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第四章

23 虹の王子の短剣

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ビリビリビリッ!



「グゥッ!?」
(by フォマルハウト)

「「「ヒィィ~~~ッ!?」」」
(by θ王国の三人)

「デネブ様! シリウス様!
魔力が漏れ出しています!
抑えて‥‥」


「「アル! 何故かは分からないが、その短剣を手にしてはダメだ!」」



取り乱す廃王子達の手をアルがギュッと握る。

不安げに揺れる赤い瞳と金色の瞳を見つめながら尋ねる。



「‥‥何故かは、分からないんだね?」



アルの手を握り返しながら、廃王子達は苦し気に声を絞り出す。



「ああ、だが‥‥どうしても‥‥絶対嫌だ!」

「アル、頼むから、その剣を二度と使わないでくれ‥!」



つまり、この剣を使うと私に良くない事が起こる、という事なのかな‥‥

でも‥‥と、アルは一度伏せた瞼を上げる。



「私も何故かは分からないけど、どうしてもあの短剣が気になるんだ。
だから、手に取る事を許してほしい‥‥」



スッ‥‥

θ王国の人が、腰に付けていた短剣を両手に捧げ持ち、アルに差し出す。



「申し遅れました。
私はθ王国の第一王子‥‥王太子です。
後ろの二人は供の者‥‥側近兼護衛騎士です。
私達は、α王国に虹色の髪の少年がいるとの噂を聞き、馳せ参じました。
そして確信しました!
あなた様こそ、虹の王子様の生まれ変わりだと!
θ王国宮殿内に王家の者だけが入れる精霊殿があります。
あなた様はその精霊殿に飾られた虹の王子様の肖像画そのままです!
この銀色の短剣は何の飾りも無く質素‥‥しかも鞘から抜くことも出来ません。
多分実際には短剣ではないのかもしれません。
受付で確認された時も、細かく調べられた上で『装飾品』として携帯するのを許されました。
でも、θ王国の宝‥‥虹の王子様が使っていたと言われている大切な宝なのです!
さあ、どうぞその御手に!」



アルは差し出された剣を取ろうと手を伸ばす。

咄嗟にアルを止めようとした廃王子達だったが‥‥



「「ッ!?」」



アルが手を近づけたと同時に剣から光が発せられ、アルを包む。

その虹色の光に阻まれ、廃王子達はアルに近付けない。



「アルッ! ダメだ!」

「その剣を手にしちゃダメだッ!」



必死に叫ぶ廃王子達に短剣を手に持ったアルが振り返り、微笑む。



「大丈夫だよ、ホラ、何も起こらない」



そして流れる様に自然な動作で剣をスラリ、と鞘から抜くと‥‥



カッ!!
「アッ‥」



剣から発せられる凄まじい光‥‥

アルは雷に打たれたかのような衝撃に全身を貫かれる。

真っ白になった視界の中、剣はアルに教える。

この剣の意味‥‥使い方を‥‥



「「‥アルッ!!‥アルッ!!」」



デネブ様とシリウス様の声が聞こえる‥‥

二人はまだ前世の記憶を取り戻していない‥‥

それでも私がこの剣を使うのを恐れて‥‥

フフ、どれだけ私を好きなんだろうね‥‥



光が鎮まると視界が戻り、他の人の声も耳に届く。



「こ‥これ‥‥は‥‥ッ!」

「信じられないッ!
長きにわたって誰も抜くことが出来なかった剣を抜かれた!」

「し、しかも、短剣であるはずなのに、何故か刃は長剣ッ!?」

「な、何と美しい‥‥質素なただの銀剣だったのに‥‥
見事な装飾の美剣に変化しているッ!」



アルはスイッと剣を鞘に納める。

手品の様に長い刃は短い鞘に収納され‥‥

同時に見事な装飾も消えて元の質素な短剣に戻る。



「「「‥‥おお!」」」



θ王国の三人は驚きの声を上げる。

王弟はアルの姿に見惚れている。

廃王子達は‥‥



「‥大丈夫だよ。
この剣だけでは、何も起こらない。
そんな顔をしないで、大丈夫だからね」



アルはそう言いながら、迷子の様に泣きそうな顔をしている廃王子達に優しく笑いかける。

他の人達はその美しい笑顔に感動し、ポー―ッと頬を染めるのだが‥‥

笑顔を向けられた廃王子達はさらに胸を締め付けられて哀し気な瞳を伏せる。



(‥ッ、‥ごめん‥だけど、この剣は‥‥必要だから‥‥)


「‥‥この剣は私の剣だ。
私にしか使えないし、私にしか意味がない。
私が持っていていいだろうか?」



アルがθ王国の王太子にそう尋ねる。

θ王国の王太子が『もちろんです!』と快諾する。

そんなやり取りを聞きながら、廃王子達は訳も分からず心に誓う。


『絶対、アルにあの剣を使わせない』と‥‥
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