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78 再燃

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三人は6階でエレベーターを降りた。

6階から上、最上階のナイトの部屋へは専用エレベーターに乗り換える。

フィカスは6階にある自分の部屋へ、ナイトとユウトは専用エレベーターでナイトの部屋へ、というのがいつもの流れ。

だが、今日はいつもと違う。

三人共びしょ濡れなので入浴しなければならない。

なのでナイトが、

『ユウトは俺の‥コホン、俺達の部屋でゆっくり風呂に入ってくれ。
俺はフィカスの所で入る。
1時間半後ぐらいにフィカスと部屋に戻る。
三人で話そう。
それまでノンビリしていてくれ』

と言ったところで問題が勃発した。

スッとユウトの空気が変わったのである。



「ん、つまり?
ナイトはここ6階で…フィカスさんの所でお風呂に入るぅ?
で、僕はナイトの部屋のお風呂に入るぅ?
僕はお風呂から上がって1時間ぐらいノンビリしてるぅ?
それから二人一緒にナイトの部屋に上がって来るぅ?」

「そ…、そうだ。
(風呂に入ってホカホカになったユウトは危険過ぎるから、ホカホカがクールダウンするまで見ない様にしなければならない)
な?フィカス」

「‥‥はい。
(いつもユウトの入浴中は『危険だ』と言って6階にナイト様が『避難』して来る理由が今日、シャワー後のホカホカになっているユウトを見て分かりました。
あまりに危険過ぎる…今アレを見てしまったら私は自分を抑えられない…)
それがいいでしょう」

「‥‥‥‥‥‥」



ユウトは半目である。

ナイトとフィカスはほんのり頬を染めてソワソワ…



「…思い出したよ。
二人は僕に関係を疑われてもしょうがない事」

「「‥な?」」



半目のユウトが腕組みして挙動不審のイケメン達を見据えている。


((雨に濡れた白い肌が妖しく輝いて…これはホカホカになっていなくてもヤバい。
そのキラキラ瞳に見つめられる側の心臓の負担を知って欲しい…
理性がどうにかなりそうだ――み、見てはいけない…!))


仲良く赤面して視線を逸らせるイケメンズにユウトは静かに口を開く。



「二人は一緒にお風呂入るんでしょ?
たっぷり1時間30分は二人の時間を過ごすワケだよね。
コレ、毎日だよね?」

「「‥え‥」」



キョトンとするイケメンズ。


(くッ…可愛い!
その顔反則過ぎ!
お落ち着け、僕!)


ユウトは卑怯過ぎるほど可愛いイケメンズのキョトン顔に眩暈を感じるが気を落ち着けて続ける。



「ナイトはいつも僕がお風呂に入ってる時にフィカスさんの所に行くでしょ?
で、僕がお風呂から上がって1時間ぐらいすると戻って来る…
何だかきまり悪そうに頬を染めて僕と目を合わせない――
二人が愛し合ってるんだなって僕が思うの、当然じゃない?
ていうか本当に誤解?
やっぱり二人愛し合ってるんじゃないの?」

「違うッ!」
「あり得ません!」
「「絶対無いッ!」」

「声揃えて仲良すぎ」

「「‥ッ!」」



確かに――

ナイトの行動と態度は誤解されても仕方がないと気付くイケメンズ。

そしてナイトの不審な行動と態度の原因はホカホカになっているユウトの破壊力だとは言えないナイト。



「…こうしましょう。
ユウトは私の部屋で私と一緒に風呂に入る。
どうですか?」



フィカスが爽やかに提案する。

笑顔が美しい。



「フィカスさんと?
‥‥‥‥いいけど‥」

「朝までコースになりますが‥」



笑顔が恐い。



「ひゅじゃ‥
ふざけるなフィカス!
ユウトに手を出すな!
ユウト、風呂は俺と一緒に‥イヤダメだ!
何言ってるんだ!
‥‥仕方ない‥‥
誤解してもいいが絶対違うからな!
行くぞ!フィカス!
どさくさに紛れてユウトを口説くな!
隠れ肉食め!」

「私も驚いてます」

「じゃユウト、後で」

「後で行きますね」

「ちゃんと温まれよ」



あーだこーだ言いながらフィカスの部屋へ向かって行くナイトとフィカスの後ろ姿を見ながらユウトは『やっぱり仲いいなぁ…僕、入って行けない感じ』と思う。



(…でも…)


でも?


でも、何でしょう??
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