15 / 46
15.赤面する男
しおりを挟む
「フットさん、ユニが出稼ぎに出た日 ―― ビット村を出た正確な日付は分かりますか? もしくは最後にユニと会った日。」
犬のおかげで気を取り直した俺は、目的を思い出し、フットさんに質問する。
日付が分かれば、自宅の機器を使い、その日のビット村周辺の映像データにアクセス・解析してユニの消息を追えるはず。
・・フットさんが言う様に、1か月後にユニは帰って来るだろう。
だが、それまで只待つつもりはない。 一刻も早くユニに会いたい。 会って、口説き落としたい。
「えぇ!? いやぁ、もう3年も前だからなぁ・・とにかくさ、突然だったんだよ。 朝、突然ユニが訪ねて来て、・・あれ? まだ列車動いてなかったんじゃないか? どうやって来たんだろ・・あ、とにかく早朝だよ。 スーツ持ってさ、ピコの成人のお祝いまで預かってくれって。 もっと時間をかけて色々用意するつもりだったけど、急がなきゃならない事になったって言ってた。 ユニにしては珍しく焦った感じでバタバタしてたよ。 え~~と、いつだったっけかなぁ・・ ゴメン、今は思い出せねえや。 どっかにメモがあるかもしれねえから、探しとくよ。」
―― そうか。 まぁ、仕方ないか・・
「ピコさんの入院先とか、入院期間とかは・・・あ、それも知りませんか・・・」
・・まぁこれはピコさんが分かるだろう。 ユニは一度はそこへお見舞いに行ってるんだから、出稼ぎはその後・・・日付が絞れるはずだ。
「・・す、すまねえ・・俺、役に立たなくて・・」
大柄な体を小さくしてしょんぼり謝るフットさん。 叱られた子供の様に俯いてしまった。
「あぁ、いえ、3年も前の正確な日付なんて、覚えていなくて当り前ですよ。 よほど大きな出来事でもなければ・・」
―― 俺の様に・・・
「・・もし覚えていればと思っただけなので、気にしないで下さい。」
穏やかにそう言うと、フットさんがホッとした様子で顔を上げる。 その時、
「叔父さ~~ん、モルさ~~ん!」
と、ピコさんの明るいソプラノが聞こえて来る。
え? 約束の時間よりだいぶ早いけど、もう来た?
声がした方角を見ると、ピコさんがニコニコしながらブンブン手を振って小走りでやって来る。 あれ? 何か・・
「ピコ、約束は昼だろ? まだ9時じゃねえか。 ・・・そ、それに・・ ゴホン、何か今日はおめかししてるじゃねえか? どうしたんだよ・・」
「え・・そ、そんな事・・だ、だって、お父さんの大切な人に会うのに、変な格好じゃ失礼じゃない・・」
「そうだぞ? モルさんはユニの大切な人なんだぞ? ピコが好きになったって無理なんだからな!? ユニには絶対勝てない・・分かるだろう?」
「お、叔父さんのバカッ! 私、そんな変な気持ちじゃないのに!! お父さんの大切な人だから、私にとっても大切な人ってだけなのに・・!」
・・・叔父と姪とでイチャイチャするのは構わないが、その、曖昧で意味深な表現で連呼するのはやめてくれ。
“ユニの大切な人”って・・・(赤面)
犬のおかげで気を取り直した俺は、目的を思い出し、フットさんに質問する。
日付が分かれば、自宅の機器を使い、その日のビット村周辺の映像データにアクセス・解析してユニの消息を追えるはず。
・・フットさんが言う様に、1か月後にユニは帰って来るだろう。
だが、それまで只待つつもりはない。 一刻も早くユニに会いたい。 会って、口説き落としたい。
「えぇ!? いやぁ、もう3年も前だからなぁ・・とにかくさ、突然だったんだよ。 朝、突然ユニが訪ねて来て、・・あれ? まだ列車動いてなかったんじゃないか? どうやって来たんだろ・・あ、とにかく早朝だよ。 スーツ持ってさ、ピコの成人のお祝いまで預かってくれって。 もっと時間をかけて色々用意するつもりだったけど、急がなきゃならない事になったって言ってた。 ユニにしては珍しく焦った感じでバタバタしてたよ。 え~~と、いつだったっけかなぁ・・ ゴメン、今は思い出せねえや。 どっかにメモがあるかもしれねえから、探しとくよ。」
―― そうか。 まぁ、仕方ないか・・
「ピコさんの入院先とか、入院期間とかは・・・あ、それも知りませんか・・・」
・・まぁこれはピコさんが分かるだろう。 ユニは一度はそこへお見舞いに行ってるんだから、出稼ぎはその後・・・日付が絞れるはずだ。
「・・す、すまねえ・・俺、役に立たなくて・・」
大柄な体を小さくしてしょんぼり謝るフットさん。 叱られた子供の様に俯いてしまった。
「あぁ、いえ、3年も前の正確な日付なんて、覚えていなくて当り前ですよ。 よほど大きな出来事でもなければ・・」
―― 俺の様に・・・
「・・もし覚えていればと思っただけなので、気にしないで下さい。」
穏やかにそう言うと、フットさんがホッとした様子で顔を上げる。 その時、
「叔父さ~~ん、モルさ~~ん!」
と、ピコさんの明るいソプラノが聞こえて来る。
え? 約束の時間よりだいぶ早いけど、もう来た?
