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73 雨宿り
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「雨、止まないね」
「ああ。
この降り方スゲーよな
最近の雨ってこうな。
ガキの頃はこんなじゃなかった気がするけどな」
「だね。
――さっきのお店は『普通』じゃないの?」
『普通のカフェ』で窓際に座り注文の品を待つユウトと錦木。
ユウトは気になっていた事を聞いてみた。
錦木はユウトの方に顔を寄せて手で口を隠しながら答える。
(小声)「ゲイ専門」
「やっぱそうなんだ。
店員さん…『ママ』って呼ばれてた人ももう一人も普通に男性の格好してたね。
女装しないんだね」
「あそこは客も女装は少ないな。
『普通に男性の格好』って言ってもサイズがピッチピチだけどな。
――って、普通かよ?
あそこに居たって事は俺もそうだって分かるだろ?
驚くとか戸惑うとかね―ワケ?」
ぞんざいな口ぶりだが僅かに瞳を揺らし不安を滲ませる錦木。
ユウトはアンバーの柔らかな瞳をしっかりと錦木に合わせる。
錦木は『あ、俺もうダメだ』と思う。
『もうダメだ。捕まった』と。
「僕は小さい頃外国で育ったから。
周りに同性カップルが普通に居た。
母の仕事関係で知り合って友人になってファミリーになった人達だよ。
みんな優しくて朗らかで素敵な人達だった。
僕が気付かなかっただけで社会的に差別されてたかもしれないけど、僕の周りで差別は無かった――答えになる?」
「あ――うん。
八桐は優しいんだな」
「ん?」
「いや――」
赤い顔で視線を逸らす錦木に、今度はユウトが不安な事を聞いてみる。
「と、ところでさ、
その――大丈夫?
僕と話して。
『バカが伝染る』の心配なんじゃ‥」
「ゴメンッッ!!」
ユウトの話の途中で錦木が目を見開き、額をテーブルにこすり付ける様にして。
「ゴメン!
酷い事言った!
謝れないままクラス替えになって卒業して…
ずっと気になってた!
ゴメン、本当はそんな事思ってなかったし、逆にッ…」
錦木は何かを言い掛けてしまいそうになってハッとして。
一つ咳払いしてから続ける。
「ゴホッ、お、俺は八桐と違って…
俺の中に偏見とか差別意識があって!
自分がそうだって受け入れられなくて!」
「え、イヤそんな…
僕がバカなのは事実だし…」
「八桐はバカじゃない!」
「‥錦木くん‥」
「バカじゃない!
そりゃ、テストではいつも100点満点中一桁の結果だったけど‥」
「に、錦木くん…」
「俺は、丁度自分が凄く悩んで自分を否定してた時期に八桐が現れて…
自分の心の苦しみを全部八桐のせいにしてしまったんだ――八桐みたいな奴がいるから、こんなに心が揺れて、迷って、掻き乱されるんだって。
八桐はあの頃から…今も――ていうか今はますます…き、綺麗で、魅力的で、キラキラしてるから」
「えぇッ!?
僕のどこが!?」
戸惑うユウトの声に錦木がガバと顔を上げる。
額が真っ赤になっている…
「何で無自覚なんだ!
ここからは説教タイムだッ!
覚悟しろッ!!」
「えぇ~~~!?」
雨はまだ止みそうにない――
「ああ。
この降り方スゲーよな
最近の雨ってこうな。
ガキの頃はこんなじゃなかった気がするけどな」
「だね。
――さっきのお店は『普通』じゃないの?」
『普通のカフェ』で窓際に座り注文の品を待つユウトと錦木。
ユウトは気になっていた事を聞いてみた。
錦木はユウトの方に顔を寄せて手で口を隠しながら答える。
(小声)「ゲイ専門」
「やっぱそうなんだ。
店員さん…『ママ』って呼ばれてた人ももう一人も普通に男性の格好してたね。
女装しないんだね」
「あそこは客も女装は少ないな。
『普通に男性の格好』って言ってもサイズがピッチピチだけどな。
――って、普通かよ?
あそこに居たって事は俺もそうだって分かるだろ?
驚くとか戸惑うとかね―ワケ?」
ぞんざいな口ぶりだが僅かに瞳を揺らし不安を滲ませる錦木。
ユウトはアンバーの柔らかな瞳をしっかりと錦木に合わせる。
錦木は『あ、俺もうダメだ』と思う。
『もうダメだ。捕まった』と。
「僕は小さい頃外国で育ったから。
周りに同性カップルが普通に居た。
母の仕事関係で知り合って友人になってファミリーになった人達だよ。
みんな優しくて朗らかで素敵な人達だった。
僕が気付かなかっただけで社会的に差別されてたかもしれないけど、僕の周りで差別は無かった――答えになる?」
「あ――うん。
八桐は優しいんだな」
「ん?」
「いや――」
赤い顔で視線を逸らす錦木に、今度はユウトが不安な事を聞いてみる。
「と、ところでさ、
その――大丈夫?
僕と話して。
『バカが伝染る』の心配なんじゃ‥」
「ゴメンッッ!!」
ユウトの話の途中で錦木が目を見開き、額をテーブルにこすり付ける様にして。
「ゴメン!
酷い事言った!
謝れないままクラス替えになって卒業して…
ずっと気になってた!
ゴメン、本当はそんな事思ってなかったし、逆にッ…」
錦木は何かを言い掛けてしまいそうになってハッとして。
一つ咳払いしてから続ける。
「ゴホッ、お、俺は八桐と違って…
俺の中に偏見とか差別意識があって!
自分がそうだって受け入れられなくて!」
「え、イヤそんな…
僕がバカなのは事実だし…」
「八桐はバカじゃない!」
「‥錦木くん‥」
「バカじゃない!
そりゃ、テストではいつも100点満点中一桁の結果だったけど‥」
「に、錦木くん…」
「俺は、丁度自分が凄く悩んで自分を否定してた時期に八桐が現れて…
自分の心の苦しみを全部八桐のせいにしてしまったんだ――八桐みたいな奴がいるから、こんなに心が揺れて、迷って、掻き乱されるんだって。
八桐はあの頃から…今も――ていうか今はますます…き、綺麗で、魅力的で、キラキラしてるから」
「えぇッ!?
僕のどこが!?」
戸惑うユウトの声に錦木がガバと顔を上げる。
額が真っ赤になっている…
「何で無自覚なんだ!
ここからは説教タイムだッ!
覚悟しろッ!!」
「えぇ~~~!?」
雨はまだ止みそうにない――
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