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87 ライブ直前!
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橘高校の文化祭は11月の初めの金・土・日の3日間行われる。
初日は『生徒祭』と呼ばれ外部からの客を入れず、生徒たちだけで行われる。
どこか予行練習的な、最終確認的要素がある。
2日目、3日目は校内に一般客を迎え入れ、盛り上がる。
だが。
実は今年度は今までとは違う。
生徒たちが一番楽しみにしているのは初日にのみ行われる橘高史上最大のイベント、皆のアイドルゆーとりんのライブである!
ライブが生徒祭にしか行われないのは、アイドル部活動は校内のみと厳しく決められているからである。
特に今年度のアイドルゆーとりんは橘高によって隠されているのにも関わらず、他校は勿論の事、各業界や企業にまでその名を轟かせている。
『凄いのがいるらしい』と。
美貌の『魔王と皇帝』に守られた『絶対天使』の噂は何故か遠く海外にまで伝わっているらしい‥‥
実際、国内外からの取材の申し込みは断っても断っても絶える事がない。
で、ライブの噂も広まってしまっているらしい。
橘高はゆーとりんを守る為外部から侵入者を入れない様、全ての門に鍵を掛け、また、塀なども定期的に見回るよう警備を厳重にしている。
校内でも、生徒たちのスマホを一時預かりにして映像が流出しない様神経を使う。
そう、とうとう今日が『生徒祭』の日である!
橘高校内暫定アイドルゆーとりんの文化祭ライブが開催されるのだ!
生徒たちは自分の高校なのに、正門前にテント持参で『開門待ち』の行列を作る程の異様な盛り上がりである!
ちなみに先頭の生徒は前日の夜中から並んでいるそうで。
『バカなの?』などと思わないで欲しい。
青春なのであるよ。
ライブは午後3時から。
現在午後2時30分。
直前!である。
模擬店なども早々に終了し、生徒たちは既にライブ会場(体育館)に集結済み。
体育館の床に体育座りして今や遅しとゆーとりんが舞台に出て来るのを待っている。
皆ワクワクし過ぎて、普段大人しい生徒が大声でしゃべり続けたり、普段はお調子者の生徒が真剣な顔で沈黙していたり。
大人だったらもう耐えられない様なその年代独特の緊張感や期待感が綯い交ぜになった奇妙な空気――鼻血が止まらない生徒も数名いるが、『ヘーキヘーキ』と笑ってみせて、決して保健室へ行こうとはしない。
オネエ生徒たちも負けてはいない。
憧れの『魔王と皇帝』に1ミリでもいいからアピールしたいッ!
髪を盛り、リボンを結び、メイクを頑張り、ピアス、指輪、ネイル――
学生の身で出来る限りのオシャレをして、みんなお揃いで着用の目を傷める様なド派手なピンクのトレーナーには、
『抱いて』
『挿して』
『殺して』
――など、思い思いの激熱メッセージが書かれている。
中でも一番多いのは『下僕にして』。
『オトコって、控えめなオンナがお好きでしょ?』派が多い様だ。
成功体験によるのだろうか…
そして主役のユウトはというと。
衣装とストレートロングヘアのカツラを装着し、完璧な美少女に変身していた!
その心は悲痛に叫ぶ!
(女装!
これ間違いなく女装!
僕の黒歴史トップ!)
桧木を始めとしたアイドル部員たちが
『綺麗』
『可愛過ぎる』
『世界一の美少女』
『永遠の女神』
『尊過ぎる』
などと誉めそやしても
『僕、男子なんで。
そんな事言われてもむしろ虚しいです』
と、下を俯いたその時!
≪ドゴンッ≫
どうすればそんな音が?と誰もが思う音を立ててナイトが控室に入って来る。
「‥!(ナイト…)」
アレ以来、どことなくギクシャクしている二人‥‥
顔を合わせれば二人とも頬を染め、視線を逸らし、気楽に話せない‥‥
「‥ッッッ!!
‥あ、ユ、ユウト?
き、綺麗だ‥」
「‥‥え‥
き、綺麗とか言われても、僕、男子なんだから‥」
「‥あ、だよな。
ごめん‥‥
でも、やっぱり‥
すごく、綺麗だ‥‥」
「あ、謝らないで‥
その、僕こそごめん。
あの、ありがと」
桧木を始めとしたアイドル部員たち、心の中で倒れる!
