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21 11人のイカレた男たち

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真っ白になって立ち尽くすユウト。

キィッ

人ンちの門扉を勝手に開いて敷地内に侵入して来た桧木。

スッ

と跪くと、胸に手を当て頭を垂れる。

同時に門内に侵入して来た大男たちも同様に跪き以下同文。

ユウトの視界の右端にはお隣のおじさんとおばさんが怪訝そうに見ている。

視界の左上端には斜め向かいのお宅の2階の窓から誰かがスマホで撮影している。


どう―――できる?

目の前に跪く一見『王子様』は言葉が通じない隠れ怪力男。

言葉でも腕力でもどうすることもできない――


困惑するユウトをよそに、11人のイカレた男達はキラキラした目をユウトに向け、その先頭にいる桧木がデカ過ぎる声で宣言する。



「全生徒を代表してお願いする!
本日より、橘高校の校内公式アイドル『ゆーとりん』として生徒たちの希望となって欲しい!
僕たち生徒会は全力で君の安全を守り、アイドル活動をサポートする事を誓う!」


カチャ…


玄関扉が僅かに開き、ばぁちゃんが小声で聞いて来る。


「ユウト、緊急通報しようか?」



――いけない。

ばぁちゃんが混乱している。

部活動としての『アイドル』の話はちゃんと報告したし、学校からも結構分厚い説明書類を受け取っているはずなのに、彼等の異様な様子を前に失念している様だ。



ユウトはばぁちゃんに『必要ない』と首を横に振り微笑むと、意を決して桧木に返事する。



「はい。
よろしくお願いします。
ただ、もう家にまで来ないで下さい。
学校内だけでの部活動なんですよね?
近所迷惑にもなりますし、家族も驚いてしまいますので‥‥
とにかく、遅刻してしまいますので、学校に向かいます」

「変形ショットガンフォーメーションッ!」


≪ザザザザザザザッ≫


「えッ!?なッ!?」



桧木がデカい声で変な指示を出したかと思うと、ユウトの前に5人、後ろに5人先輩たちが移動する。

ユウトの横に付いた桧木は残念ながら本気だと思われる様子で説明する。



「君の前後にオフェンスラインを配置して、君の安全を確保する」

「オフェンス‥‥?」

「アメフト方式だよ。
君はQB(クォーターバック)
本来ならオフェンスラインは前方だけなんだが、完璧を期して後方にも置いた。
これで前方からファンが突っ込んで来ても、後方から変質者が突撃して来ても、ゆーとりんを守り切る事が出来る。
完璧なアイドルプロテクションだよ!
さあ!安心して学校へ向かおう!」



ユウトは、やはりさっきばぁちゃんに緊急通報してもらえば良かったと後悔するのだった‥‥
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