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22.溜息
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15分ほど列車に揺られ、ビット村の駅に降り立つ。
昨日、ボーっとしていたせいで間違えて降りてしまった駅。 何やら懐かしい。
「・・ところでフットさん、恐くてずっとスルーしていたのですが、やはり訊きます。 この大量の荷物はまさか全部食べ物ですか?」
俺は勇気を出してフットさんが現れてからずっと気になっていた事を訊いてみる。
「モチロンだよ! たっくさん作ってきたから、たっくさん食ってくれよ! あ、ちょっとここで待っててくれ。」
そう言ってフットさんは駅前のカフェへ入って行く。
すぐに一人の男と出て来て、「エーカーさんが公園の方へ行くっていうから、荷馬車に乗せてもらおう。 歩ける距離だけど、なんせ荷物が多いからな!」 と言う。
に・・・荷馬車! 昔動画で見た事ある・・スゴイな、体験できるなんて・・!
「すげえ・・・でけえ・・・」
「本当に犬か!? 牛じゃねえのか!?」
「カッコイイけど、怖えな・・噛みついたりしねえか?」
カフェのドアから顔だけ出して、こちらを覗きながら話すオジサン達・・・
カフェの窓に張り付くようにして犬を見ようと必死の老若男女・・
昨日とほぼ同じ顔ぶれ・・・
・・・この村の人達はヒマなのか!?
・・あぁいや、多分仕事の合間の休息なのだろう。 休息も仕事のうちだ。
畑仕事は重労働だそうだからな。
・・・ユニはここで何の仕事をしていたのだろう・・
ピコさんの治療費の為に出稼ぎに出たらしいから・・あ、違う・・ナノが言うには今、ユニは愛する人と一緒に居る・・つまり出稼ぎじゃない?・・逃亡中?
あぁ俺、混乱してるな・・セルシウスに会うまでに頭の中整理しておかなきゃ・・
・・ん? エーカーさんという人が、俺をジッと見ている・・・
「・・どうも。 エーカーさん? モルと言います。 お世話になります。」
「・・ハッ! あ、あぁ、どうせ通り道よ。 いやしかし、シティの男はみんなシュッとしてるんだねぇ・・ユニもそうだけど、モルさんも俳優さんかモデルさんみたいだ・・・同じ人間とは思えねえ・・シティは夢みてえな所なんだろうなぁ・・・」
出た、また“シュッ”が・・・ビット村で流行ってるのかな・・ “シュッ”
「そんな事は・・・ シティには、地方での生活に憧れる人も多いですよ。」
「えぇ~~? そりゃァねえわ。 こんな田舎の暮らし、シティの人には耐えらんねえよ! 医療だって教育だって差があり過ぎ・・あっ、ユニは別だけどな!」
「そうそう、ユニは俺らの生活に馴染んでくれてな、村の祭りも行事も盛り上げてくれてよ、」
「あ~~、そりゃもう、盛り上がり方が全然違ったよな、ユニを見に近隣の村や・・村どころか街の奴らまで集まって来たもんな、」
・・・気のせいじゃない。 いつの間にかカフェに居た連中に取り囲まれている・・まぁいい・・・気になっている事を訊いてしまえ。
「ユニはここで何の仕事をしていたのですか? 仕事仲間の人とか知りせんか?」
近親者であるピコさんやフットさんに訊けばいい事なんだろうが、他人の方が知っている事もあるし・・ね。
「仕事? 何か、調べごとをする仕事って言ってたよなぁ?」
「考える仕事って言ってたよ、前に。」
「山とかで何か調査したりもしてたよねぇ・・」
「それはピコの体調が良くなる薬草を探してたんだろ?」
「あぁ・・じゃあ仕事じゃねえか・・ふむ・・」
・・情報がぼんやりしている。 誰もユニの仕事を明確に説明出来ない。
ぐる~~~ん・・・ 皆の顔が自然とフットさんとピコさんの方を向く。
