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29 執事のフィカスさん
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何となくイメージしていた『執事』は、どこか気取った、主人以外には慇懃無礼なイメージだったけど。
ナイトの執事のフィカスさんはそんな感じは無く。
二十代半ばぐらいのスラリとした長身の金髪碧眼イケメンで、ストイックな雰囲気は男性モデルの様でもあるけど、そんな華やかな容姿であるにもかかわらず真面目で実直な感じを滲ませる、不思議な人だ。
そんな執事はユウトにお茶を淹れてくれながら、しみじみと言って来た。
「面白いものを見せて頂きました。
あんなナイト様は初めてでございます」
「僕には全てのナイトが初めてだよ。
友達になったばかりなんだ。
フィカスさん、日本語上手だね。
ずっと日本でナイトの執事をしてるの?」
「その質問はいささかお答えするのが難しい――いえ。
ナイト様が日本に住む様になってからは執事を務めさせて頂いております」
「ふぅ~ん?
僕、執事職の人見るの初めてなんだけど、イメージでは主人と一緒に住んで主人の生活全般を世話するイメージなんだけど、ナイトが一人暮らしなのは何故?」
「――ナイト様は‥‥
他人とは暮らせません
――お一人でなければ安心して眠る事は出来ないでしょう」
「え――」
「それ以上は申し上げられません」
「そう―――
ご飯は?」
「食事ですか?」
「うん。
食事の面倒を見たりはしないの?」
「はい。
特に求められない限りナイト様の生活に干渉しない様にしております」
「冷たくない?」
「―――は。つ?
冷たいでしょうか?」
その時キィとドアが開いて、ナイトが居間に戻って来た。
ドアは少し開いていたから、二人の話が聞こえたのだろう、ナイトが答える。
「フィカスは冷たいワケじゃない。
フィカスの仕事は俺の世話じゃなく俺を見張る事だから。
見張るついでに色々手続きなどの処理をしている」
「普通の『執事』じゃないんだね。
まぁ、普通の『執事』が何なのかよく分からないけど。
知りもしないで『冷たい』なんて言ってごめんなさい」
「え!――い、いえ!
ユウト様がそうお感じになるのも無理のない事で‥」
「あの、僕に『様』付けはやめて欲しいんだけど。
僕はただの一般庶民。
年上金髪イケメンに『様』付けで呼ばれるのが違和感しかないって言うか‥‥
困ります」
「いえ、ナイト様の御友人ですので当然の事でございま」
「ユウトでいいです」
「いっ、いえ、あの」
「じゃあ『ユウト君』からで」
「いえッ、ナ、ナイト様ッ!」
困り顔でナイトに助けを求めるフィカス。
ナイトはちょっと拗ね口でユウトに言う。
「今後ユウトがフィカスと話す機会なんてそんなに無い。
呼び方にこだわる必要は無い」
「あるよ!
これから外に食べに行くんでしょ?
フィカスさんも一緒に行こうよ!」
「――ッッ!」
花が咲いた様な笑顔を超絶美少年に向けられて、フィカスは不覚にも動揺する。
ナイトも動揺するが、何故動揺しているのか自分で分からない。
「あの、いえ、私は執事‥」
「今さら。
普通の執事じゃないんでしょ。
だったら一緒にご飯食べたっていいじゃん」
「いえ、さすがにそれはっ」
「大勢の方が楽しいから、ね?
だよね?ナイト!
みんなですき焼き楽しかったよね?」
「楽しかった!」
「決まり。
行こ」
「どぅえすぐわっ」
「ちょっと協力して欲しい事があるんだ。
頼まれて?
フィカスさん!」
「あ‥‥う‥‥くっ
‥‥は、はい」
超絶美少年の怒涛の笑顔攻撃にとうとう屈した金髪イケメン。
頬を染め、満更でもないテレ顔をした執事は主が三角形の目で凝視している事に気付いていない。
(よかった、
フィカスさん優しい)
ニコニコ顔のユウトも、自分の笑顔の威力に気付いていない。
ナイトの執事のフィカスさんはそんな感じは無く。
二十代半ばぐらいのスラリとした長身の金髪碧眼イケメンで、ストイックな雰囲気は男性モデルの様でもあるけど、そんな華やかな容姿であるにもかかわらず真面目で実直な感じを滲ませる、不思議な人だ。
そんな執事はユウトにお茶を淹れてくれながら、しみじみと言って来た。
「面白いものを見せて頂きました。
あんなナイト様は初めてでございます」
「僕には全てのナイトが初めてだよ。
友達になったばかりなんだ。
フィカスさん、日本語上手だね。
ずっと日本でナイトの執事をしてるの?」
「その質問はいささかお答えするのが難しい――いえ。
ナイト様が日本に住む様になってからは執事を務めさせて頂いております」
「ふぅ~ん?
僕、執事職の人見るの初めてなんだけど、イメージでは主人と一緒に住んで主人の生活全般を世話するイメージなんだけど、ナイトが一人暮らしなのは何故?」
「――ナイト様は‥‥
他人とは暮らせません
――お一人でなければ安心して眠る事は出来ないでしょう」
「え――」
「それ以上は申し上げられません」
「そう―――
ご飯は?」
「食事ですか?」
「うん。
食事の面倒を見たりはしないの?」
「はい。
特に求められない限りナイト様の生活に干渉しない様にしております」
「冷たくない?」
「―――は。つ?
冷たいでしょうか?」
その時キィとドアが開いて、ナイトが居間に戻って来た。
ドアは少し開いていたから、二人の話が聞こえたのだろう、ナイトが答える。
「フィカスは冷たいワケじゃない。
フィカスの仕事は俺の世話じゃなく俺を見張る事だから。
見張るついでに色々手続きなどの処理をしている」
「普通の『執事』じゃないんだね。
まぁ、普通の『執事』が何なのかよく分からないけど。
知りもしないで『冷たい』なんて言ってごめんなさい」
「え!――い、いえ!
ユウト様がそうお感じになるのも無理のない事で‥」
「あの、僕に『様』付けはやめて欲しいんだけど。
僕はただの一般庶民。
年上金髪イケメンに『様』付けで呼ばれるのが違和感しかないって言うか‥‥
困ります」
「いえ、ナイト様の御友人ですので当然の事でございま」
「ユウトでいいです」
「いっ、いえ、あの」
「じゃあ『ユウト君』からで」
「いえッ、ナ、ナイト様ッ!」
困り顔でナイトに助けを求めるフィカス。
ナイトはちょっと拗ね口でユウトに言う。
「今後ユウトがフィカスと話す機会なんてそんなに無い。
呼び方にこだわる必要は無い」
「あるよ!
これから外に食べに行くんでしょ?
フィカスさんも一緒に行こうよ!」
「――ッッ!」
花が咲いた様な笑顔を超絶美少年に向けられて、フィカスは不覚にも動揺する。
ナイトも動揺するが、何故動揺しているのか自分で分からない。
「あの、いえ、私は執事‥」
「今さら。
普通の執事じゃないんでしょ。
だったら一緒にご飯食べたっていいじゃん」
「いえ、さすがにそれはっ」
「大勢の方が楽しいから、ね?
だよね?ナイト!
みんなですき焼き楽しかったよね?」
「楽しかった!」
「決まり。
行こ」
「どぅえすぐわっ」
「ちょっと協力して欲しい事があるんだ。
頼まれて?
フィカスさん!」
「あ‥‥う‥‥くっ
‥‥は、はい」
超絶美少年の怒涛の笑顔攻撃にとうとう屈した金髪イケメン。
頬を染め、満更でもないテレ顔をした執事は主が三角形の目で凝視している事に気付いていない。
(よかった、
フィカスさん優しい)
ニコニコ顔のユウトも、自分の笑顔の威力に気付いていない。
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