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83 キスじゃないから

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赤い液体と青い液体は驚くほど速攻で完璧に効いた。

体が楽になって意識も感覚も回復するにつれ――


『この状況は恥ずかし過ぎるッ』とユウトは困惑する。


なのでユウトは途中で『もう大丈夫、自分で飲める』と言ったのだがナイトとフィカスは液体の最後の一滴まで口移しで飲ませきる覚悟の様で。

怖いほど真剣な顔の二人に強く断る事が出来ず、薬物による赤い変色は引いたのだが、本気の赤面で耐えるしかないユウト。


(お、落ち着け、僕!
ナイトとフィカスさんにとっては単なる救助活動としての行為なんだから!
こんなに必死に僕を助けようとしてくれているんだから!
ドキドキしたり変な気持ちになったりするのは失礼だよ!
で…でもッ…)


何だかどんどん濃厚になっていく気がしているユウト。


「‥ン‥ゥンッ‥」

(な…長いよ?
それに…舌が‥ッ)


頭を振ろうにも大きく美しい手で頭をしっかりホールドされていて‥‥


(フィ、フィカ‥
僕ッ‥ダメェ‥ッ)


思わずフィカスを手で強く押し返そうとしても強い体はビクともしない。

ユウトはベッドに半身を起こした状態で液体を飲まされているのだが、どんどんフィカスが覆いかぶさって来るので、今はベッドに押し倒された様な状態に…!



「フィカスッ!
3秒ルールだッッ!」



『3秒ルール』!?

――あ、そうだった、

青色と赤色の2種類の液体を3秒毎に交互に飲むんだった…


途中から誰も守っていない『3秒ルール』を思い出したユウトを今度はベッドの逆側に居るナイトが強引に引き寄せ、ユウトの耳元に唇を寄せる。


「‥ッ‥」


思わず体がビクリと固まり、震える瞳をナイトに向ければ、ナイトの美しい深紫の瞳に赤い炎が揺らめいていて――


(‥ッ、何て、綺麗)


「これで最後だ、
頑張れ‥!」

「‥ハッ、ナイト、僕もうホントに大丈‥」


ユウトの声を無視してナイトがビーカーをあおり、青い液体を口に含む。

おとがいから首へのラインにゾクリとしてしまうユウト…

戸惑うユウトを覗き込んで『ん!』と口を開けるように促すナイト。

口の中に青い液体を含んでいる為、話すことは出来ない。

気付けばナイトも真っ赤な顔をしていて、焦れた様な瞳で真っ直ぐユウトを射る。

ユウトは震える唇を開いて――


「ンッ‥コクンッ」


ナイトの唇――もとい、青い液体を受け入れ、飲み込む。


(べ、別な意味で目眩がするんですけど…いや、これは違うんだから…あ…)


ナイトが唇を離す際、ユウトの唇をペロリと舐め、その後自分の唇も舐めた。

それが何だか可愛くてセクシーで――

ぼぅっとするユウトにフィカスが弾んだ声で言う。


「よし、もう大丈夫!
チュッ、呼吸も正常!
偉いぞ、強い子だね」

「‥ハッ!…あ、
有難う!フィカスさん
ナイトも…ナイト?」


ナイトはフィカスを睨んでいる。


「‥今‥」

「いや~~~!
良かったっす!
うぉ、きっれいな少年っすね!
富芦坊ちゃんがおかしくなるのも分かるっす…
って、3人揃って『誰?』って顔で見るとか酷いっす!
僕はこちらの美少年の命を救った青赤液体を提供した博士‥ウッ!?」


フィカスに首を『ガツッ』と掴まれ、目を白黒させる博士。

フィカスは低い声で


「そもそもお前が妙な薬物を作ってそれを善悪の区別もつかない桧木に渡したからこんな事になったんだろう――どう責任を取るつもりだ」

「ヒィィィィッ!?」

「フィカス…任せた。
俺は桧木を始末する」

「わ‥待って待って!
目が本気で恐いから!
フィカスさん、それ以上絞めると死んじゃうから離して!
ナイト、何か赤い稲妻みたいのが漏れててシャレになんないよ!」

ユウトが慌てて二人を止める。


「「ユウトは死にかけたんだぞ!?」」


美しい顔を怒りに染め『何故止める?』という不満顔でユウトを見つめる二人。


回復したばかりで、この二人…ゴハンを前に『待て』をくらっているワンコの様な哀愁を漂わせる二人を止めなければならないユウトは目眩を感じるのだった…
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