・俺は父親失格なんだ・・! 俺は恐くて、ピコが生まれても遠くの村に逃げてずっと会わなかった・・なかった事にしたかった・・でもピコが2才になる少し前、ユニがピコを抱いて俺に会いに来た。 俺はあんなに恐かったのに、ピコを見た途端、可愛くて可愛くて、夢中になっちまった。 それでユニがよ、一緒にピコを守ろう、育てようって言ってくれて・・・だから、今があるんだ・・・!」
大柄なフットさんが体を丸めて俯く姿は、長い間の苦悩を感じさせる。
「・・・その頃だと思う。 ユニがピコは自分の子じゃないと確信したのは。 体が弱いのを心配して、大きい病院でピコを診察してもらって・・医者に言われたんだろう、親子関係は無いって。 ハッキリとじゃないけど、そんな事言ってたような・・それに、ピコの病気が・・」
リリリ~~ン、リリリ~~ン・・・
その時、シティ行きの列車の到着を報せるベルが響き渡る。
「はっ・・、あ、じゃモルさん、また・・。 あ、コレ、スーツの箱の裏に貼ってあった受取証! ユニが出稼ぎに出る日の朝、スーツ預けにウチに寄る直前に、仕立物屋さんから受け取って来たって言ってたから、その受け取りの日がユニが出稼ぎに出た日だよ! あと、これ、ピコから手紙・・列車の中で読んでやってくれ。 ホラ、乗り遅れるともう今日の便はねえよ? じゃ、気を付けてな、」
フットさんに急かされ、バタバタと列車に乗り込み、ブンブン手を振るフットさんに手を振り返す。 きっとフットさんもこれから急いで反対方向行きの列車に乗り、オーム街のアパートの部屋に大事に保管しているスーツに袖を通してみるだろう・・
・・ふぅ・・動き出した列車の中で、ピコさんの手紙を開ける。
ありあわせの紙に大急ぎで書いた様な文字・・・何かピコさんらしくないな・・
『モルさんへ。 叔父さんから、モルさんが私の入院先と入院期間を知りたがっていたと聞いたので、手紙を。 今聞いたので、時間が無くて、汚い字でごめんなさい!』
・・ああ、そういう事か・・
・・フッ・・ 何かあの二人のドタバタ劇が想像出来ておかしい・・・
妙にほっこりしながらピコさんが大急ぎで書いてくれた手紙に目を通し ―――
背筋がゾクリとする。
慌ててフットさんが渡してくれたスーツの受取証の日付を確認する。
・・・ッッ!!?・・・
・・な、何だ!? この符合は!? 何を意味している!?
イヤ待て・・嘘だ! 違う、そんな事あるはずない!! 違う! そんな・・
考えまいとするのに頭はどんどん一つの可能性に向けて突き進んでしまう。
重要じゃないと見逃していたモノ、聞き逃していた言葉・・・何よりも・・
自分が持っている証拠・・・
・・・あぁ・・・
分かった・・・
分かって・・しまった・・・
ユニが、今、どこにいるのか・・・
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
はばたいたのは
HyperBrainProject
ミステリー
連続殺人事件発生――
担当は川村正義35歳、階級は警部補。必死の捜査にも関わらず中々犯人の足取りを掴む事が出来ず行き詰まっていた矢先、部下であり相棒が被害者に……。
それにより本腰を上げた上層部が取った行動は、警視庁からの人員の派遣だった――
今、この難事件を解決するが為に派遣された九条正美を新たに相棒に迎え、正義は事件解決に挑む。
Springs -ハルタチ-
ささゆき細雪
ミステリー
――恋した少女は、呪われた人殺しの魔女。
ロシアからの帰国子女、上城春咲(かみじょうすざく)は謎めいた眠り姫に恋をした。真夏の学園の裏庭で。
金木犀咲き誇る秋、上城はあのときの少女、鈴代泉観(すずしろいずみ)と邂逅する。だが、彼女は眠り姫ではなく、クラスメイトたちに畏怖されている魔女だった。
ある放課後。上城は豊(ゆたか)という少女から、半年前に起きた転落事故の現場に鈴代が居合わせたことを知る。彼女は人殺しだから関わるなと憎らしげに言われ、上城は余計に鈴代のことが気になってしまう。
そして、鈴代の目の前で、父親の殺人未遂事件が起こる……
――呪いを解くのと、謎を解くのは似ている?