“お前等なら分かってるだろう? ユニの仕事を説明してくれ”と皆の顔が要求している。
「お、俺は仕事の事とかは話した事ねえな、ピコの事ばっかりでよ・・」
「・・お父さんは、仕事の時は部屋にこもっちゃうから、部屋で何してたかは分からないです。 部屋には入らない様に言われていたから、部屋の中の様子も分かりません。 前にチラッと見えた時は、何か機械がたくさんあった様な・・」
「あぁ、じゃぁ機械屋だな! 機械の修理工だよ! そうそう、手先が器用で、よく壊れたラジオとかテレビとかトラクターとか車とか直してくれたよな!」
「あ~~、そうそう! 車なんか持ってる人の方が少ねえから、車屋なんて近くにねえしよ、故障しちまったら直すのにそりゃ時間も金もかかって大変だったけど、ユニが来てからはユニがダメになった部品を取り寄せてくれて、あとは鼻歌歌いながら直してくれるから、みんなメチャメチャ助かってなぁ・・」
「そうだ! ウチも直してもらった! パン焼き機が壊れて困ってた時に楽しそうにチャチャッと直してくれたよ! あん時ゃ助かったっけなぁ・・古くても母親の形見だから買い替えたくないって言ってた女房も大喜びよ。」
「ウチも! ボイラーがおかしくなった時、直してくれたよ! 本当、器用だよな! あのキレイな手で何でも直しちまうんだ!」
・・・器用なだけでは直せないと誰も気付いていない様だな・・それ程簡単に直しまくって来たんだな・・・つまり便利屋的な事をしてたというワケか・・
「あ、だけど金払ってねえよ、大した事無いから別にいいって。」
「ウチもだ。 部品代だけ。 気分転換になって丁度いいとか言って・・」
「ウチもよ。 楽しく手を動かしてるといいアイデアが浮かぶから、それで充分って言って、お礼を受け取ってくれなかった。」
・・・便利屋でもない!
・・何で調べれば調べるほど謎が深まるんだよ、君は!?
15才の時俺の前から姿を消して16年・・君はここで何をしていた!?
そしてその後行方をくらませて3年・・君はどこで何をしている!?
君の考えも行動もまるで読めない・・想像できない・・
変わらず君を想い続けて来た俺とは違って、君はまるで別人だね・・(溜息)
昨日、ボーっとしていたせいで間違えて降りてしまった駅。 何やら懐かしい。
「・・ところでフットさん、恐くてずっとスルーしていたのですが、やはり訊きます。 この大量の荷物はまさか全部食べ物ですか?」
俺は勇気を出してフットさんが現れてからずっと気になっていた事を訊いてみる。
「モチロンだよ! たっくさん作ってきたから、たっくさん食ってくれよ! あ、ちょっとここで待っててくれ。」
そう言ってフットさんは駅前のカフェへ入って行く。
すぐに一人の男と出て来て、「エーカーさんが公園の方へ行くっていうから、荷馬車に乗せてもらおう。 歩ける距離だけど、なんせ荷物が多いからな!」 と言う。
に・・・荷馬車! 昔動画で見た事ある・・スゴイな、体験できるなんて・・!
「すげえ・・・でけえ・・・」
「本当に犬か!? 牛じゃねえのか!?」
「カッコイイけど、怖えな・・噛みついたりしねえか?」
カフェのドアから顔だけ出して、こちらを覗きながら話すオジサン達・・・
カフェの窓に張り付くようにして犬を見ようと必死の老若男女・・
昨日とほぼ同じ顔ぶれ・・・
・・・この村の人達はヒマなのか!?
・・あぁいや、多分仕事の合間の休息なのだろう。 休息も仕事のうちだ。
畑仕事は重労働だそうだからな。
・・・ユニはここで何の仕事をしていたのだろう・・
ピコさんの治療費の為に出稼ぎに出たらしいから・・あ、違う・・ナノが言うには今、ユニは愛する人と一緒に居る・・つまり出稼ぎじゃない?・・逃亡中?
