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08 今までとは違う彼
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「侮っていたね」
「侮っていました。
マトモに会話が成立するだろうかなんて心配していたぐらいなのに、まさかあんなに手強いなんて――バカじゃなかったんですか?
試験、まさかの全教科0点だったんでしょう?」
「そうなんだよね。
今回の試験は全教科文章で回答させる記述問題にした。
工夫を重ねて満点も0点も出ない様に試験問題を作ったつもりだったのに――
ユウト君の全教科0点には驚かされたよ」
「はぁ、でもまぁ、そこそこ楽しませてもらえそう――ん?」
数分前に真っ白になって理事長室を出て行ったユウト。
彼が帰って行く姿を事務棟3階の理事長室の窓から見ようと下を眺めていた桧木は、ユウトが興奮した生徒達にグルリと囲まれているのに気付いて、『あぁ、』と声を漏らして理事長室を飛び出て行く。
焦った様子で飛び出して行った甥の姿を見て理事長は『ほう』と目を瞠る。
優し気な外見と態度の裏にクールな捕食者の顔を持っている兄の息子。
捕食対象は美しい同性。
異性との恋愛も楽しみながら本当に求めているのは美貌の同性である。
兄よりも自分に似ている甥の珍しい姿に理事長は口角を上げる。
「『そこそこ楽しませてもらえそう』――か。
傍目にはかなり楽しそうに振り回され始めている様に見えるけどね?
富芦、彼は今までペットにして来た子とはまるで違う。
相当覚悟してかからないと――ふふ、ユウト君‥‥」
つい先程まで甥が立っていた窓辺に移動して下の様子を見ていた理事長は、遠目にも真っ青な顔で固まっているユウトを見て、思わず頬を緩める。
「考えている事が顔に出過ぎだよね、ユウト君。
たまに声に出てしまってもいるし」
そうクスクス笑いながら、ふと。
突然表情を失くして何を考えているのか全く読めなくもなる彼に自分も翻弄されていた事に思い至り――
「これは相当面白くなりそうだ」
と呟き、視線を空へ移す。
奥から夕刻へと移ろい出した空。
パタン――
理事長室のドアが閉まり、無人となる。
(校舎の廊下の壁には『廊下を走るな』と張り紙されているのだろうな)
そんな風に思いながら、理事長は事務棟の廊下を走っている。
理事長室の窓から、甥の富芦がユウト君の腕を掴んで裏門の方へ移動していくのが見えた。
「――まさかいきなり裏門の側のホテルに連れ込むとは思えないけど‥‥
若いからね」
甥の暴走を防ぎたいという思いより、ユウト君を守りたいという想いで物凄く久しぶりに廊下を走っている自分に失笑する余裕すら無い理事長であった。
「侮っていました。
マトモに会話が成立するだろうかなんて心配していたぐらいなのに、まさかあんなに手強いなんて――バカじゃなかったんですか?
試験、まさかの全教科0点だったんでしょう?」
「そうなんだよね。
今回の試験は全教科文章で回答させる記述問題にした。
工夫を重ねて満点も0点も出ない様に試験問題を作ったつもりだったのに――
ユウト君の全教科0点には驚かされたよ」
「はぁ、でもまぁ、そこそこ楽しませてもらえそう――ん?」
数分前に真っ白になって理事長室を出て行ったユウト。
彼が帰って行く姿を事務棟3階の理事長室の窓から見ようと下を眺めていた桧木は、ユウトが興奮した生徒達にグルリと囲まれているのに気付いて、『あぁ、』と声を漏らして理事長室を飛び出て行く。
焦った様子で飛び出して行った甥の姿を見て理事長は『ほう』と目を瞠る。
優し気な外見と態度の裏にクールな捕食者の顔を持っている兄の息子。
捕食対象は美しい同性。
異性との恋愛も楽しみながら本当に求めているのは美貌の同性である。
兄よりも自分に似ている甥の珍しい姿に理事長は口角を上げる。
「『そこそこ楽しませてもらえそう』――か。
傍目にはかなり楽しそうに振り回され始めている様に見えるけどね?
富芦、彼は今までペットにして来た子とはまるで違う。
相当覚悟してかからないと――ふふ、ユウト君‥‥」
つい先程まで甥が立っていた窓辺に移動して下の様子を見ていた理事長は、遠目にも真っ青な顔で固まっているユウトを見て、思わず頬を緩める。
「考えている事が顔に出過ぎだよね、ユウト君。
たまに声に出てしまってもいるし」
そうクスクス笑いながら、ふと。
突然表情を失くして何を考えているのか全く読めなくもなる彼に自分も翻弄されていた事に思い至り――
「これは相当面白くなりそうだ」
と呟き、視線を空へ移す。
奥から夕刻へと移ろい出した空。
パタン――
理事長室のドアが閉まり、無人となる。
(校舎の廊下の壁には『廊下を走るな』と張り紙されているのだろうな)
そんな風に思いながら、理事長は事務棟の廊下を走っている。
理事長室の窓から、甥の富芦がユウト君の腕を掴んで裏門の方へ移動していくのが見えた。
「――まさかいきなり裏門の側のホテルに連れ込むとは思えないけど‥‥
若いからね」
甥の暴走を防ぎたいという思いより、ユウト君を守りたいという想いで物凄く久しぶりに廊下を走っている自分に失笑する余裕すら無い理事長であった。
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