反応、違い過ぎ!!
「ナイト様、見回りは
――ハッ!」
そこへやって来たフィカス。
ユウトの前にスッと跪き、流れる様な所作でユウトの手を取ると、その甲に口付ける。
ここに居る誰も――
いや、欧米の方々でも真似できない様な圧倒的色男っぷりに、全員お口あんぐり状態。
色男はユウトの手にキスしたまま上目遣いでユウトを見上げ、熱い声で懇願する。
「ユウト、私を軽蔑してくれ」
「‥えッ!?何で‥」
「今すぐ君を押し倒したいと思ってしまった」
「~~~~~~ぁう、
冗談が高度すぎ!」
「本気だけど?」
「フィカス、
警備の報告を」
誰も止められそうにない色男をその主がバッサリ止める。
三人の微妙な空気‥‥
大人過ぎる空気に、アイドル部たちの心拍数は上がりっぱなしだ。
ところで。
外部からの侵入に対して警備を厳重にしている橘高だが。
既に5人もの侵入者を許している。
彼等は大胆にも堂々と正門を通って侵入したのだ。
まず、普通に日本人の40代会社員に見える4人の男たちは、ライブの為の設備をサポートする会社の社員を装い、作業着姿で軽トラにそれらしい機材を積み込んで悠々正門突破した。
いかにも優秀で気のいい技術者にしか見えない彼等を警戒の目で見る事は、正門警備を担当する若い教員には出来ない事だった。
『お疲れ様です。よろしくお願いします』と笑顔で通し、また、その事を文化祭実行委員会に報告もしなかった。
もう一人は黒髪短髪の少年。
実は橘高の生徒ではないのだが、橘高の制服を着ており、それがあまりにも自然であった為、他の生徒たちに紛れて余裕で校内に侵入出来た。
名前は――
御花畑すもも。
そう、ゆーとりんを落とし穴に落とそうと画策して失敗、アイドル部長桧木の怒りを買って自主退学させられた前年度暫定アイドルだった御花畑すももである。
初日は『生徒祭』と呼ばれ外部からの客を入れず、生徒たちだけで行われる。
どこか予行練習的な、最終確認的要素がある。
2日目、3日目は校内に一般客を迎え入れ、盛り上がる。
だが。
実は今年度は今までとは違う。
生徒たちが一番楽しみにしているのは初日にのみ行われる橘高史上最大のイベント、皆のアイドルゆーとりんのライブである!
ライブが生徒祭にしか行われないのは、アイドル部活動は校内のみと厳しく決められているからである。
特に今年度のアイドルゆーとりんは橘高によって隠されているのにも関わらず、他校は勿論の事、各業界や企業にまでその名を轟かせている。
『凄いのがいるらしい』と。
美貌の『魔王と皇帝』に守られた『絶対天使』の噂は何故か遠く海外にまで伝わっているらしい‥‥
実際、国内外からの取材の申し込みは断っても断っても絶える事がない。
で、ライブの噂も広まってしまっているらしい。
橘高はゆーとりんを守る為外部から侵入者を入れない様、全ての門に鍵を掛け、また、塀なども定期的に見回るよう警備を厳重にしている。
校内でも、生徒たちのスマホを一時預かりにして映像が流出しない様神経を使う。
そう、とうとう今日が『生徒祭』の日である!
橘高校内暫定アイドルゆーとりんの文化祭ライブが開催されるのだ!
生徒たちは自分の高校なのに、正門前にテント持参で『開門待ち』の行列を作る程の異様な盛り上がりである!
ちなみに先頭の生徒は前日の夜中から並んでいるそうで。
『バカなの?』などと思わないで欲しい。
青春なのであるよ。
ライブは午後3時から。
現在午後2時30分。
直前!である。
模擬店なども早々に終了し、生徒たちは既にライブ会場(体育館)に集結済み。
体育館の床に体育座りして今や遅しとゆーとりんが舞台に出て来るのを待っている。
皆ワクワクし過ぎて、普段大人しい生徒が大声でしゃべり続けたり、普段はお調子者の生徒が真剣な顔で沈黙していたり。
大人だったらもう耐えられない様なその年代独特の緊張感や期待感が綯い交ぜになった奇妙な空気――鼻血が止まらない生徒も数名いるが、『ヘーキヘーキ』と笑ってみせて、決して保健室へ行こうとはしない。
オネエ生徒たちも負けてはいない。
憧れの『魔王と皇帝』に1ミリでもいいからアピールしたいッ!
