暫定アイドル☆ゆーとりん!―少年は愛の為に覚醒する―

ハートリオ

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13 あれ?

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タッ!

疲れていたはずの体が軽やかに動いて。

ユウトは南都樫の前に駆け寄る。

南都樫は僅かに目を細め、それほど親しいワケでもない同級生が目の前でフワリと止まるのを見つめる。

と、得体の知れない不安な気持ちに胸に僅かな痛みを感じて二度速い瞬きをする。

オレンジ色の光の中のユウトはまるで異世界の存在の様で、もし人より力の有る上位の存在に見つかってしまったら――



「‥攫われてしまう」

「‥えッ? 何?」

「‥‥何でもない」

「そう?‥‥あ、
南都樫くん、何して…
どこか行くところ?」

「駅」

「「「!」」」



桧木と理事長はたちの悪い芝居を見せられている様な気持ちになる。

こんなタイミングで、こんな?



「あの、彼は同じ中学の同級生で、決して道に迷う事の無い頭のいい人です。
駅まで彼に付いて行きますので大丈夫です。
それでは。
行こ、南都樫くん」

「ああ」

「南都樫くん、それ、
大きい箱だね?」

「肉」

「え、買い物中?」

「もらった」

「へぇ‥‥えぇッ?
こ、これ、松‥‥
高級和牛だよッ!」

「薄肉だ」

「すき焼き用だよッ」



「「‥‥‥‥‥‥」」



仲良く無言で、現役中学生が肉について語り合いながら去って行く後ろ姿を目で追う叔父と甥。



「…凄いタイミングだったな。
偶然だと思うか?」

「むしろ偶然でしかあり得ないでしょう。
それにしても同級生?
あれで中学生ですか。
デカい男でしたね。
大人にしか見えませんでした。
ユウト君が小柄で可憐だから余計にそう見えたのかな」

「○☆スーパーの袋だった――あそこはたまに色付きのレシートが出て来て、肉や果物やワインが当たるんだ。
――という事は彼はこの街が地元という事だろう?
駅に何の用がある?」

「遊びに出掛けるんじゃないですか?」

「中学生がこの時間に?」

「まぁ、高校入学前の一ヶ月は色々やる事ありますからねぇ。
捨てたり、買ったり?
まぁ、彼はもう済ませてそうだけど」

「肉絡みか?
肉を持って?」

「「‥‥‥‥‥‥」」





☆☆




「あの電車に乗る」

「あ、じゃ僕と一緒だね」


「次の駅で降りる」

「へぇ、僕と一緒だ」


「あっちへ行く」

「僕と同じ方向だ」


「‥‥南都樫くん、
僕んち、そこ。
南都樫くんの目的地はまだ先?」

「この辺」

「そうなんだ。
待ち合わせ?
時間あるならうち来ない?」

「行く」

「‥‥ふふっ」

「――?」

「南都樫くん、もう卒業だけど、もっと前から仲良くしてたら良かった。
南都樫くんは頭いいから僕が話し掛けていい人だと思ってなかったんだ。
ウザがられるかなって。
こんな風に、嫌がらずに一緒に居てくれるとか思ってなかったからさ‥‥」

「まさか。
嫌がる奴、いない」

「いや、いたんだよね‥‥『バカが伝染るから話し掛けんな!』とか言うヤツ」

「ユウト、
バカじゃない」

「―――ッ!」



ユウトの体が僅かに揺れる。



「?
―――!
あ、ごめ、八桐君‥」



突然の名前呼びにドキリとしたユウトと

突然名前呼びしてしまって焦る南都樫。



「い、いや、待って!
戻らないで?
戻らないで、その、
僕も名前呼びする!
――い、いい?」

「う――いい」



片手で口を覆い目を泳がせる南都樫に、不意に自分はウザい提案をしてしまっているのではと不安になるユウトだが、後戻りも出来ないと拳を握りしめる。



「えと、じゃ、
ナイト君?」

「ナイト」

「ッ!…ナ、ナイト」

「うん、ユウト」


カ~~~~~~~~ッ

と赤面する二人の耳にマヌケな声が響く。



「ひぃッ!?
ウチのアバラ屋の玄関前にワールドクラスの美青年と美少年が立っている!?
ハッ!
美少年の方は私の孫のユウト!」

「ば、ばぁちゃん!
恥ずかしいから孫の事美少年とか言うのヤメテ‥」

「ハハ、だって事実じゃんねぇ!
ただいま、ユウト。
そちらの長身イケメンはどちら様?」

「お帰り、ばぁちゃん
僕も今帰って来たとこ
で、彼は友達――

≪チラッ≫byユウト
(下の名前で呼び合うんだから、友達って思ってもいいんだよね?)

≪コクッ≫byナイト
(いい)

友達なんだ、へへっ」

「南都樫 騎士ナイトです」
ペコリ。

「ま~~、尊いわぁ…
私はユウトの祖母です
ばぁちゃんて呼んでね
ユウトがありがとうね
さ、ボロ屋だけど上がって上がって♪
夕飯食べてってね!」



孫の友人の次元の違うイケメンっぷりに舞い上がっているのだろうか、

ばぁちゃんが超ご機嫌なのはユウトも嬉しいのだが――



「ばぁちゃん、残念だけどナイトはあんまり長居出来ないんだ。
誰かと待ち合わせしてるんだよね‥」

フルフル(頭左右振り)
「長居できる」

「え?…いいの?」

コクッ

「無理してない?」

「してない」

「じゃあ‥‥
やった♪!」

「―――ッッ!」



嬉しさに頬を赤く染めニッコリ笑った超絶美少年に、超絶美青年(いや、少年だけど)は息を呑み、暫し呼吸を忘れるのであった――
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