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4.大切な人?
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サッ! と避ける。
スッ!! と手首を取る。
ギリッ!!! と締め上げる。
「あいだだだだだっ!?」 男の悲痛な叫びがカフェ内に響き渡る。
「ハッ・・ス、スゴイ、モルさん! 問答無用で殴りかかって来る叔父さんをヒラリとかわし、一瞬で背後に回り、腕を締め上げるなんて・・・!!」
「・・説明どうも、ピコさん。 この人君の叔父さんなんだね? 叔父さんの誤解を解いてくれるかな?」
「あ、はい! 叔父さん、この方はモルさんといって、探偵さんなの! お父さんの事捜してくれる・・・(チラッ)・・ようにお願いしてるの・・分かってるの・・お母さんに聞くのが一番って・・でも、お母さんにお父さんの事聞くのって・・・」
「わ、分かった! あんたがピコを泣かせたんじゃねえって事は! ・・悪かった。 と、とりあえず離してくれ。 すっげえ痛え・・」
あ、いけない。 素人相手につい強く締め上げてしまった。
・・・顔がナノに似てるからかな・・
俺がピコさんの叔父さんの手を離すと、彼が腕をさすりながら俺の顔をシゲシゲと見つめ、
「・・・そうか。 あんたが“モル”さんか・・・あんたが・・あ、いや・・」
何か言い掛けたけど、お口にチャックした・・・ふぅん、ピコさんに聞かせたくない事かな? 俺も聞きたくないね、今更、何も・・・
「ところでユニを捜すって・・ユニは出稼ぎに行ってんだろ?」
ピコさんの叔父さんはナノの説明を微塵も疑ってないようだ。 ・・・それにしても顔、似すぎだろ? 一族みんな同じ顔ってヤツか・・・恐い。
ピコさん、本当に、ユニに似れば良かったのに・・・まぁ、性格はユニ寄りだから、まぁ、まぁまぁ・・・
「・・・だって、一度も帰って来てないから、心配で・・・」
ピコさんが叔父さんの腕をさすってやりながら言うと、
「だったら出稼ぎ先に電話してみりゃいいんじゃねえか?」
と叔父さんが提案する。 電話出来てない事も知らないんだ、この人・・・
「電波が届かない所に居るんだって・・・それに、作業場所がちょいちょい変わるから、とかも言ってた。 で、あんまり聞くとお母さん怒っちゃうから・・・」
ピコさんが俯きながらそう言うと、叔父さんが思い出したように同意する。
「・・あぁ、そうだったな・・全く、自分の娘にまで嫉妬するとか・・ユニの事になると、狂っちまうんだよな、姉貴は・・」
「ナノがピコさんに嫉妬って? 母親が娘に何を嫉妬する事があるんだ?」
俺には姉も妹もいないし、母親って娘をメチャメチャ可愛いと思う生き物だと思って来たから、意外過ぎてつい“ナノ”呼びしてしまった。 呼び捨てにするような仲では全然ないんだけど・・・
「・・あの・・よく分からないけど・・分からないんです・・」
と言って、ピコさんが黙り込んでしまう。
・・・傷ついているんだな・・・
ピコさんの叔父さんは、俺を見、目を逸らし、また見て、また逸らし・・ついに俺をじっと見据えて訴えて来る。
「あんた・・モルさんは、だって、一番知ってるじゃねえか・・姉貴のユニに対する執着の凄まじさ・・。 モルさんは、実際見てるじゃねえか・・・姉貴がユニを手に入れる為に・・・手に・・入れる為に・・・」
彼はサッと蒼ざめ、体を震わせる。
パンッ!
俺は手をたたく。 思いのほか大きな音が出て、ピコさんとその叔父さんはハッとして目を上げる。 俺もちょっとビックリした・・
「・・分かった。 ユニを捜す仕事、引き受けた。」
そう言って、テーブルにピコさんが広げた手紙の中身から昔俺が作ってユニに渡した『何でも言うこと聞きます by モル』と書かれた手作りのチケットをつまみ上げ、
「・・しょうがないよな、このチケットは有効期限無しだから。 ・・・こんな大昔 ―― 高校生の頃に渡した物、ユニがまだ持ってたなんて・・・ね。」
と微笑うと、ピコさんがハッとした顔をして、
「あ・・・そ、そうか。 シティの高校の・・あなたが・・モルさんが、お父さんの“ 大切な人 ”・・なんですね?」
と目を真ん丸にして言い、彼女の叔父さんが
「ピコ・・・知ってたのか。 そうだ。 このモルさんが、ユニの大切な人だ。」
と肯定する。
・・・・・・え?
