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第三章
19 王弟フォマルハウトの執着
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湯あみを済ませ、夜着を着る。
抱き潰した美少年達と騎士は深海宮殿から出て行かせた。
今後、私が彼等を抱く事は無い。
私は全てを思い出したのだ。
前世、私は人間界を統べる皇帝であった。
私が望めば、男であれ女であれ喜んで私の前に身を投げ出した。
―――彼だけが違った。
彼は私の支配下の小国の王子‥‥
到底私を拒める立場ではなかったのに‥‥
グインッ!!
彼を想うだけで一度は鎮まった下半身が再び猛り立つ。
薄い夜着を突き上げそそり立つ己自身‥‥
これを彼の中に捻じ込みたい‥‥
彼の中を容赦なく蹂躙し征服したい‥‥
欲しい‥‥
彼の全て‥‥
視線も‥‥
吐息も‥‥
涙さえも。
昏い欲望が私の魂を焼き尽くしたのだろう、
私にもう迷いは無い。
今世こそ、私は彼を手に入れて見せる!
どんな手を使ってでも彼の全てを私のものにする!
あのつれない魂に、私の愛の深さを刻みつけてやるのだ‥‥!
だが、その後アル殿を目にする事すら出来なくなった。
事務所を訪れても、もう彼は接客しないとオーナーが断る。
彼を愛人にと申し込んでも絶対ダメだと強くオーナーが断る。
事務所前で入り待ち出待ちしてもオーナーの鉄壁のガードに遮られ彼の姿を垣間見る事すら出来ない‥‥クソッ!!
ハッ!
そうだ、そうだった‥‥!
アル殿の前世は魔物に恋をして、そのせいで私は拒絶されたのだ!
魔物‥‥ハッ!
似ている!
あの憎き魔物に、オーナー‥‥プロキオン卿が似ている気がする!
いや、絶対そうだ!
おのれ! プロキオン卿!
前世と今世の恨み、絶対晴らしてやる!
だが、どうする?
私は魔力が弱く、彼は圧倒的に強い。
私が手をこまねいていた所、ドルチェ事務所が襲われた。
私が調べたところ、私同様アル殿を強く望んでいる高位貴族の仕業であった。
かなりの手練れを用意したようだが、オーナーと‥‥その時たまたま事務所にいたというエリダヌス卿には歯が立たなかったらしい。
バカな男だ。
準備不足も甚だしい。
仕事は、準備七割というではないか、愚か者。
だが‥‥あの魔力の前にはどんな準備も無意味なのではないだろうか‥‥?
どうしたものか‥‥
相変わらず事務所通いは続けているが、最近ではオーナーではなく、代理だと名乗る子供にまで魔力で追い払われる始末‥‥
突破口が見つからず悶々とした日々を過ごす中、私はある光景を目撃した。
国王陛下がおわす主王宮から北宮への一本道。
その道を囲む深い森の中で、北宮の王妃と誰かが闘っていた。
北宮の王妃が魔法も魔術も使えない事は知っている。
だが、北宮の王妃は圧倒的な攻撃魔術を繰り出した!
どういう事だ!?
いつの間にそんな力を手に入れた!?
今、私が喉から手が出るほど必要としている魔力。
それを何故お前なんかがッ!?
ハッ‥‥
ザワザワと王宮騎士達が近付いて来る様だ。
私は見つからない様に深海宮殿へ戻る。
‥‥‥そうだ‥‥
あれは昔、北宮の王妃が私を懐柔しようとチラつかせた秘術‥‥
古代魔術というヤツに違いない!
必死な頭は、過去の忌まわしい記憶へも躊躇なく踏み込み、答えを探し当てた。
血走った目には先程見た光景が焼き付いている。
「勝てる! あの力を手に入れれば、私は‥‥勝てるッ!!」
握りしめた両拳が、全身が、ブルブルと震え続ける。
やっと、突破口を見つけた!