あぁ俺、混乱してるな・・セルシウスに会うまでに頭の中整理しておかなきゃ・・
・・ん? エーカーさんという人が、俺をジッと見ている・・・
「・・どうも。 エーカーさん? モルと言います。 お世話になります。」
「・・ハッ! あ、あぁ、どうせ通り道よ。 いやしかし、シティの男はみんなシュッとしてるんだねぇ・・ユニもそうだけど、モルさんも俳優さんかモデルさんみたいだ・・・同じ人間とは思えねえ・・シティは夢みてえな所なんだろうなぁ・・・」
出た、また“シュッ”が・・・ビット村で流行ってるのかな・・ “シュッ”
「そんな事は・・・ シティには、地方での生活に憧れる人も多いですよ。」
「えぇ~~? そりゃァねえわ。 こんな田舎の暮らし、シティの人には耐えらんねえよ! 医療だって教育だって差があり過ぎ・・あっ、ユニは別だけどな!」
「そうそう、ユニは俺らの生活に馴染んでくれてな、村の祭りも行事も盛り上げてくれてよ、」
「あ~~、そりゃもう、盛り上がり方が全然違ったよな、ユニを見に近隣の村や・・村どころか街の奴らまで集まって来たもんな、」
・・・気のせいじゃない。 いつの間にかカフェに居た連中に取り囲まれている・・まぁいい・・・気になっている事を訊いてしまえ。
「ユニはここで何の仕事をしていたのですか? 仕事仲間の人とか知りせんか?」
近親者であるピコさんやフットさんに訊けばいい事なんだろうが、他人の方が知っている事もあるし・・ね。
「仕事? 何か、調べごとをする仕事って言ってたよなぁ?」
「考える仕事って言ってたよ、前に。」
「山とかで何か調査したりもしてたよねぇ・・」
「それはピコの体調が良くなる薬草を探してたんだろ?」
「あぁ・・じゃあ仕事じゃねえか・・ふむ・・」
・・情報がぼんやりしている。 誰もユニの仕事を明確に説明出来ない。
ぐる~~~ん・・・ 皆の顔が自然とフットさんとピコさんの方を向く。
“お前等なら分かってるだろう? ユニの仕事を説明してくれ”と皆の顔が要求している。
「お、俺は仕事の事とかは話した事ねえな、ピコの事ばっかりでよ・・」
「・・お父さんは、仕事の時は部屋にこもっちゃうから、部屋で何してたかは分からないです。 部屋には入らない様に言われていたから、部屋の中の様子も分かりません。 前にチラッと見えた時は、何か機械がたくさんあった様な・・」
「あぁ、じゃぁ機械屋だな! 機械の修理工だよ! そうそう、手先が器用で、よく壊れたラジオとかテレビとかトラクターとか車とか直してくれたよな!」
「あ~~、そうそう! 車なんか持ってる人の方が少ねえから、車屋なんて近くにねえしよ、故障しちまったら直すのにそりゃ時間も金もかかって大変だったけど、ユニが来てからはユニがダメになった部品を取り寄せてくれて、あとは鼻歌歌いながら直してくれるから、みんなメチャメチャ助かってなぁ・・」
「そうだ! ウチも直してもらった! パン焼き機が壊れて困ってた時に楽しそうにチャチャッと直してくれたよ! あん時ゃ助かったっけなぁ・・古くても母親の形見だから買い替えたくないって言ってた女房も大喜びよ。」
「ウチも! ボイラーがおかしくなった時、直してくれたよ! 本当、器用だよな! あのキレイな手で何でも直しちまうんだ!」
・・・器用なだけでは直せないと誰も気付いていない様だな・・それ程簡単に直しまくって来たんだな・・・つまり便利屋的な事をしてたというワケか・・
「あ、だけど金払ってねえよ、大した事無いから別にいいって。」
「ウチもだ。 部品代だけ。 気分転換になって丁度いいとか言って・・」
「ウチもよ。 楽しく手を動かしてるといいアイデアが浮かぶから、それで充分って言って、お礼を受け取ってくれなかった。」
・・・便利屋でもない!
・・何で調べれば調べるほど謎が深まるんだよ、君は!?
15才の時俺の前から姿を消して16年・・君はここで何をしていた!?
そしてその後行方をくらませて3年・・君はどこで何をしている!?
君の考えも行動もまるで読めない・・想像できない・・
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