Man under the moon

ハートリオ

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11.目眩

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「・・ルさん!? モルさんっ!? モル・・・あぁ、大丈夫かい?」


「・・・・・・」


どうやら俺は、一瞬だけ気を失ってしまったようだ。 立ち眩み、というヤツだ。
床に膝をついてしまった俺を、フットさんが心配そうに覗き込んでいる。
・・・この人は・・・


「・・・あなたは、何を・・どこまで知っているんですか?」


フットさんの目を見据えてそう訊く。 フットさんはたじろいで、


「・・いや、俺は・・すまねえ、俺らは・・ユニとモルさんの幸せを奪った・・ユニが可哀想で、俺は、・・この通りだっ・・!!」


そう言ってフットさんが土下座をする。 何で、フットさんが!?


「・・止めて下さい、フットさんがそんな事する必要、無いでしょう? ユニが子供を選んだんだ・・それは孤児だったユニにとって当然の事だった・・誰が悪いなんて話じゃない・・」


19年前、何度も何度も自分に言い聞かせた事実を口にする。


「・・・すまねえ、すまねえ・・・」


それでもフットさんは顔を上げてくれない。

・・・この人は、俺の知らない事を知っている。
“墓場まで持ってかなきゃなんねえ秘密”と言っていた事・・

19年前の出来事は、俺が認識していた通りじゃなかったのか!?

こんなに必死に、土下座して謝られなければならない程の、一体何があったというんだ!?


「俺は何故あなたに謝られているのか分からない。 ・・19年前、何があったのか教えてもらえませんか?」


そう言ってみるが、やはり・・


「それは、それだけは勘弁してくれ! う、うぅぅっ・・・」


だったら、そんな行動やめて欲しい・・理由も分からず謝られても困るだけだ・・


「・・俺は、モルさんにユニをさらってって欲しい・・そうしてくれ・・ピコのお祝いでユニが戻って来たら、その時、ユニを連れて行って、ユニと幸せになってくれ!
・・本当はユニが居なくなるのは嫌だけど、でも、ユニが幸せになってくんなきゃ、俺は、申し訳なくってよ・・」


「・・・えッ!?」 ・・・自分でも驚くほどデカい声を出してしまった。

何だと!? 攫え!? あぁ、攫ってやりたいよ!! だけど・・・

「・・そんな事・・ピコさんはどうするんです!? 成人したって、まだまだ子供でしょう? いや、見た感じよりしっかりしてるようですが・・それでも・・」


「ピコは、そりゃ泣くだろうが、俺がいる。 俺にユニの代わりが務まるワケねえけど、でもピコを思う気持ちは変わらねえつもりだ。 それに、姉貴も随分いい母親になった、変わったんだ。 昔は不安定でな、いつもじゃねえんだが、時々癇癪を起してピコを恐がらせた。 ユニが居なきゃ、ピコはどうなっていたか・・・ だからユニも、真実を知った時でも・・ハッ・・あ、いや、と、とにかく・・・」


床に跪いたまま混乱する俺の前にチョコンと正座して、フットさんが力強く言う。


「ユニ・・それにモルさんも、幸せになんなきゃいけねえよ。 ・・な?」

フットさんに懇願するようにそう言われ、俺はまたしても目眩に襲われる。

今度は、甘美な目眩に・・
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