アレを手に入れ、私は、アル殿を我がものにするッ!!
抱き潰した美少年達と騎士は深海宮殿から出て行かせた。
今後、私が彼等を抱く事は無い。
私は全てを思い出したのだ。
前世、私は人間界を統べる皇帝であった。
私が望めば、男であれ女であれ喜んで私の前に身を投げ出した。
―――彼だけが違った。
彼は私の支配下の小国の王子‥‥
到底私を拒める立場ではなかったのに‥‥
グインッ!!
彼を想うだけで一度は鎮まった下半身が再び猛り立つ。
薄い夜着を突き上げそそり立つ己自身‥‥
これを彼の中に捻じ込みたい‥‥
彼の中を容赦なく蹂躙し征服したい‥‥
欲しい‥‥
彼の全て‥‥
視線も‥‥
吐息も‥‥
涙さえも。
昏い欲望が私の魂を焼き尽くしたのだろう、
私にもう迷いは無い。
今世こそ、私は彼を手に入れて見せる!
どんな手を使ってでも彼の全てを私のものにする!
あのつれない魂に、私の愛の深さを刻みつけてやるのだ‥‥!
だが、その後アル殿を目にする事すら出来なくなった。
事務所を訪れても、もう彼は接客しないとオーナーが断る。
彼を愛人にと申し込んでも絶対ダメだと強くオーナーが断る。
事務所前で入り待ち出待ちしてもオーナーの鉄壁のガードに遮られ彼の姿を垣間見る事すら出来ない‥‥クソッ!!
ハッ!
そうだ、そうだった‥‥!
アル殿の前世は魔物に恋をして、そのせいで私は拒絶されたのだ!
魔物‥‥ハッ!
似ている!
あの憎き魔物に、オーナー‥‥プロキオン卿が似ている気がする!
いや、絶対そうだ!
おのれ! プロキオン卿!
前世と今世の恨み、絶対晴らしてやる!
だが、どうする?
私は魔力が弱く、彼は圧倒的に強い。
私が手をこまねいていた所、ドルチェ事務所が襲われた。
私が調べたところ、私同様アル殿を強く望んでいる高位貴族の仕業であった。
かなりの手練れを用意したようだが、オーナーと‥‥その時たまたま事務所にいたというエリダヌス卿には歯が立たなかったらしい。
バカな男だ。
準備不足も甚だしい。
仕事は、準備七割というではないか、愚か者。
だが‥‥あの魔力の前にはどんな準備も無意味なのではないだろうか‥‥?
どうしたものか‥‥
相変わらず事務所通いは続けているが、最近ではオーナーではなく、代理だと名乗る子供にまで魔力で追い払われる始末‥‥
突破口が見つからず悶々とした日々を過ごす中、私はある光景を目撃した。
国王陛下がおわす主王宮から北宮への一本道。
その道を囲む深い森の中で、北宮の王妃と誰かが闘っていた。
北宮の王妃が魔法も魔術も使えない事は知っている。
だが、北宮の王妃は圧倒的な攻撃魔術を繰り出した!
どういう事だ!?
いつの間にそんな力を手に入れた!?
今、私が喉から手が出るほど必要としている魔力。
それを何故お前なんかがッ!?
ハッ‥‥
ザワザワと王宮騎士達が近付いて来る様だ。
私は見つからない様に深海宮殿へ戻る。
‥‥‥そうだ‥‥
あれは昔、北宮の王妃が私を懐柔しようとチラつかせた秘術‥‥
古代魔術というヤツに違いない!
必死な頭は、過去の忌まわしい記憶へも躊躇なく踏み込み、答えを探し当てた。
血走った目には先程見た光景が焼き付いている。
「勝てる! あの力を手に入れれば、私は‥‥勝てるッ!!」
握りしめた両拳が、全身が、ブルブルと震え続ける。
やっと、突破口を見つけた!
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