声がした方角を見ると、ピコさんがニコニコしながらブンブン手を振って小走りでやって来る。 あれ? 何か・・
「ピコ、約束は昼だろ? まだ9時じゃねえか。 ・・・そ、それに・・ ゴホン、何か今日はおめかししてるじゃねえか? どうしたんだよ・・」
「え・・そ、そんな事・・だ、だって、お父さんの大切な人に会うのに、変な格好じゃ失礼じゃない・・」
「そうだぞ? モルさんはユニの大切な人なんだぞ? ピコが好きになったって無理なんだからな!? ユニには絶対勝てない・・分かるだろう?」
「お、叔父さんのバカッ! 私、そんな変な気持ちじゃないのに!! お父さんの大切な人だから、私にとっても大切な人ってだけなのに・・!」
・・・叔父と姪とでイチャイチャするのは構わないが、その、曖昧で意味深な表現で連呼するのはやめてくれ。
“ユニの大切な人”って・・・(赤面)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
はばたいたのは
HyperBrainProject
ミステリー
連続殺人事件発生――
担当は川村正義35歳、階級は警部補。必死の捜査にも関わらず中々犯人の足取りを掴む事が出来ず行き詰まっていた矢先、部下であり相棒が被害者に……。
それにより本腰を上げた上層部が取った行動は、警視庁からの人員の派遣だった――
今、この難事件を解決するが為に派遣された九条正美を新たに相棒に迎え、正義は事件解決に挑む。
Springs -ハルタチ-
ささゆき細雪
ミステリー
――恋した少女は、呪われた人殺しの魔女。
ロシアからの帰国子女、上城春咲(かみじょうすざく)は謎めいた眠り姫に恋をした。真夏の学園の裏庭で。
金木犀咲き誇る秋、上城はあのときの少女、鈴代泉観(すずしろいずみ)と邂逅する。だが、彼女は眠り姫ではなく、クラスメイトたちに畏怖されている魔女だった。
ある放課後。上城は豊(ゆたか)という少女から、半年前に起きた転落事故の現場に鈴代が居合わせたことを知る。彼女は人殺しだから関わるなと憎らしげに言われ、上城は余計に鈴代のことが気になってしまう。
そして、鈴代の目の前で、父親の殺人未遂事件が起こる……
――呪いを解くのと、謎を解くのは似ている?
初々しく危うい恋人たちによる謎解きの物語、ここに開幕――!
顔の見えない探偵・霜降
秋雨千尋(あきさめ ちひろ)
ミステリー
【第2回ホラー・ミステリー小説大賞】エントリー作品。
先天性の脳障害で、顔を見る事が出来ない霜降探偵(鎖骨フェチ)。美しい助手に支えられながら、様々な事件の見えない顔に挑む。
仏眼探偵 ~樹海ホテル~
菱沼あゆ
ミステリー
『推理できる助手、募集中。
仏眼探偵事務所』
あるとき芽生えた特殊な仏眼相により、手を握った相手が犯人かどうかわかるようになった晴比古。
だが、最近では推理は、助手、深鈴に丸投げしていた。
そんな晴比古の許に、樹海にあるホテルへの招待状が届く。
「これから起きる殺人事件を止めてみろ」という手紙とともに。
だが、死体はホテルに着く前に自分からやってくるし。
目撃者の女たちは、美貌の刑事、日下部志貴に会いたいばかりに、嘘をつきまくる。
果たして、晴比古は真実にたどり着けるのか――?
復讐の旋律
北川 悠
ミステリー
昨年、特別賞を頂きました【嗜食】は現在、非公開とさせていただいておりますが、改稿を加え、近いうち再搭載させていただきますので、よろしくお願いします。
復讐の旋律 あらすじ
田代香苗の目の前で、彼女の元恋人で無職のチンピラ、入谷健吾が無残に殺されるという事件が起きる。犯人からの通報によって田代は保護され、警察病院に入院した。
県警本部の北川警部が率いるチームが、その事件を担当するが、圧力がかかって捜査本部は解散。そんな時、川島という医師が、田代香苗の元同級生である三枝京子を連れて、面会にやってくる。
事件に進展がないまま、時が過ぎていくが、ある暴力団組長からホワイト興産という、謎の団体の噂を聞く。犯人は誰なのか? ホワイト興産とははたして何者なのか?
まあ、なんというか古典的な復讐ミステリーです……
よかったら読んでみてください。
四次元残響の檻(おり)
葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。
影蝕の虚塔 - かげむしばみのきょとう -
葉羽
ミステリー
孤島に建つ天文台廃墟「虚塔」で相次ぐ怪死事件。被害者たちは皆一様に、存在しない「何か」に怯え、精神を蝕まれて死に至ったという。天才高校生・神藤葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に島を訪れ、事件の謎に挑む。だが、彼らを待ち受けていたのは、常識を覆す恐るべき真実だった。歪んだ視界、錯綜する時間、そして影のように忍び寄る「異形」の恐怖。葉羽は、科学と論理を武器に、目に見えない迷宮からの脱出を試みる。果たして彼は、虚塔に潜む戦慄の謎を解き明かし、彩由美を守り抜くことができるのか? 真実の扉が開かれた時、予測不能のホラーが読者を襲う。
マクデブルクの半球
ナコイトオル
ミステリー
ある夜、電話がかかってきた。ただそれだけの、はずだった。
高校時代、自分と折り合いの付かなかった優等生からの唐突な電話。それが全てのはじまりだった。
電話をかけたのとほぼ同時刻、何者かに突き落とされ意識不明となった青年コウと、そんな彼と昔折り合いを付けることが出来なかった、容疑者となった女、ユキ。どうしてこうなったのかを調べていく内に、コウを突き落とした容疑者はどんどんと増えてきてしまう───
「犯人を探そう。出来れば、彼が目を覚ますまでに」
自他共に認める在宅ストーカーを相棒に、誰かのために進む、犯人探し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる