暫定アイドル☆ゆーとりん!―少年は愛の為に覚醒する―

ハートリオ

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「こちらユウト様の御祖母様から託されましたユウト様の着替えでございます」

「――はぁ。
‥‥えッ!?
執事さん、僕んちまで取りに行ってくれたの!?」

「はい」

「わざわざありがとう
―――でも何で?
―――あ」



ユウトは制服のまま寝かされていた事に気付いた。

さすがにブレザーは脱がされているが、その他はネクタイを少し緩められ、ワイシャツの一番上のボタンが外されているだけ。

ズボンに至ってはベルトすら外されていない。

なので制服にしてはヨレヨレ感があるが、別に着替える程ではない様な――



というか、そもそも。



「僕は電車の中で――
いや、ナイトが電車から降ろしてくれた――
その時少しだけ意識が戻ったけどその前にお腹にパンチされてたせいですぐまた気絶しちゃったんだね?
え――ナイトがここまで運んでくれたの?」

「ああ。
――パンチされてた?
ユウト、腹を殴られたのか!?」



ギラッとナイトの目が光った。

執事がビクリと反応し、青褪める。



「あ、うん。
僕が大声上げたから」

「――俺を呼んだ」

「ッッ――う、うん。
聞こえて――たんだ」



あの時ナイトしか心になかった事を知られてしまった様な気持ちになってユウトがサッと赤面する。

無意識に、ナイトの手は熱くなったユウトの頬に触れ。

指先にその熱を移した瞬間、爆発しそうな何かを自分の中に感じ、慌てて手を離す。



「聞こえた。
だから場所が分かった
電車は橘高生だらけだったから」

「そう――だったんだ
ナイトを呼んで正解だったんだ。
ああ、僕バカじゃなかったんだ。
(野生の勘が働いたのかも!)
あ――」



ユウトは完全に意識を失う前に見えた光景を思い出す。

電車のドアが閉まる直前の電車の中。

反対側のドアに先輩3名がへばり付いて青い顔でこっちを見てた。

その手前の床に倒れ込んで山になっていたのも――そう、先輩たちだった。

あれって、ナイトが?――あんなゴツいゴリラ達を倒したら倒す側だって――

ユウトはバッとナイトを見る。

ぱっと見、怪我してる様子はないけど!



「ナイトは大丈夫!?
怪我してない!?」

「ッ‥大丈夫」

「本当?
どこも?
痛いところ無い?」

「無い」

「あぁ――良かっ‥‥
もう――僕は、ナイトが怪我するくらいなら、助けてもらわない方がいい‥‥」

「怪我してない!
怪我したって絶対助ける!」



ナイトの突然の強い語気に目を見開いたユウトだが、すぐに視線を落としてナイトの手を取る。



「ッッ…ユウ‥」

「赤くなってんじゃん
―――バカ」

「違、それはさっき!
さっ‥‥き‥‥」



それはさっきユウトの頬に触れたせい。

と言うワケにいかないナイトの大きな手をユウトの小さい手が包む様にして。

赤らんだその手に頭を垂れ閉じた双眸をあてる。

ナイトの手は温かい液体――涙を感じて‥‥



「―――ッ!
‥‥ユ、」

「バカ‥‥」

「そ、そんな事して、
だ、抱き締めるぞ?」

「いいよ」



『いい』と言われると困るナイト。

出来るわけない。

自分が恐ろしい。



「バカは、そっちだ‥
バカじゃないけど、そういうところはバカだっ」



そう言って手を引いて、居間を出て廊下を歩いて奥の部屋へバタン!と入ってしまった様子のナイト。

ポカンとしたユウトは言われた意味が分からない。

ナイトが出て行ったドアを見詰めながら茫然と立ち尽くす。




(もしかして、お二人には私の姿が見えていないのでは――!?)



本気でそんな疑問を抱きつつ。

スマイルを崩さず佇む執事なのであった。
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