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第四章
18 古代魔術の恐怖 1
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「王太子には、第二王子が相応しいと思う。
良い噂しか耳にしない、得難い人物だ」
優しい表情のアルにそう言われれば、先・現王は狼狽える。
「「で、でも‥‥」」
((確かに第二王子は優秀だが、デネブやシリウスは次元が違う。
この二人を差し置いて王になれる者など、どこにもいない))
諦めきれずに息子達に目をやった国王は、固まる。
頬を染め、嬉しそうにアルを見詰める息子達‥‥
アルが先・現王にキッパリと
『この二人は私のものだ』
『返さないよ』
と宣言したことが嬉しくて、彼等はこの表情をしている。
微笑でも無表情でもない、初めて目にする息子達の素の表情‥‥
先王も同様に固まっている。
((私達には見せる事の無いそんな表情を‥‥感情を持っていたのだな‥‥))
「‥‥ところで、今頃になりましたが、先王陛下、
エメラルドカードをありがとうございます。
今日のこの衣装も贈って下さって‥‥」
突然の発言に先王は孫達からアルへ視線を戻す。
アッ‥‥
嫣然と微笑む少年が眩しい‥‥ドキドキ‥‥
「えッ、ああ、いや、それぐらい‥‥
準備も出来ぬであろう突然の招待だったのだから、当然の事だ。
うむ、いや、ハハハ、良かった!
今日のその衣装、とても良く似合って‥」
「次は私が衣装と装飾品を贈らせてもらおう!」
テレテレの先王陛下を遮り、国王陛下が大声を上げる。
「もちろん今日の衣装も似合っているが、もっと、そうだな‥‥いっそ虹色の‥」
「いいや! アル君に衣装を贈るのは私の権利だ!
なんせ、デネブがアル君の後見を‥」
「確か今、アル君はシリウスの西の屋敷に住んでいるはず‥‥
ならば私にこそ権利が‥」
「「必要ありません!
アルの衣装は私が用意します!」」
ゴチャゴチャ言い争う先・現王に対して、廃王子達が言い放つ。
王家の残念な姿に側近達はさぞ失望しているかと思いきや、
(おお、あの衣装、先王陛下が贈られたのか‥‥)
(白を基調に虹色を散りばめたデザイン、本当によく似合っている‥‥)
(まぁ、あの顔にあのスタイルなら、何を着ても似合うに決まっているが‥‥)
など、ほやほやモードである。
重すぎる事件に疲れてしまったのだろうか?
「現王太子は国外へ逃がした方がいい。
北宮の王妃はやり過ぎた。
彼女への恨みの矛先を向けられるのは可哀想だ」
ウッ!!
突然重い話に引き戻され、室内は再び重苦しい空気に変わる。
「北宮の王妃の実家にはまだ古代魔術に関するものが隠されているはず‥‥
そこは当然捜索するべきだけど、既に今、厄介な事になっている。
古代魔術の術式を記録した物が北宮の王妃から王弟へ渡ってしまった様だ。
王弟は今、古代魔術を使いまくっている。
古代魔術の黒い魅力に囚われてしまっている」
「なッ!?
フォマルハウトが‥‥まさか!
あんな、馬鹿がつくほど真面目な男が、曲がった事が許せない男が、禁術である古代魔術に手を出すなど‥‥」
「どうして古代魔術が禁術とされたか、知っている?」
誰ともなしにアルが問い掛ける。
「それは、強力で残酷過ぎるから、だったか‥‥」
「そう‥‥誰でも‥‥私の様な魔力が無い者にでも、強力な魔術が使えてしまう。
何故だか知っている?」
「え? だから、そういう凄い術式だから、だろう?」
「‥‥やっぱり、古代魔術の一番の恐ろしさは今はもう伝わっていないんだね。
故意に隠されたのかな‥‥」
そう溜息してアルが先王陛下の顔を見る。
ドキッ! とした先王陛下だが、後に続く質問に蒼ざめる。
「王弟フォマルハウトの母の死にざまは悲惨だったんじゃない?」
良い噂しか耳にしない、得難い人物だ」
優しい表情のアルにそう言われれば、先・現王は狼狽える。
「「で、でも‥‥」」
((確かに第二王子は優秀だが、デネブやシリウスは次元が違う。
この二人を差し置いて王になれる者など、どこにもいない))
諦めきれずに息子達に目をやった国王は、固まる。
頬を染め、嬉しそうにアルを見詰める息子達‥‥
アルが先・現王にキッパリと
『この二人は私のものだ』
『返さないよ』
と宣言したことが嬉しくて、彼等はこの表情をしている。
微笑でも無表情でもない、初めて目にする息子達の素の表情‥‥
先王も同様に固まっている。
((私達には見せる事の無いそんな表情を‥‥感情を持っていたのだな‥‥))
「‥‥ところで、今頃になりましたが、先王陛下、
エメラルドカードをありがとうございます。
今日のこの衣装も贈って下さって‥‥」
突然の発言に先王は孫達からアルへ視線を戻す。
アッ‥‥
嫣然と微笑む少年が眩しい‥‥ドキドキ‥‥
「えッ、ああ、いや、それぐらい‥‥
準備も出来ぬであろう突然の招待だったのだから、当然の事だ。
うむ、いや、ハハハ、良かった!
今日のその衣装、とても良く似合って‥」
「次は私が衣装と装飾品を贈らせてもらおう!」
テレテレの先王陛下を遮り、国王陛下が大声を上げる。
「もちろん今日の衣装も似合っているが、もっと、そうだな‥‥いっそ虹色の‥」
「いいや! アル君に衣装を贈るのは私の権利だ!
なんせ、デネブがアル君の後見を‥」
「確か今、アル君はシリウスの西の屋敷に住んでいるはず‥‥
ならば私にこそ権利が‥」
「「必要ありません!
アルの衣装は私が用意します!」」
ゴチャゴチャ言い争う先・現王に対して、廃王子達が言い放つ。
王家の残念な姿に側近達はさぞ失望しているかと思いきや、
(おお、あの衣装、先王陛下が贈られたのか‥‥)
(白を基調に虹色を散りばめたデザイン、本当によく似合っている‥‥)
(まぁ、あの顔にあのスタイルなら、何を着ても似合うに決まっているが‥‥)
など、ほやほやモードである。
重すぎる事件に疲れてしまったのだろうか?
「現王太子は国外へ逃がした方がいい。
北宮の王妃はやり過ぎた。
彼女への恨みの矛先を向けられるのは可哀想だ」
ウッ!!
突然重い話に引き戻され、室内は再び重苦しい空気に変わる。
「北宮の王妃の実家にはまだ古代魔術に関するものが隠されているはず‥‥
そこは当然捜索するべきだけど、既に今、厄介な事になっている。
古代魔術の術式を記録した物が北宮の王妃から王弟へ渡ってしまった様だ。
王弟は今、古代魔術を使いまくっている。
古代魔術の黒い魅力に囚われてしまっている」
「なッ!?
フォマルハウトが‥‥まさか!
あんな、馬鹿がつくほど真面目な男が、曲がった事が許せない男が、禁術である古代魔術に手を出すなど‥‥」
「どうして古代魔術が禁術とされたか、知っている?」
誰ともなしにアルが問い掛ける。
「それは、強力で残酷過ぎるから、だったか‥‥」
「そう‥‥誰でも‥‥私の様な魔力が無い者にでも、強力な魔術が使えてしまう。
何故だか知っている?」
「え? だから、そういう凄い術式だから、だろう?」
「‥‥やっぱり、古代魔術の一番の恐ろしさは今はもう伝わっていないんだね。
故意に隠されたのかな‥‥」
そう溜息してアルが先王陛下の顔を見る。
ドキッ! とした先王陛下だが、後に続く質問に蒼ざめる。
「王弟フォマルハウトの母の死にざまは悲惨だったんじゃない?」
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