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8.フットさんの秘密?
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オーム街 ―― ビット村から3駅離れているだけだが、ビット村に比べれば随分と賑わっている街だ。
ビット村は駅を出ても小さなカフェが1軒あるだけで他に店らしきものは無く、郵便局とあと何か公共機関っぽい建物だけでその他は見渡す限り畑が広がっていた。 道も舗装されてない、という徹底ぶりで、見てはいないがひょっとしてまだ車ではなく馬車が走っているのかもしれない。
シティと地方では全てにおいて50~300年ほど差がある。
距離的にはそんなに離れていない事を考えると、異常かもしれない。
オーム街も田舎に変わりないが、駅の周辺の風景が全然違う。 背の高いビルなどはないが様々な店が建ち並び、人々の姿も多くそこそこ賑わっている。 道も舗装されている。
実は今日の本当の目的地はここだった。 結局来ることになったな・・・
俺とフットさん(ピコさんの叔父さん)は、これから晩御飯の買い物をして帰るというピコさんと別れて列車に乗り、まだ暗くなる前にこの街に着いた。
フットさんが言った通り、駅前にこじんまりとしたホテルがあり、そこでチェックインを済ませてから、フットさんの住むアパートへと向かう。 場所の確認の為と、何か俺に見せたい物があると言う。
「すまねえな、ちょっと歩くんだけど・・大丈夫かい? 疲れてないかい?」
フットさんがやたらと気を遣ってくれる。 他人を気遣える人なんだな。 ・・本当にナノの弟だろうか? いや、顔が激似だから間違いないだろうが・・・
「お気遣いなく。 昔は虚弱だったけど、今はウソみたいに元気なんで。」
そう言うと、
「そうかい。 ・・・ピコも、入院前は体が弱くて・・見てられないぐらい、可哀想だったけど、今は信じられないぐらい元気になって本当に喜んでるんだ。 きっとユニが頑張って、いい治療を受けさせたんだな・・その為に出稼ぎに出たんだもんな・・ユニは、最高の父親なんだ・・」
そう言って涙ぐむフットさん。 フットさんも、ユニにガッチリハートを掴まれている様だね・・・
途中で明日ピコさんを喜ばせる為のお菓子を買い、他にも2軒ほどで買い物をして、何だかんだでホテルを出てから30分後にフットさんのアパートに着いた。
「すまねえな、男の一人暮らしだから散らかっててよ。」
・・そうでもない。 散らかるほど物が無い。 シンプルで・・・
「シンプルで、俺の部屋と似てます。」
ただ寝て起きるだけの部屋 ―― 独りでね。
「・・フットさんは結婚しないんですか?」
フットさんは俺よりも年上だろうし、シティには結構独身を通す人も多いけど、田舎では皆結婚するものだと聞いていたので、本当に何気なく、普通に普通の質問をしたつもりだったが・・・フットさんはグニャリと表情を歪ませて、
「・・俺には結婚はムリだ。 アッチがダメんなっちまったからな・・」 と。
“アッチがダメ”って ―― いや、重い重い! 会ったばかりの人間に話す事じゃない! 軽く誤魔化してくれれば追求しないのに、何でも正直に言わないでほしい!
「あの・・すいません、」
不躾な質問をしてしまった事に対して謝ったつもりだったが、
「あぁいや、モルさんが悪いわけじゃねえよ。 一時は間接的にはモルさんのせいだなんて思っちまった事もあったけど・・・」
フットさんにそう返されて驚愕する。 フットさんの“アッチがダメ”になったのは、間接的に俺のせい!? な・・!?
「それは、どういう事ですか? 俺は、今日初めてフットさんと会った。 今日までフットさんの存在すら知らなかった。 ナノ・・さんとも、全然親しいわけではなかったし・・そんな俺がどうしてフットさんの問題に関わっているというんですか?」
「・・ハッ・・」 フットさんが息を呑み、眼球が飛び出そうなほど目を見開いて、
「・・あぁ、あんたは・・モルさんは、知らねえのか・・そうか・・知らねえんだな、俺はてっきり、ユニから聞いてるかと・・あぁ、俺の思い込みか・・」
震えながら聞き取りにくい声でそんな様な事をうわ言の様に繰り返す。
「何の事だ!? 俺はユニが消えてしまってから一度も会ってない! 俺は何を知らないというんだ!? ユニの事か!? 教えてくれ!!」
必死に聞き出そうとするも、
「いい言わねえ! 言えねえよ! だっ、誰にも言えねえ!! こっ、これは、墓場まで持ってかなきゃなんねえ秘密だ! 田舎者は何でも正直に喋るってわけじゃねえからな! 絶対喋れねえ事だってあるんだ!!」
断固拒否して来る。 だが俺も食い下がる。 ユニの事で、妥協は出来ない。
「今回のユニの行方不明に関係あるかもしれない! あんなにユニに会いたがっているピコさんの為にも、知っておきたいんだ、フットさん!」
「ハッ、だったら言う必要なんて全然ねえよ! だってユニは違うんだから!」