初々しく危うい恋人たちによる謎解きの物語、ここに開幕――!
顔の見えない探偵・霜降
秋雨千尋(あきさめ ちひろ)
ミステリー
【第2回ホラー・ミステリー小説大賞】エントリー作品。
先天性の脳障害で、顔を見る事が出来ない霜降探偵(鎖骨フェチ)。美しい助手に支えられながら、様々な事件の見えない顔に挑む。
仏眼探偵 ~樹海ホテル~
菱沼あゆ
ミステリー
『推理できる助手、募集中。
仏眼探偵事務所』
あるとき芽生えた特殊な仏眼相により、手を握った相手が犯人かどうかわかるようになった晴比古。
だが、最近では推理は、助手、深鈴に丸投げしていた。
そんな晴比古の許に、樹海にあるホテルへの招待状が届く。
「これから起きる殺人事件を止めてみろ」という手紙とともに。
だが、死体はホテルに着く前に自分からやってくるし。
目撃者の女たちは、美貌の刑事、日下部志貴に会いたいばかりに、嘘をつきまくる。
果たして、晴比古は真実にたどり着けるのか――?
復讐の旋律
北川 悠
ミステリー
昨年、特別賞を頂きました【嗜食】は現在、非公開とさせていただいておりますが、改稿を加え、近いうち再搭載させていただきますので、よろしくお願いします。
復讐の旋律 あらすじ
田代香苗の目の前で、彼女の元恋人で無職のチンピラ、入谷健吾が無残に殺されるという事件が起きる。犯人からの通報によって田代は保護され、警察病院に入院した。
県警本部の北川警部が率いるチームが、その事件を担当するが、圧力がかかって捜査本部は解散。そんな時、川島という医師が、田代香苗の元同級生である三枝京子を連れて、面会にやってくる。
事件に進展がないまま、時が過ぎていくが、ある暴力団組長からホワイト興産という、謎の団体の噂を聞く。犯人は誰なのか? ホワイト興産とははたして何者なのか?
まあ、なんというか古典的な復讐ミステリーです……
よかったら読んでみてください。
アザー・ハーフ
新菜いに
ミステリー
『ファンタジー×サスペンス。信頼と裏切り、謎と異能――嘘を吐いているのは誰?』
ある年の冬、北海道沖に浮かぶ小さな離島が一晩で無人島と化した。
この出来事に関する情報は一切伏せられ、半年以上経っても何が起こったのか明かされていない――。
ごく普通の生活を送ってきた女性――小鳥遊蒼《たかなし あお》は、ある時この事件に興味を持つ。
事件を調べているうちに出会った庵朔《いおり さく》と名乗る島の生き残り。
この男、死にかけた蒼の傷をその場で治し、更には壁まで通り抜けてしまい全く得体が知れない。
それなのに命を助けてもらった見返りで、居候として蒼の家に住まわせることが決まってしまう。
蒼と朔、二人は協力して事件の真相を追い始める。
正気を失った男、赤い髪の美女、蒼に近寄る好青年――彼らの前に次々と現れるのは敵か味方か。
調査を進めるうちに二人の間には絆が芽生えるが、周りの嘘に翻弄された蒼は遂には朔にまで疑惑を抱き……。
誰が誰に嘘を吐いているのか――騙されているのが主人公だけとは限らない、ファンタジーサスペンス。
※ミステリーにしていますがサスペンス色強めです。
※作中に登場する地名には架空のものも含まれています。
※痛グロい表現もあるので、苦手な方はお気をつけください。
本作はカクヨム・なろうにも掲載しています。(カクヨムのみ番外編含め全て公開)
©2019 新菜いに
四次元残響の檻(おり)
葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。
影蝕の虚塔 - かげむしばみのきょとう -
葉羽
ミステリー
孤島に建つ天文台廃墟「虚塔」で相次ぐ怪死事件。被害者たちは皆一様に、存在しない「何か」に怯え、精神を蝕まれて死に至ったという。天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に島を訪れ、事件の謎に挑む。だが、彼らを待ち受けていたのは、常識を覆す恐るべき真実だった。歪んだ視界、錯綜する時間、そして影のように忍び寄る「異形」の恐怖。葉羽は、科学と論理を武器に、目に見えない迷宮からの脱出を試みる。果たして彼は、虚塔に潜む戦慄の謎を解き明かし、彩由美を守り抜くことができるのか? 真実の扉が開かれた時、予測不能のホラーが読者を襲う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる