暫定アイドル☆ゆーとりん!―少年は愛の為に覚醒する―

ハートリオ

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59 ○☆スーパーで異常事態発生?

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小出毬の参加によって、文化祭ライブは決行される事となった。

ユウトの説得という最大の難関が有耶無耶な内に解決してしまった感じだ。

桧木は『狙い通り』と勝利のドヤ顔である。


月曜日にそんな事があって約一週間経ちダンスレッスンは明後日火曜日から。

まだ曲が出来ていないので週に二日、火曜日と金曜日に基礎的なステップなどの練習をする事に決まったのだ。

小出毬の可愛さにやられてライブをやる事になってしまったユウト。

男子ぼくって何てバカなんだ』と思ったが、元々アイドル活動をする条件で入学したのだから仕方がないと諦めている。

ナイトとフィカスもユウトを尊重して黙ってはいるが、小出毬が気に入らない。

またユウトを傷つけるのではないかと不安なのだ。


そんな目に見えない不穏なおりが堆積していくような空気を吹き飛ばす様に、ユウトが笑顔で提案する。



「三人でスーパーに買い物に行かない?
まだ一緒に行った事無いよね?」



――というワケで。


日曜の午後、○☆スーパーに買い出しに来たユウト、ナイト、フィカス。

三人は眩いばかりの美オーラを放ちながら、食に関して低レベルの会話を繰り広げている。



「ユウト、こっちだ。
肉のコーナーはこっちだぞ」

「…もしかして、ナイトは牛肉だけが『肉』だと思ってない?」

「――違うのか?」
「違うんですか?」



こ、この二人はッ‥‥

ユウトは天を仰いで瞑目する。



「牛肉の他に、豚肉、鶏肉があるから。
豚肉も鶏肉も『肉』だからね?」

「「‥‥‥‥?」」



いや、カワイイ!

倒れる程可愛いけど!



美し過ぎるイケメンズの大反則ダブルキョトン顔に眩暈を覚え乍らユウトは薄く笑う。


(この二人、今までどーやって生きて来た?)


スーパーに入るやいなや、野菜など重要なコーナーには目もくれず一直線に精肉コーナー内の更に高級牛肉コーナーに突撃したナイト。

同じくパンコーナーに向かおうとしたフィカス。


それしか購入した事が無いのだろうが‥‥


それでどーやってその高身長のナイスバディを作り上げた!?


栄養素に詳しいばぁちゃんと、味にうるさいじぃちゃんの元、低予算ながらも豊かな食生活を送って来たユウトは身長165センチで痩せっぽち‥‥


納得いか~~んッ!



「えぇと、桑島大将のとこで、ナイトは嬉しそうに鶏の唐揚げ食べてたでしょ?
アレは鶏肉を味付けして粉をつけて揚げたものなんだよ?」

「…ハッ!
外側はカリッとして香ばしく、中は柔らかくジューシーな…
アレがこのタダみたいな値段の鶏肉から出来ている!?」

「そう言えば『鶏の唐揚げ』というタイトルでしたね!
タイトルの中にヒントが隠されていたのですね!?」

「いや、タイトルって…
ヒントじゃなくてまんま…」

「『灯台下暗し』か」

「ですね!」



ユウトはフゥと小さく息を吐き、気持ちを落ち着けてから提案する。



「ん…だからさ、今夜は鶏の唐揚げにしようかと思って、鶏肉を買‥」
「『鶏の唐揚げ』が家で作れるのかッ!?」



スーパー中に響き渡る様なデカい声で思いの丈を吐き出すナイト。

真剣過ぎる目がイタイ

そしてもう一人…



「ユ、ユウト君、
君って人は一体!?」



ワナワナと震えながら神を見るかのような視線を向けて来るフィカス。

こちらも真剣、
ナイト同様、イケメンな分余計にイタイ。


(…でも、最近、ユウトからユウトに呼び方変わったんだよね。
近くなれた感じで呼ばれる度に嬉しかったりする♪)


チラ。


ちょっと嬉しそうなユウトの視線に気付いて、フィカスが微笑む。



「何か?」

「…そのうち『ユウト』って呼んでくれるよね?」



そう言って微笑むユウトに数秒間、時が止まったフィカス。



「…ユウトが『フィカス』って呼んでくれたらね?」

「‥ッッ!?」



不意にフワリと耳元に唇を寄せられ。

甘い吐息と共に低い美声で撫でる様に囁かれてユウトは目を見開き耳まで真っ赤になって固まってしまう。


み、耳が熱い‥‥
何か変な感じ‥‥


その可愛過ぎる反応にハッとしてフィカスも耳まで真っ赤になる。



「あ、そ、その、」

「ビ、ビックリした。
誘惑されてる様な気持ちになっちゃった…
あ、安心して!
違うってちゃんと分かってるから!
それと僕がフィカスさんを呼び捨てにするのはハードル高過ぎ!
それこそ恋人同士とかじゃないと無いから!
でもフィカスさんが僕を呼び捨てで呼ぶのは普通だから、その内、呼んでね」



そう言ってまだ赤い頬を隠す様に俯いて鶏肉を見つめるナイトの方へ行くユウト。



「誘惑‥‥されてますけどね‥‥私の方が‥‥」



フィカスの小さな呟きは、スーパーの喧騒に紛れ誰の耳にも届かない。

どんどん自制が効かなくなっていく自分を遠くから見つめる感覚に足元が揺らぐ。

最近慣れ親しんでいる感覚に、美しい碧眼を切なさで染めるフィカス――

切なげな碧の熱がうつった様にユウトの頬の朱もなかなか引かなくて――


二人の距離感の変化に気付いているのかいないのか。


鶏肉に視線を落としたままのナイトの深紫の瞳が淡く暗く頼りなげに翳る――






突如地方都市のスーパーに降臨した異次元の美形三人組を遠巻きに囲み、その目が釘付けになる買い物客たち。

早々にゲットしなければならない売り切り御免の本日限りのお買い得品の事も忘れ、美オーラで満たされ別世界と化した精肉コーナーを見つめ続けている。

そして繰り広げられた映画のワンシーンの様な美少年と金髪碧眼イケメンの切なげな様子、どこか苦し気な黒目黒髪イケメンの哀愁したたる佇まいは、女を捨てて久しい者のハートまでも震わせ締めつけ潤いで満たして――ハッ!私、泣いてる!?



と、その時!


♪・♪・♪♪♪・♪!

焼いてッ!
茹でてッ!
生で~~!

♪僕も私も、みんな~
♪卵が大大大好きさっ
♪卵があれば幸せさっ
♪お弁当にも入れてね
♪卵、卵、た~ま~ご

《いらっしゃいませ、いらっしゃいませ! 卵のタイムセールのお知らせ…》



現在午後3時。


今日のメインイベント、卵1パック30円という、タイムセールのお知らせが流れる。



だが!?



客が動かない!?

微動だにしない!?

この卵のタイムセール目掛けて来店しているはずの客達が、何故!?



「店長、これは!?」

「落ち着けッ!
今、副店長を店内見回りに行かせたッ!」



だが、その副店長も戻って来ない!

バックヤードで店内監視カメラの映像を見ても原因は分からない。

副店長も映ってるが…

ボ~ッと何か見てる?

涎…垂らしてないか?


自らを『鉄女』と称し、モテなかったワケではないが敢えての独身50代の副店長が虚ろな目でヨダレを垂らしている‥‥



「…一体、何が起こっているんだ!?」



とうとう床に膝をついた店長。



今宵のビールはきっといつもより苦いだろう‥‥



ガンバレ。
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