スッ!! と手首を取る。
ギリッ!!! と締め上げる。
「あいだだだだだっ!?」 男の悲痛な叫びがカフェ内に響き渡る。
「ハッ・・ス、スゴイ、モルさん! 問答無用で殴りかかって来る叔父さんをヒラリとかわし、一瞬で背後に回り、腕を締め上げるなんて・・・!!」
「・・説明どうも、ピコさん。 この人君の叔父さんなんだね? 叔父さんの誤解を解いてくれるかな?」
「あ、はい! 叔父さん、この方はモルさんといって、探偵さんなの! お父さんの事捜してくれる・・・(チラッ)・・ようにお願いしてるの・・分かってるの・・お母さんに聞くのが一番って・・でも、お母さんにお父さんの事聞くのって・・・」
「わ、分かった! あんたがピコを泣かせたんじゃねえって事は! ・・悪かった。 と、とりあえず離してくれ。 すっげえ痛え・・」
あ、いけない。 素人相手につい強く締め上げてしまった。
・・・顔がナノに似てるからかな・・
俺がピコさんの叔父さんの手を離すと、彼が腕をさすりながら俺の顔をシゲシゲと見つめ、
「・・・そうか。 あんたが“モル”さんか・・・あんたが・・あ、いや・・」
何か言い掛けたけど、お口にチャックした・・・ふぅん、ピコさんに聞かせたくない事かな? 俺も聞きたくないね、今更、何も・・・
「ところでユニを捜すって・・ユニは出稼ぎに行ってんだろ?」
ピコさんの叔父さんはナノの説明を微塵も疑ってないようだ。 ・・・それにしても顔、似すぎだろ? 一族みんな同じ顔ってヤツか・・・恐い。
ピコさん、本当に、ユニに似れば良かったのに・・・まぁ、性格はユニ寄りだから、まぁ、まぁまぁ・・・
「・・・だって、一度も帰って来てないから、心配で・・・」
ピコさんが叔父さんの腕をさすってやりながら言うと、
「だったら出稼ぎ先に電話してみりゃいいんじゃねえか?」
と叔父さんが提案する。 電話出来てない事も知らないんだ、この人・・・
「電波が届かない所に居るんだって・・・それに、作業場所がちょいちょい変わるから、とかも言ってた。 で、あんまり聞くとお母さん怒っちゃうから・・・」
ピコさんが俯きながらそう言うと、叔父さんが思い出したように同意する。
「・・あぁ、そうだったな・・全く、自分の娘にまで嫉妬するとか・・ユニの事になると、狂っちまうんだよな、姉貴は・・」
「ナノがピコさんに嫉妬って? 母親が娘に何を嫉妬する事があるんだ?」
俺には姉も妹もいないし、母親って娘をメチャメチャ可愛いと思う生き物だと思って来たから、意外過ぎてつい“ナノ”呼びしてしまった。 呼び捨てにするような仲では全然ないんだけど・・・
「・・あの・・よく分からないけど・・分からないんです・・」
と言って、ピコさんが黙り込んでしまう。
・・・傷ついているんだな・・・
ピコさんの叔父さんは、俺を見、目を逸らし、また見て、また逸らし・・ついに俺をじっと見据えて訴えて来る。
「あんた・・モルさんは、だって、一番知ってるじゃねえか・・姉貴のユニに対する執着の凄まじさ・・。 モルさんは、実際見てるじゃねえか・・・姉貴がユニを手に入れる為に・・・手に・・入れる為に・・・」
彼はサッと蒼ざめ、体を震わせる。
パンッ!
俺は手をたたく。 思いのほか大きな音が出て、ピコさんとその叔父さんはハッとして目を上げる。 俺もちょっとビックリした・・
「・・分かった。 ユニを捜す仕事、引き受けた。」
そう言って、テーブルにピコさんが広げた手紙の中身から昔俺が作ってユニに渡した『何でも言うこと聞きます by モル』と書かれた手作りのチケットをつまみ上げ、
「・・しょうがないよな、このチケットは有効期限無しだから。 ・・・こんな大昔 ―― 高校生の頃に渡した物、ユニがまだ持ってたなんて・・・ね。」
と微笑うと、ピコさんがハッとした顔をして、
「あ・・・そ、そうか。 シティの高校の・・あなたが・・モルさんが、お父さんの“ 大切な人 ”・・なんですね?」
と目を真ん丸にして言い、彼女の叔父さんが
「ピコ・・・知ってたのか。 そうだ。 このモルさんが、ユニの大切な人だ。」
と肯定する。
・・・・・・え?
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