69 / 104
69 降り出した雨
しおりを挟む
「帰ってない!?
ユウト君、帰ってないんですかッ!?」
「ええ、来てないけど
――あら、来るの?
ユウト、帰るって言ってた?」
「え。いえ。
そうではないのですが
――てっきり‥」
「何だ、残念‥‥
あの子、『帰って来い』っていくら電話しても『電車恐いからムリ』とか言って帰って来ないのよ――ねぇフィカス君、時々その車であの子の事連れて来てくれない?
じぃさんも口には出さないけど寂しそうでねぇ。
息子は中学出たらすぐに外国に行っちゃったし、まさか孫も家を出ちゃうと思ってなかったから‥」
「電車が恐い?
ユウト君、電車が恐くて乗れないんですか?」
「え?…ああ、うん。
何か心臓がドキドキして目眩がして吐き気?
とか言ってたけど。
前はそんな事無かったのに、急にどうしたのかしらね?
もしかして、入学式の日、電車で何かあったの?
ナイト君に助けてもらったっていうのは聞いたけど、詳しい内容は話してくれなくてね――ところでフィカス君、ユウトを捜してるの?
あの子、何かあったの?」
「実は、ナイト様と少し言い合いになって、マンションを出て行ったんです。
てっきりこちらに帰っているものとばかり‥
あ、スマホは切ってる様で繋がりません。
いえ、御祖母様はこちらで待機していて下さい。
何らかの方法で帰って来るかも知れませんので」
「分かった!
ユウト見つかったら連絡ちょうだいね?
こっちに来た場合も電話入れるから!
――もう、こんな時に限ってじぃさんは釣り仲間と旅行行っちゃってるし…
あら、フィカス君?
もう行っちゃった…」
(電車が恐い!?
初耳だぞ!?
入学式の朝に上級生に拉致されそうになった事件が原因のPTSDで間違いない…
何で君はそういう事、言ってくれないんだ!?
何で黙って一人で苦しむんだ!?
何で――とにかく今はユウト君を見つけないと!
真っ直ぐ実家に帰っているだろうと思ったからさほど心配してなかったが――)
≪キキッ!≫
フィカスは車を路肩に停めてナイトに電話を掛ける。
どこに行ったのか分からないとあっては、捜す人員を増やした方がいい。
だが――
(ッ、出ない、か
――本当に、
こんな時に!)
スマホを助手席に放るフィカス。
美しい金髪をかき上げ、キッと目を見開くと、車を発進させる。
(…ユウト、本当に!
覚悟してもらうぞ!
見つけたら抱きしめて
メチャメチャに抱きしめて永遠に離さないからな!)
心配で
心配すぎて
乱れる心
今すぐユウトをこの手に抱きしめないと治まりそうにない――
もう後戻り出来ない心を映す碧眼は危険なまでの情熱の炎を燃やして――
「ま、また赤信号!」
だが、人生イチ焦って急いでいる時に限って赤信号に捕まりまくる!
更に――
ポツッ
ポツッ、ポッ、ポッ…
ザーーーーーーッ…
突然の大雨――
土砂降りである!
「‥クッ!」
視界最悪の中――
スピードを出し過ぎたのだろうか
雨でタイヤが滑ったのだろうか
キキキキキキィーッッ
ドグヮッ!!!
フィカスが運転する高級車は塀に激突して―――
ユウト君、帰ってないんですかッ!?」
「ええ、来てないけど
――あら、来るの?
ユウト、帰るって言ってた?」
「え。いえ。
そうではないのですが
――てっきり‥」
「何だ、残念‥‥
あの子、『帰って来い』っていくら電話しても『電車恐いからムリ』とか言って帰って来ないのよ――ねぇフィカス君、時々その車であの子の事連れて来てくれない?
じぃさんも口には出さないけど寂しそうでねぇ。
息子は中学出たらすぐに外国に行っちゃったし、まさか孫も家を出ちゃうと思ってなかったから‥」
「電車が恐い?
ユウト君、電車が恐くて乗れないんですか?」
「え?…ああ、うん。
何か心臓がドキドキして目眩がして吐き気?
とか言ってたけど。
前はそんな事無かったのに、急にどうしたのかしらね?
もしかして、入学式の日、電車で何かあったの?
ナイト君に助けてもらったっていうのは聞いたけど、詳しい内容は話してくれなくてね――ところでフィカス君、ユウトを捜してるの?
あの子、何かあったの?」
「実は、ナイト様と少し言い合いになって、マンションを出て行ったんです。
てっきりこちらに帰っているものとばかり‥
あ、スマホは切ってる様で繋がりません。
いえ、御祖母様はこちらで待機していて下さい。
何らかの方法で帰って来るかも知れませんので」
「分かった!
ユウト見つかったら連絡ちょうだいね?
こっちに来た場合も電話入れるから!
――もう、こんな時に限ってじぃさんは釣り仲間と旅行行っちゃってるし…
あら、フィカス君?
もう行っちゃった…」
(電車が恐い!?
初耳だぞ!?
入学式の朝に上級生に拉致されそうになった事件が原因のPTSDで間違いない…
何で君はそういう事、言ってくれないんだ!?
何で黙って一人で苦しむんだ!?
何で――とにかく今はユウト君を見つけないと!
真っ直ぐ実家に帰っているだろうと思ったからさほど心配してなかったが――)
≪キキッ!≫
フィカスは車を路肩に停めてナイトに電話を掛ける。
どこに行ったのか分からないとあっては、捜す人員を増やした方がいい。
だが――
(ッ、出ない、か
――本当に、
こんな時に!)
スマホを助手席に放るフィカス。
美しい金髪をかき上げ、キッと目を見開くと、車を発進させる。
(…ユウト、本当に!
覚悟してもらうぞ!
見つけたら抱きしめて
メチャメチャに抱きしめて永遠に離さないからな!)
心配で
心配すぎて
乱れる心
今すぐユウトをこの手に抱きしめないと治まりそうにない――
もう後戻り出来ない心を映す碧眼は危険なまでの情熱の炎を燃やして――
「ま、また赤信号!」
だが、人生イチ焦って急いでいる時に限って赤信号に捕まりまくる!
更に――
ポツッ
ポツッ、ポッ、ポッ…
ザーーーーーーッ…
突然の大雨――
土砂降りである!
「‥クッ!」
視界最悪の中――
スピードを出し過ぎたのだろうか
雨でタイヤが滑ったのだろうか
キキキキキキィーッッ
ドグヮッ!!!
フィカスが運転する高級車は塀に激突して―――
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
真夜中の片隅で、ずっと君の声を探していた
風久 晶
BL
孤独な仁木葉司は、同級生の快活な少年・小山田優に片思いをした。
過去の傷痕に孤独に苦しみ続ける、17歳の葉司にとっては、優の明るい笑顔は、密かな憧れ、心の支えだった。
だけど、ある日突然、優から声をかけられて――
明るい優等生の優 × 過去を持つクール眼鏡の葉司の、青春の一途で一生懸命なピュアラブ。
葉司と、いとこの瑠奈の、暗い秘密。
明るく優等生だと思っていた優の隠された想い。
交錯して、孤独な心が触れ合い、そして変化が訪れる。
愛しくて、切なくて、時に臆病になりながら、ただ大切に愛することを追いかけていくストーリー。
純愛の、耽美で美しい世界へどうぞ。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる