暫定アイドル☆ゆーとりん!―少年は愛の為に覚醒する―

ハートリオ

文字の大きさ
上 下
80 / 104

80 管理者たち

しおりを挟む
山の中腹にあるこじんまりとした別荘風の建物。

ナイトとフィカスは『お待ちしておりました』と通され――入ってすぐに地下室への隠し階段を降りて通された部屋には三人の男達――『管理者』がいた。

内二人は先日の雨の事故現場に現れた二人だ。


普通に日本人の40代会社員に見える三人の男たち。

だが、いわゆる『宇宙人』だ。

と言っても、地球人自体が宇宙から移住して来た移民なので。


もう昔過ぎて一部の者しか知らない事だが。

現在人類と呼ばれている者達は、幾つかの死にゆく惑星から青く美しい惑星・地球を新天地として飛来し根を下ろした移民の子孫である。

『組織』による高度な計画のもと地球へやって来た選ばれし者たちは特に何かが優れていたわけではなく、いや、金儲けに優れていた裕福な者たち。

欲深く自然に感謝しなかった彼等はそれぞれ自分が住む惑星をダメにした。

金儲けの為に惑星の滅亡を全力で推し進めた張本人である彼等は、いざ惑星がもうダメだとなったら金の力で移住者名簿に名前を連ねまんまと自分達だけ助かった。

だから地球人の多くは欲深く、今もせっせと地球を壊し続けている。

遺伝だ。

相当の努力なしには逃れられない血の要求なのだろう…?


この移住者たちを管理する為『組織』から派遣されているのが『管理者』だ。

『管理者』たちの仕事とは――不法移住者を取り締まること。

『組織』による移住計画で正規に地球に移住した者を『正規地球人』として守り、

正規の手続きを踏まず不法に地球に住みついた不法移住者を『非正規地球人』と呼び、殺す。

何故なら『非正規地球人』は罪人であり、追われ地球に逃げて来た逃亡者だから。

ナイトの父とその一族はソレである為、殺された。

その際、ナイトが死を免れたのは母が保護対象である『正規地球人』だからだ。

――とは言え死ぬまで監視対象であり、命運は『管理者』が握っている。




「「「‥ッッ!」」」



入室して来たナイトを見て『管理者』たちは息を呑む。


(凄まじく美しい)
(何と堂々たる姿)
(オーラも凄まじい)


威風堂々たる佇まい――非の打ち所のない美貌――これがバンダの生き残り――『半罪人』だと‥


管理者たちはその立場にそぐわない輝きを放つナイトの姿に言葉を失くす。

目を見開いたままただただ見て来る管理者たちに対してナイトが口を開く。



「要請により来た。
用件を聞きたい。
時間が無い。
急げ」



挨拶――とか色々なものが欠落している感じが逆にその存在の尊さを際立たせている感じがして、管理者たちは平伏しそうになるが、すんでのところでとどまる。

わ、忘れるな!
自分達の方が立場が上なんだぞ!



「ウッ、ゴホン!
バンダ族の末裔、現バンダ王――
南都樫ナイト君だね。
さすがにご立派な御姿だ。
御足労感謝‥」

「バンダは国も種族も滅んだ――俺はただの日本人だ」

「あ‥はは‥殊勝な」
「用件は」



管理者たちは気まずそうに顔を見合わせ、立場の違いを誇示する事を諦める。



「分かった、本題に入ろう。
実は観測所からの報告で、最近地球上で大きな『力』が使われている様だと。
場所は日本でほぼ間違いないと。
日本に居る『監視対象者』は君だけだからね。
君が関わっているのかを判断したいのだ」

「関わってない。
未覚醒の俺に大きな力は無い」

「証明出来ますか?」

「関わっているという証明は?」

「――いいでしょう。
もうお帰り頂いて結構ですよ」

「…では失礼する」




ナイトたちが部屋を出たのを確認して、管理者たちはカーテンの影に隠れていた人物に駆け寄る。



「ドロセラ様、南都樫はどうでしたか?」



カーテンの影からナイトを鋭い目で睨んでいたドロセラは断言する。



「危険だ!
危険極まりない!」

「で、では‥‥!」

「ああ。
生きていてはいけない
――処刑が妥当だ」

「「「‥何と!」」」

「だが、確かに。
証拠だ証明だと言われても難しい
――だから、」

「「「ゴクリ」」」

「自滅してもらおう」

「「「‥は?」」」

「クッ、クヒヒヒッ」



ドロセラは醜く顔を歪ませ笑い、言い放つ!



「簡単な事だ!
フィカスと仲良く死んでもらおう!
そう、覚醒させればいいのだよ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

俺の推し♂が路頭に迷っていたので

木野 章
BL
️アフターストーリーは中途半端ですが、本編は完結しております(何処かでまた書き直すつもりです) どこにでも居る冴えない男 左江内 巨輝(さえない おおき)は 地下アイドルグループ『wedge stone』のメンバーである琥珀の熱烈なファンであった。 しかしある日、グループのメンバー数人が大炎上してしまい、その流れで解散となってしまった… 推しを失ってしまった左江内は抜け殻のように日々を過ごしていたのだが…???

早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。
BL
幼少期のトラウマのせいで男性が怖くて苦手な男子高校生1年の那月(なつ)16歳。女友達はいるものの、男子と上手く話す事すらできず、ずっと周りに煙たがられていた。 このままではダメだと、高校でこそ克服しようと思いつつも何度も玉砕してしまう。 そしてある日、そんな那月をからかってきた同級生達に襲われそうになった時、偶然3年生の彩世(いろせ)がやってくる。 一見、真面目で大人しそうな彩世は、那月を助けてくれて… 那月は初めて、男子…それも先輩とまともに言葉を交わす。 ツンデレ溺愛先輩×男が怖い年下後輩 《表紙はフリーイラスト@oekakimikasuke様のものをお借りしました》

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...