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16 夕刻、其々の企み1
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時はその日の夕刻、
場所は私立橘高校裏門前に戻る。
☆☆
肉について語り合いながら去って行ったユウト&彼の同級生に見えない同級生。
生徒会長桧木富芦は、二人の姿が見えなくなっても、目を離す事が出来ずに無人となった道を憮然と見続けている。
「――富芦、戻るよ」
「‥ッ、あ、はい。
あの、お願いがあります」
夢から覚めた様な目で叔父を見た後、そう言った桧木は理事長室で叔父に頭を下げる。
「八桐ユウトの調査をお願いします」
「探偵を使えという事だね?
何を調べたい?」
「全てを。
特に、彼の『守護者』が誰なのかを」
「保護者は祖父だが」
「『守護者』です。
彼を守っている者がいます。
多分、彼に気付かれる事無く。
彼は、男を知らない様です」
「――うん?」
「今時、同性愛があるのは知っているでしょうが、自分には関係ないと思って過ごして来た様です。
運動部の色めき立った様子と熱量に驚愕していました」
「――ふふっ、富芦?
あの容姿で知らないはず無いだろう?
今まで誰にも手を出されずに無事でいられたはずが無い――」
「では、叔父上はどう感じました?
彼があざとく ”無自覚 ”を演じていると感じましたか?」
「彼クラスの美少年ならその程度の技、身につけていても不思議じゃない。
――が、そうだね。
‥‥そうだね‥‥」
「彼は綺麗です!
容姿だけじゃなくて、何と言うか、全てというか、存在そのもの?というか――」
「富芦、調子狂う」
「――は」
「君らしくなさすぎ―
いや、それが本当の君なのかな。
アンバーローズの極上の子ネコちゃんに本気になった?」
「叔父上、言い方!」
「初恋だね、めでたい事だ――いいよ、お祝いに彼を調べさせよう♪」
「は、初恋!?‥いや
‥え?‥何を‥」
分かり易く動揺する甥を面白そうに眺めながらスマホを取り出し、連絡する叔父。
「そこに猿いる?
――ああいや、簡単な調査だが可愛い甥の頼みなんでね♪」
指示を出し終えて電話を切った叔父は何とも言えない表情で口を引き結んでいる甥に胡散臭い笑顔を向ける。
「後は報告待ちだね。
猿梨は優秀だから後は彼に任せて大丈夫。
それより、ソッチ、もうすぐアイドルをクビになるニセモノ金髪ロン毛の坊や。
気を付けた方がいい。
君に本気の様だから」
「すももですか?
もう別れました」
「見てたよ。
アレは良くない。
君らしくない。
ユウト君に逆恨みしてナニ仕出かすか分からないよ、アレ」
「‥なッ!?
僕じゃなくユウト君に何かするって言うんですか!?」
「女はそうらしいよ。
彼は男の娘でしょ」
「ユウト君に何かしたら――××してやる!」
「勇ましい事だな。
だが、君を犯罪者にしたくないからね――
君の手に負えない様なら言いなさい。
キレイにしてあげる」
「大丈夫です。
――ですが、頼むかもしれません」
「恐い子だねぇ」
「あなたの甥ですから」
「甘いよ。
私の甥にしては」
そう言って微笑う叔父に、甥は心の中で『僕は父似ですから』と自分を嘲笑う。
☆☆
――同じ頃、学校近くのカフェにニセモノ金髪ロン毛がいた。
噂の男の娘、御花畑すももである。
現・暫定アイドルである。
もうすぐ苺に季節限定スイーツの主役の座を奪われるであろう栗のスイーツ『和栗三昧!三食モンブランのデラックス恋パフェ』を細いスプーンでつつきながら、美と平凡の中間の顔を歪ませている。
カラカララン!
そこへ、ドアベルを大きく鳴らして、ガタイの良い男が駆けこんで来た。
場所は私立橘高校裏門前に戻る。
☆☆
肉について語り合いながら去って行ったユウト&彼の同級生に見えない同級生。
生徒会長桧木富芦は、二人の姿が見えなくなっても、目を離す事が出来ずに無人となった道を憮然と見続けている。
「――富芦、戻るよ」
「‥ッ、あ、はい。
あの、お願いがあります」
夢から覚めた様な目で叔父を見た後、そう言った桧木は理事長室で叔父に頭を下げる。
「八桐ユウトの調査をお願いします」
「探偵を使えという事だね?
何を調べたい?」
「全てを。
特に、彼の『守護者』が誰なのかを」
「保護者は祖父だが」
「『守護者』です。
彼を守っている者がいます。
多分、彼に気付かれる事無く。
彼は、男を知らない様です」
「――うん?」
「今時、同性愛があるのは知っているでしょうが、自分には関係ないと思って過ごして来た様です。
運動部の色めき立った様子と熱量に驚愕していました」
「――ふふっ、富芦?
あの容姿で知らないはず無いだろう?
今まで誰にも手を出されずに無事でいられたはずが無い――」
「では、叔父上はどう感じました?
彼があざとく ”無自覚 ”を演じていると感じましたか?」
「彼クラスの美少年ならその程度の技、身につけていても不思議じゃない。
――が、そうだね。
‥‥そうだね‥‥」
「彼は綺麗です!
容姿だけじゃなくて、何と言うか、全てというか、存在そのもの?というか――」
「富芦、調子狂う」
「――は」
「君らしくなさすぎ―
いや、それが本当の君なのかな。
アンバーローズの極上の子ネコちゃんに本気になった?」
「叔父上、言い方!」
「初恋だね、めでたい事だ――いいよ、お祝いに彼を調べさせよう♪」
「は、初恋!?‥いや
‥え?‥何を‥」
分かり易く動揺する甥を面白そうに眺めながらスマホを取り出し、連絡する叔父。
「そこに猿いる?
――ああいや、簡単な調査だが可愛い甥の頼みなんでね♪」
指示を出し終えて電話を切った叔父は何とも言えない表情で口を引き結んでいる甥に胡散臭い笑顔を向ける。
「後は報告待ちだね。
猿梨は優秀だから後は彼に任せて大丈夫。
それより、ソッチ、もうすぐアイドルをクビになるニセモノ金髪ロン毛の坊や。
気を付けた方がいい。
君に本気の様だから」
「すももですか?
もう別れました」
「見てたよ。
アレは良くない。
君らしくない。
ユウト君に逆恨みしてナニ仕出かすか分からないよ、アレ」
「‥なッ!?
僕じゃなくユウト君に何かするって言うんですか!?」
「女はそうらしいよ。
彼は男の娘でしょ」
「ユウト君に何かしたら――××してやる!」
「勇ましい事だな。
だが、君を犯罪者にしたくないからね――
君の手に負えない様なら言いなさい。
キレイにしてあげる」
「大丈夫です。
――ですが、頼むかもしれません」
「恐い子だねぇ」
「あなたの甥ですから」
「甘いよ。
私の甥にしては」
そう言って微笑う叔父に、甥は心の中で『僕は父似ですから』と自分を嘲笑う。
☆☆
――同じ頃、学校近くのカフェにニセモノ金髪ロン毛がいた。
噂の男の娘、御花畑すももである。
現・暫定アイドルである。
もうすぐ苺に季節限定スイーツの主役の座を奪われるであろう栗のスイーツ『和栗三昧!三食モンブランのデラックス恋パフェ』を細いスプーンでつつきながら、美と平凡の中間の顔を歪ませている。
カラカララン!
そこへ、ドアベルを大きく鳴らして、ガタイの良い男が駆けこんで来た。
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