Man under the moon

ハートリオ

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14.ワンコの力

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「パンケーキセット、お待たせ致しました!」


・・ハッ・・


ウエイトレスの明るい声が、ナゼか突然思い出した遠い過去から急激に現実に引き戻そうとするが、強烈な過去の想い出は、俺を容易には放してくれない。

人工雪の中で突発的に告白してしまった自分の幼さと、その後の苦さ、苦しさ ――


ペロリ。 「クゥン・・」


不意に犬が俺の手を舐める。
まるで俺がどうしようもない暗い記憶に落ちて行くのを止める様に・・・


「はいっ、ワンちゃんにはこちらのスペシャル・ワンコプレートですね、うッ(ビクビク)ど、どうぞ、(ビクビク)か、可愛いワンちゃんですね! (ビクビク)」


見上げたウエイトレスだ。 犬が恐いようだが、一瞬たりとも笑顔を崩すことなく明るく振舞っている。


「当店ではワンちゃん連れのお客様に無料チケットをプレゼントしております! どうぞ、こちら、お受け取り下さい! 次回ご来店の際からお使い頂けますので、是非またご来店下さいませっ!! ・・・あの、お客様は観光でこの街に? もしよかったら、私、この街をご案内「・・ウゥ~~~・・」


「ひぃっ!? あ、で、では、ごゆっくりどうぞ~~・・」


「・・すげぇ、この犬、見事に女を追っ払ったな・・モルさん、こんな芸当、いつの間に仕込んだんだい?」


フットさんが感心して俺と犬を交互に見るが、俺は何もしていない。
・・・犬っていうのは、人の心に寄り添えるんだろうか・・ユニが、そんな事言ってた気がする・・

・・ダメだ、ユニの事ばかり考えてしまう・・いや、ピコさんの依頼でユニを捜しているんだから別にいいのか・・いや・・


「あ、やっぱり! 無料チケット、綴りごとだ! これ、本当は1枚だけなのに、モルさんがイイ男だから、大サービスで綴りごとくれたんだよ! 全く、女ってヤツは・・・
前にユニを連れて来た時も、ユニも綴りごと無料チケットもらってたよ。 何と犬を連れてもいねえのに! イイ男は得だよな・・」


「良かったらどうぞ。 俺はもうこの街には来ないだろうから。」


ボヤくフットさんにそう言うと、フットさんは目を瞬いて、


「・・あ、ありがとう。 ・・へへ、ユニもそんな風に言ってチケットくれたんだよ・・不思議だよな、モルさんはユニと雰囲気真逆なのに、どこか似ている・・ユニもシュッとしてるからな。 だからかな、ピコも俺もいつもはすげえ人見知りなのに、モルさんとは最初から話せるもんな・・俺本当はさ、モルさんみたいな眼で人を殺せるようなタイプ、恐くて緊張して絶対話なんか出来ねえんだぜ、不思議だよな・・」


ディス・・られている・・
これほど真正面から目つきが悪くトッツキニクイと言われたのは初めてかもしれない・・


ペロリ。 「クゥン・・」

・・ふっ・・ もうこの犬、買い取って連れて帰ろうかな・・
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