暫定アイドル☆ゆーとりん!―少年は愛の為に覚醒する―

ハートリオ

文字の大きさ
上 下
18 / 104

18 何で?

しおりを挟む
あの時、強い風が吹いて。

ナイトの髪が風に舞った。


黒よりも柔らかな紫黒が風に舞うさまは絹の様に滑らかで優しい。

落ち着いた美しい深紫の瞳は瞳を薄く縁取る本紫が更に幻想的で――


真剣な表情――

少し怒ってた?


「ユウトはバカじゃない!」


そんな事言ってくれたの、ナイトが初めてだよ。


だから、
なんか、
すごく、

‥‥‥困る‥‥‥


心の奥の深いところ。

普段は眠っているそこが震えて困るんだ。



「――あんなに綺麗な瞳、何でいつも隠してるんだろう」



思考を変える為に、別の疑問を口にしてみる。

ナイトは長めの前髪が薄く目に掛かっていて目も薄く開けているだけなのであの美しい瞳は隠れてしまっている。

美形だからそれでも充分カッコイイけど。

ユウトを真っ直ぐ見据えた時の美しさは息が止まるほどだった。

他に何も見えなくなるほど。

そこがどこか分からなくなるほど――



「‥‥ふぅ」

「おっ?
どうしたどうした?
恋の悩みか?」

「―――えッ!?」

(恋!?
ナイトに!?)

「ちっ違う!まさか!
とっ友達だよ!友達」

「うわッ、何だよそんな真っ赤になって…
てか、いつ友達になったんだよ?小出毬ちゃんと」

「―――へ?
小出毬ちゃん?」

「ああ、あそこにいるの、盗み見してたんだろ?
卒業式の日に告白します宣言しておいて、今更照れるなよな?
ボソッ(お前のテレ顔は心臓に悪い‥)」

「―――ああ‥‥」



ユウトの憧れの小出毬ちゃんが校庭でバドミントンして遊んでいる。

中二の秋に恋心を抱いて以来、学校ではずっと彼女を目で追って来た。

なのに今日はいる事に気付きもしなかった‥‥

何でだろう?

僕、何か変?


ユウトは誤魔化す様に、話し掛けて来た級友にどうでもいい返事をする。


「…それにしても、学校来る人ホント少ないよね」


ナイトも来てない。

だからあの日以来、会えてない。

学校に来れば当たり前に会えると思っていたから何だか肩透かしを食らった気分。


卒業式まであと数日。

教師たちは一応ちゃんと学校に来て授業を受けなさいって言ってたけど、クラスの三分の一にも満たない登校者数に、黒板にデカデカと『自習』と書いて、授業放棄している。

だからみんな好きな事をして時間を潰している。


僕はナイトと話したいのに。


ナイトが来ないから、あの時の事ばかり思い出してしまうんだ‥‥


会えると思ってたのに

もう卒業なのに


会えなくなるのに――


頭のいいナイトはとんでもなくハイレベルな高校に合格した。

この中学校始まって以来の大快挙として校内放送されたからみんな知っている。


もう、もうすぐ。

手の届かない所へ行ってしまう。

頭のいい人達に囲まれ、その人達と話す様になれば、おバカな僕とは会話が成立しなくなるかもしれない。


ユウトは胸が押しつぶされる様な気分になる。


何で?


今日の小出毬ちゃんは僕の視線を釘付けにしてくれない。


いつもみたいに、僕を捕まえてよ――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

処理中です...