56 / 104
56 危うい三人
しおりを挟む
裏門から学校を出たユウト達。
帰ろうとする三人に桧木が学校外にダンス練習場を用意したから来てくれと言う。
生徒たちの熱狂ぶりが予想以上で、学校でのダンスレッスンは難しいからと。
桧木に付いて行きながら、ユウトはナイトとフィカスが気になっている。
「…首、大丈夫?」
「首は問題無い。
ユウトの事実誤認が問題だ」
「私は一度ハッキリと『恋人ではありません』と否定しましたが?」
「二人とも、すごく素敵でカッコイイからさ、一緒に居たらお互いそうなるかなぁって思っちゃって…違うんだ?」
「違うッ!」
「違いますッ!」
「そ、そうなんだ、
分かった、ごめん…
でも遠慮しないでね?
僕がお邪魔な時はちゃんと言って‥」
「分かってない!」
「邪魔じゃない!」
ナイトの眉間に深いシワが刻まれ、フィカスの丁寧な言葉遣いが乱れる。
(二人が恋人同士だと思った時、ホッとしたんだけどな…お似合い過ぎて、誰にも入り込めないって…それで心乱される事も無くなったのに…『違う』と否定されてホッとしてる自分もいる…何で?何に?…どうしよう、僕は自分で自分が分からなくなっちゃった)
完全に心が迷子になってしまったユウト。
ナイトはナイトで自分の内に不思議を抱えている。
フィカスと一緒に居ると、同じ様な誤解を受ける事は多かった。
ナイトの背が伸び逞しくなる前は、100%誤解されていた。
だからといってこんな風に、今みたいにムキになって否定する事はなかった。
自分もフィカスもそれで余計な誘惑を回避できたので、むしろ否定せず便利に利用して来た。
だけど今は――ユウトには!
100%誤解を解きたい!
どこかまだ疑っている風のユウトに何とかして分からせたい!
乱れる心に、何故?と思う。
何故ユウトには、ユウトにだけは絶対誤解されたくないのか??
眉間のシワは更に深くなる。
フィカスも複雑を抱えている。
淡白――というより、感情ゼロで生きて来た。
ただ役割を果たすためだけに。
自分でも自分を人間扱いしてなかった。
だから感情なんて無くて当然だった。
――のに?
どうしてユウトは、ユウトだけはいとも簡単に私の感情を乱すのだろう?
まだ完全には納得していない様子のユウト。
分からせたい――どうしても――力尽くででも!
『役割』が無くなれば『無』だと思っていた自分の中にこんなにも熱いモノが滾っている事に戸惑う。
ナイト様が危険な状態にならない様、ユウトを守ると決めたのに、私自身が危険因子になっているのではないか!?
強く握り込んだ拳に更に力が入る。
普通に歩いているのが不思議なほど危うい三人。
まるで綱渡りをしているかの様なギリギリの均衡。
もし風が吹けば――
風は吹くのだろうか――
帰ろうとする三人に桧木が学校外にダンス練習場を用意したから来てくれと言う。
生徒たちの熱狂ぶりが予想以上で、学校でのダンスレッスンは難しいからと。
桧木に付いて行きながら、ユウトはナイトとフィカスが気になっている。
「…首、大丈夫?」
「首は問題無い。
ユウトの事実誤認が問題だ」
「私は一度ハッキリと『恋人ではありません』と否定しましたが?」
「二人とも、すごく素敵でカッコイイからさ、一緒に居たらお互いそうなるかなぁって思っちゃって…違うんだ?」
「違うッ!」
「違いますッ!」
「そ、そうなんだ、
分かった、ごめん…
でも遠慮しないでね?
僕がお邪魔な時はちゃんと言って‥」
「分かってない!」
「邪魔じゃない!」
ナイトの眉間に深いシワが刻まれ、フィカスの丁寧な言葉遣いが乱れる。
(二人が恋人同士だと思った時、ホッとしたんだけどな…お似合い過ぎて、誰にも入り込めないって…それで心乱される事も無くなったのに…『違う』と否定されてホッとしてる自分もいる…何で?何に?…どうしよう、僕は自分で自分が分からなくなっちゃった)
完全に心が迷子になってしまったユウト。
ナイトはナイトで自分の内に不思議を抱えている。
フィカスと一緒に居ると、同じ様な誤解を受ける事は多かった。
ナイトの背が伸び逞しくなる前は、100%誤解されていた。
だからといってこんな風に、今みたいにムキになって否定する事はなかった。
自分もフィカスもそれで余計な誘惑を回避できたので、むしろ否定せず便利に利用して来た。
だけど今は――ユウトには!
100%誤解を解きたい!
どこかまだ疑っている風のユウトに何とかして分からせたい!
乱れる心に、何故?と思う。
何故ユウトには、ユウトにだけは絶対誤解されたくないのか??
眉間のシワは更に深くなる。
フィカスも複雑を抱えている。
淡白――というより、感情ゼロで生きて来た。
ただ役割を果たすためだけに。
自分でも自分を人間扱いしてなかった。
だから感情なんて無くて当然だった。
――のに?
どうしてユウトは、ユウトだけはいとも簡単に私の感情を乱すのだろう?
まだ完全には納得していない様子のユウト。
分からせたい――どうしても――力尽くででも!
『役割』が無くなれば『無』だと思っていた自分の中にこんなにも熱いモノが滾っている事に戸惑う。
ナイト様が危険な状態にならない様、ユウトを守ると決めたのに、私自身が危険因子になっているのではないか!?
強く握り込んだ拳に更に力が入る。
普通に歩いているのが不思議なほど危うい三人。
まるで綱渡りをしているかの様なギリギリの均衡。
もし風が吹けば――
風は吹くのだろうか――
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
真夜中の片隅で、ずっと君の声を探していた
風久 晶
BL
孤独な仁木葉司は、同級生の快活な少年・小山田優に片思いをした。
過去の傷痕に孤独に苦しみ続ける、17歳の葉司にとっては、優の明るい笑顔は、密かな憧れ、心の支えだった。
だけど、ある日突然、優から声をかけられて――
明るい優等生の優 × 過去を持つクール眼鏡の葉司の、青春の一途で一生懸命なピュアラブ。
葉司と、いとこの瑠奈の、暗い秘密。
明るく優等生だと思っていた優の隠された想い。
交錯して、孤独な心が触れ合い、そして変化が訪れる。
愛しくて、切なくて、時に臆病になりながら、ただ大切に愛することを追いかけていくストーリー。
純愛の、耽美で美しい世界へどうぞ。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる