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第四章
09 三美神、降臨!
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巨大船での夜会は、毎年開かれるわけではない。
何か特別な発表やお祝い事などがあった時に開催される。
なので今回のパーティーは実に五年ぶりとなる。
ちなみに前回のパーティーは、王太子の成人のお祝いという名目だった。
外国からの大切な招待客も多い為、開催時間を遅らせるわけにはいかない。
夜会は国王陛下、先王陛下の待ち人が現れぬままスタートした。
そして既に中だるみの時間を迎えていた。
華やかな会場でさらにキラキラしい輝きと威厳を放っていた二人だが‥‥
内心かなりイラついていた。
『まだか‥‥? もしや来ないのか!?』
内心の焦燥を見事に隠したまま二人は一時控室へ引き上げていく。
そんな二人の後ろ姿を目の端に映しながら、北宮の王妃も冷汗をかいていた。
(ヤバいヤバい、ヤバいわよ~~~!!
全然来る気配が無いじゃないのよッ!
王弟殿下は何をやっているのよ!?
あぁ~~、私の王太子の婚約が~~!!)
その可愛い息子はと言うと‥‥
会場の端でカペラ嬢とイチャイチャしている。
サッサと体の関係を結んだらしい二人。
人目も憚らず体を絡ませ、あちこちにキスし合っている。
(バカだわ、バカすぎるッ‥‥
史上最悪のバカップルだわ‥‥!
あの二人は陛下達の御前でも体を密着させたまま挨拶を‥‥
陛下達の絶対零度の眼差しにも気付けぬ愚かさを露呈していた‥‥
もう‥‥ダメかもしれない‥‥)
北宮の王妃が暗い未来を予想していると‥‥
シィィ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ン
現・先王陛下揃って控室へ引き上げてしまった為、次にお出ましになるまで何らかの発表はお預けだろう‥‥
そんなダラけた空気とざわめきが突如として消えた。
まさに水を打った様な静けさが暫く続いた後、さざ波の様に遠慮がちな声が広がる。
「あ‥‥あれは‥‥」
「廃王子様達‥‥と‥‥精霊王子様ッ」
「美しい‥‥何という神々しさだ‥‥」
「この世のものとは思われない‥‥
まさに今、天上界から降臨された美神の如き輝きに満ちて‥‥」
「廃王子様達は仲が御宜しかったのだな‥‥何と喜ばしい‥‥微笑ましい‥‥」
「尊い‥‥ありがたい‥‥ああ‥‥生きていて良かった‥‥」
「あ!‥‥移動される様だ‥‥知人を見つけたのかな‥‥」
北宮の王妃は入り口に背を向けている。
だから入り口に現れただけで人々を虜にした者達はまだ視界に入っていない。
だが‥‥ククッと口角を上げる。
(やっと来たわね‥‥
これで王太子の婚約は認められる‥‥
やれやれだわ‥‥)
北宮の王妃の背後でざわめきが徐々に大きくなる。
「ちょ! 廃王子達と何かキラキラしたのがこっち向かって来てるみたいよ!?」
「北宮の王妃陛下に挨拶したいんじゃないの?
生意気よねぇ?
公爵と伯爵はまぁいいとして、キラキラした奴は出自不明の外国人でしょ?」
(‥‥そういうアンタ達だって、二人ともしがない男爵夫人‥‥この私の側に侍っていられる身分ではなくてよ?‥‥まぁ、学生時代から一緒に悪さした仲だから? 昔のよしみで今も優しくしてやってるけどさ‥‥)
加えて北宮の王妃に他の誰も寄り付かない、という事実もあるのだが。
「そうね、確かに不敬よね‥‥準備して来て良かったわ。
‥‥じゃじゃーん♪」
北宮の王妃がじゃじゃーん♪と取り出したのは、普通より大きめの扇子。
カチカチカチと小さな音をたてて少し開けば、かなり古いものだと分かる。
「「なになに!?
また実家から面白い魔道具をパクって来たのね!?
生意気な外国人を痛めつけてやるのねッ!?」」
(いやぁねぇ、二人とも。
私と同い年だっていうのに老け過ぎよ?
笑ったりしたらシワだらけじゃないの。
マリオネットラインが痛々しいわ‥‥
ホント、私の引き立て役ぐらいしか使い物にならない憐れな女達ね‥‥)
自分も同じだけ老け込んでいる事には気付かない北宮の王妃‥‥
「シッ!
そうよ、これは古い時代の魔道具なの。
今では作れる人もいない‥‥知る人もいないわ。
この扇を開ききった時、面白い事が起こるのよ‥‥!」
背後に三人が近付いて来る気配を感じながら、北宮の王妃は醜悪に微笑んだ。
何か特別な発表やお祝い事などがあった時に開催される。
なので今回のパーティーは実に五年ぶりとなる。
ちなみに前回のパーティーは、王太子の成人のお祝いという名目だった。
外国からの大切な招待客も多い為、開催時間を遅らせるわけにはいかない。
夜会は国王陛下、先王陛下の待ち人が現れぬままスタートした。
そして既に中だるみの時間を迎えていた。
華やかな会場でさらにキラキラしい輝きと威厳を放っていた二人だが‥‥
内心かなりイラついていた。
『まだか‥‥? もしや来ないのか!?』
内心の焦燥を見事に隠したまま二人は一時控室へ引き上げていく。
そんな二人の後ろ姿を目の端に映しながら、北宮の王妃も冷汗をかいていた。
(ヤバいヤバい、ヤバいわよ~~~!!
全然来る気配が無いじゃないのよッ!
王弟殿下は何をやっているのよ!?
あぁ~~、私の王太子の婚約が~~!!)
その可愛い息子はと言うと‥‥
会場の端でカペラ嬢とイチャイチャしている。
サッサと体の関係を結んだらしい二人。
人目も憚らず体を絡ませ、あちこちにキスし合っている。
(バカだわ、バカすぎるッ‥‥
史上最悪のバカップルだわ‥‥!
あの二人は陛下達の御前でも体を密着させたまま挨拶を‥‥
陛下達の絶対零度の眼差しにも気付けぬ愚かさを露呈していた‥‥
もう‥‥ダメかもしれない‥‥)
北宮の王妃が暗い未来を予想していると‥‥
シィィ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ン
現・先王陛下揃って控室へ引き上げてしまった為、次にお出ましになるまで何らかの発表はお預けだろう‥‥
そんなダラけた空気とざわめきが突如として消えた。
まさに水を打った様な静けさが暫く続いた後、さざ波の様に遠慮がちな声が広がる。
「あ‥‥あれは‥‥」
「廃王子様達‥‥と‥‥精霊王子様ッ」
「美しい‥‥何という神々しさだ‥‥」
「この世のものとは思われない‥‥
まさに今、天上界から降臨された美神の如き輝きに満ちて‥‥」
「廃王子様達は仲が御宜しかったのだな‥‥何と喜ばしい‥‥微笑ましい‥‥」
「尊い‥‥ありがたい‥‥ああ‥‥生きていて良かった‥‥」
「あ!‥‥移動される様だ‥‥知人を見つけたのかな‥‥」
北宮の王妃は入り口に背を向けている。
だから入り口に現れただけで人々を虜にした者達はまだ視界に入っていない。
だが‥‥ククッと口角を上げる。
(やっと来たわね‥‥
これで王太子の婚約は認められる‥‥
やれやれだわ‥‥)
北宮の王妃の背後でざわめきが徐々に大きくなる。
「ちょ! 廃王子達と何かキラキラしたのがこっち向かって来てるみたいよ!?」
「北宮の王妃陛下に挨拶したいんじゃないの?
生意気よねぇ?
公爵と伯爵はまぁいいとして、キラキラした奴は出自不明の外国人でしょ?」
(‥‥そういうアンタ達だって、二人ともしがない男爵夫人‥‥この私の側に侍っていられる身分ではなくてよ?‥‥まぁ、学生時代から一緒に悪さした仲だから? 昔のよしみで今も優しくしてやってるけどさ‥‥)
加えて北宮の王妃に他の誰も寄り付かない、という事実もあるのだが。
「そうね、確かに不敬よね‥‥準備して来て良かったわ。
‥‥じゃじゃーん♪」
北宮の王妃がじゃじゃーん♪と取り出したのは、普通より大きめの扇子。
カチカチカチと小さな音をたてて少し開けば、かなり古いものだと分かる。
「「なになに!?
また実家から面白い魔道具をパクって来たのね!?
生意気な外国人を痛めつけてやるのねッ!?」」
(いやぁねぇ、二人とも。
私と同い年だっていうのに老け過ぎよ?
笑ったりしたらシワだらけじゃないの。
マリオネットラインが痛々しいわ‥‥
ホント、私の引き立て役ぐらいしか使い物にならない憐れな女達ね‥‥)
自分も同じだけ老け込んでいる事には気付かない北宮の王妃‥‥
「シッ!
そうよ、これは古い時代の魔道具なの。
今では作れる人もいない‥‥知る人もいないわ。
この扇を開ききった時、面白い事が起こるのよ‥‥!」
背後に三人が近付いて来る気配を感じながら、北宮の王妃は醜悪に微笑んだ。
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