Man under the moon

ハートリオ

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15.赤面する男

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「フットさん、ユニが出稼ぎに出た日 ――  ビット村を出た正確な日付は分かりますか? もしくは最後にユニと会った日。」


犬のおかげで気を取り直した俺は、目的を思い出し、フットさんに質問する。

日付が分かれば、自宅の機器を使い、その日のビット村周辺の映像データにアクセス・解析してユニの消息を追えるはず。


・・フットさんが言う様に、1か月後にユニは帰って来るだろう。
だが、それまで只待つつもりはない。 一刻も早くユニに会いたい。 会って、口説き落としたい。


「えぇ!? いやぁ、もう3年も前だからなぁ・・とにかくさ、突然だったんだよ。 朝、突然ユニが訪ねて来て、・・あれ? まだ列車動いてなかったんじゃないか? どうやって来たんだろ・・あ、とにかく早朝だよ。 スーツ持ってさ、ピコの成人のお祝いまで預かってくれって。 もっと時間をかけて色々用意するつもりだったけど、急がなきゃならない事になったって言ってた。 ユニにしては珍しく焦った感じでバタバタしてたよ。 え~~と、いつだったっけかなぁ・・ ゴメン、今は思い出せねえや。 どっかにメモがあるかもしれねえから、探しとくよ。」


―― そうか。 まぁ、仕方ないか・・


「ピコさんの入院先とか、入院期間とかは・・・あ、それも知りませんか・・・」


・・まぁこれはピコさんが分かるだろう。 ユニは一度はそこへお見舞いに行ってるんだから、出稼ぎはその後・・・日付が絞れるはずだ。


「・・す、すまねえ・・俺、役に立たなくて・・」


大柄な体を小さくしてしょんぼり謝るフットさん。 叱られた子供の様に俯いてしまった。


「あぁ、いえ、3年も前の正確な日付なんて、覚えていなくて当り前ですよ。 よほど大きな出来事でもなければ・・」

―― 俺の様に・・・ 


「・・もし覚えていればと思っただけなので、気にしないで下さい。」


穏やかにそう言うと、フットさんがホッとした様子で顔を上げる。 その時、


「叔父さ~~ん、モルさ~~ん!」


と、ピコさんの明るいソプラノが聞こえて来る。

え? 約束の時間よりだいぶ早いけど、もう来た?

声がした方角を見ると、ピコさんがニコニコしながらブンブン手を振って小走りでやって来る。 あれ? 何か・・


「ピコ、約束は昼だろ? まだ9時じゃねえか。 ・・・そ、それに・・ ゴホン、何か今日はおめかししてるじゃねえか? どうしたんだよ・・」


「え・・そ、そんな事・・だ、だって、お父さんの大切な人に会うのに、変な格好じゃ失礼じゃない・・」


「そうだぞ? モルさんはユニの大切な人なんだぞ? ピコが好きになったって無理なんだからな!? ユニには絶対勝てない・・分かるだろう?」


「お、叔父さんのバカッ! 私、そんな変な気持ちじゃないのに!! お父さんの大切な人だから、私にとっても大切な人ってだけなのに・・!」


・・・叔父と姪とでイチャイチャするのは構わないが、その、曖昧で意味深な表現で連呼するのはやめてくれ。



“ユニの大切な人”って・・・(赤面)



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