フットさんはそう言い放った後、今までの聞き取りにくい声と違い、ハッキリとした・・同時に静かな声で俺を諭す様に言う。
「ユニは、行方不明なんかじゃないんだよ・・!」
ビット村は駅を出ても小さなカフェが1軒あるだけで他に店らしきものは無く、郵便局とあと何か公共機関っぽい建物だけでその他は見渡す限り畑が広がっていた。 道も舗装されてない、という徹底ぶりで、見てはいないがひょっとしてまだ車ではなく馬車が走っているのかもしれない。
シティと地方では全てにおいて50~300年ほど差がある。
距離的にはそんなに離れていない事を考えると、異常かもしれない。
オーム街も田舎に変わりないが、駅の周辺の風景が全然違う。 背の高いビルなどはないが様々な店が建ち並び、人々の姿も多くそこそこ賑わっている。 道も舗装されている。
実は今日の本当の目的地はここだった。 結局来ることになったな・・・
俺とフットさん(ピコさんの叔父さん)は、これから晩御飯の買い物をして帰るというピコさんと別れて列車に乗り、まだ暗くなる前にこの街に着いた。
フットさんが言った通り、駅前にこじんまりとしたホテルがあり、そこでチェックインを済ませてから、フットさんの住むアパートへと向かう。 場所の確認の為と、何か俺に見せたい物があると言う。
「すまねえな、ちょっと歩くんだけど・・大丈夫かい? 疲れてないかい?」
フットさんがやたらと気を遣ってくれる。 他人を気遣える人なんだな。 ・・本当にナノの弟だろうか? いや、顔が激似だから間違いないだろうが・・・
「お気遣いなく。 昔は虚弱だったけど、今はウソみたいに元気なんで。」
そう言うと、
「そうかい。 ・・・ピコも、入院前は体が弱くて・・見てられないぐらい、可哀想だったけど、今は信じられないぐらい元気になって本当に喜んでるんだ。 きっとユニが頑張って、いい治療を受けさせたんだな・・その為に出稼ぎに出たんだもんな・・ユニは、最高の父親なんだ・・」
そう言って涙ぐむフットさん。 フットさんも、ユニにガッチリハートを掴まれている様だね・・・
途中で明日ピコさんを喜ばせる為のお菓子を買い、他にも2軒ほどで買い物をして、何だかんだでホテルを出てから30分後にフットさんのアパートに着いた。
「すまねえな、男の一人暮らしだから散らかっててよ。」
・・そうでもない。 散らかるほど物が無い。 シンプルで・・・
「シンプルで、俺の部屋と似てます。」
ただ寝て起きるだけの部屋 ―― 独りでね。
「・・フットさんは結婚しないんですか?」
フットさんは俺よりも年上だろうし、シティには結構独身を通す人も多いけど、田舎では皆結婚するものだと聞いていたので、本当に何気なく、普通に普通の質問をしたつもりだったが・・・フットさんはグニャリと表情を歪ませて、
「・・俺には結婚はムリだ。 アッチがダメんなっちまったからな・・」 と。
“アッチがダメ”って ―― いや、重い重い! 会ったばかりの人間に話す事じゃない! 軽く誤魔化してくれれば追求しないのに、何でも正直に言わないでほしい!
「あの・・すいません、」
不躾な質問をしてしまった事に対して謝ったつもりだったが、
「あぁいや、モルさんが悪いわけじゃねえよ。 一時は間接的にはモルさんのせいだなんて思っちまった事もあったけど・・・」
フットさんにそう返されて驚愕する。 フットさんの“アッチがダメ”になったのは、間接的に俺のせい!? な・・!?
「それは、どういう事ですか? 俺は、今日初めてフットさんと会った。 今日までフットさんの存在すら知らなかった。 ナノ・・さんとも、全然親しいわけではなかったし・・そんな俺がどうしてフットさんの問題に関わっているというんですか?」
「・・ハッ・・」 フットさんが息を呑み、眼球が飛び出そうなほど目を見開いて、
「・・あぁ、あんたは・・モルさんは、知らねえのか・・そうか・・知らねえんだな、俺はてっきり、ユニから聞いてるかと・・あぁ、俺の思い込みか・・」
震えながら聞き取りにくい声でそんな様な事をうわ言の様に繰り返す。
「何の事だ!? 俺はユニが消えてしまってから一度も会ってない! 俺は何を知らないというんだ!? ユニの事か!? 教えてくれ!!」
必死に聞き出そうとするも、
「いい言わねえ! 言えねえよ! だっ、誰にも言えねえ!! こっ、これは、墓場まで持ってかなきゃなんねえ秘密だ! 田舎者は何でも正直に喋るってわけじゃねえからな! 絶対喋れねえ事だってあるんだ!!」
断固拒否して来る。 だが俺も食い下がる。 ユニの事で、妥協は出来ない。
「今回のユニの行方不明に関係あるかもしれない! あんなにユニに会いたがっているピコさんの為にも、知っておきたいんだ、フットさん!」
「ハッ、だったら言う必要なんて全然ねえよ! だってユニは違うんだから!」
フットさんはそう言い放った後、今までの聞き取りにくい声と違い、ハッキリとした・・同時に静かな声で俺を諭す様に言う。
「ユニは、行方不明なんかじゃないんだよ・・!」
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