髪を盛り、リボンを結び、メイクを頑張り、ピアス、指輪、ネイル――
学生の身で出来る限りのオシャレをして、みんなお揃いで着用の目を傷める様なド派手なピンクのトレーナーには、
『抱いて』
『挿して』
『殺して』
――など、思い思いの激熱メッセージが書かれている。
中でも一番多いのは『下僕にして』。
『オトコって、控えめなオンナがお好きでしょ?』派が多い様だ。
成功体験によるのだろうか…
そして主役のユウトはというと。
衣装とストレートロングヘアのカツラを装着し、完璧な美少女に変身していた!
その心は悲痛に叫ぶ!
(女装!
これ間違いなく女装!
僕の黒歴史トップ!)
桧木を始めとしたアイドル部員たちが
『綺麗』
『可愛過ぎる』
『世界一の美少女』
『永遠の女神』
『尊過ぎる』
などと誉めそやしても
『僕、男子なんで。
そんな事言われてもむしろ虚しいです』
と、下を俯いたその時!
≪ドゴンッ≫
どうすればそんな音が?と誰もが思う音を立ててナイトが控室に入って来る。
「‥!(ナイト…)」
アレ以来、どことなくギクシャクしている二人‥‥
顔を合わせれば二人とも頬を染め、視線を逸らし、気楽に話せない‥‥
「‥ッッッ!!
‥あ、ユ、ユウト?
き、綺麗だ‥」
「‥‥え‥
き、綺麗とか言われても、僕、男子なんだから‥」
「‥あ、だよな。
ごめん‥‥
でも、やっぱり‥
すごく、綺麗だ‥‥」
「あ、謝らないで‥
その、僕こそごめん。
あの、ありがと」
桧木を始めとしたアイドル部員たち、心の中で倒れる!
反応、違い過ぎ!!
「ナイト様、見回りは
――ハッ!」
そこへやって来たフィカス。
ユウトの前にスッと跪き、流れる様な所作でユウトの手を取ると、その甲に口付ける。
ここに居る誰も――
いや、欧米の方々でも真似できない様な圧倒的色男っぷりに、全員お口あんぐり状態。
色男はユウトの手にキスしたまま上目遣いでユウトを見上げ、熱い声で懇願する。
「ユウト、私を軽蔑してくれ」
「‥えッ!?何で‥」
「今すぐ君を押し倒したいと思ってしまった」
「~~~~~~ぁう、
冗談が高度すぎ!」
「本気だけど?」
「フィカス、
警備の報告を」
誰も止められそうにない色男をその主がバッサリ止める。
三人の微妙な空気‥‥
大人過ぎる空気に、アイドル部たちの心拍数は上がりっぱなしだ。
ところで。
外部からの侵入に対して警備を厳重にしている橘高だが。
既に5人もの侵入者を許している。
彼等は大胆にも堂々と正門を通って侵入したのだ。
まず、普通に日本人の40代会社員に見える4人の男たちは、ライブの為の設備をサポートする会社の社員を装い、作業着姿で軽トラにそれらしい機材を積み込んで悠々正門突破した。
いかにも優秀で気のいい技術者にしか見えない彼等を警戒の目で見る事は、正門警備を担当する若い教員には出来ない事だった。
『お疲れ様です。よろしくお願いします』と笑顔で通し、また、その事を文化祭実行委員会に報告もしなかった。
もう一人は黒髪短髪の少年。
実は橘高の生徒ではないのだが、橘高の制服を着ており、それがあまりにも自然であった為、他の生徒たちに紛れて余裕で校内に侵入出来た。
名前は――
御花畑すもも。
そう、ゆーとりんを落とし穴に落とそうと画策して失敗、アイドル部長桧木の怒りを買って自主退学させられた前年度暫定アイドルだった御花畑すももである。
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