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第三章
05 ぼんやりの理由
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カペラが植物園でぶつかってしまったぼんやりオバハンは北宮の王妃であった。
普段 ”ぼんやり ”とは縁遠い彼女がぼんやりしていたのには理由がある。
『プロキオン公爵とエリダヌス伯爵が手を組んだらしい』
‥‥‥そんな思いもよらなかった噂が耳に入り、即刻調べさせた!
事実、彼等は今、エリダヌス伯爵の西の屋敷に滞在しているらしい。
ここ一カ月ほど、外出する事も無く、屋敷に籠っているという。
一応王都内ではあるが自然と野生動物しかいない西端のド田舎‥‥
森だの急流の川だの自然の要塞に守られたような馬鹿デカい屋敷。
屋敷の上空を凶暴な魔獣、翼竜が飛ぶ姿を見たというあり得ない情報も囁かれ‥‥
そんな辺鄙な屋敷に異母兄弟が一カ月も籠って何を企んでいるのか‥‥
謀反を企てているのではないか‥‥!?
くッ‥‥あの二人には何度も殺し屋を送ったのにッ!
特に病気持ちで魔力も無いはずだったエリダヌス伯爵には何度も!
簡単に殺せるはずだった‥‥
だから次こそはと、絶対殺せるはずだと‥‥
いまだに殺せていないのは、実は彼がかなり強い魔力持ちだったから。
そしてプロキオン卿もこの国一の魔力の持ち主!
あの二人が結託して王位を望んだら‥‥
私の大切な息子‥‥現王太子など簡単に失脚させられてしまう!
何度も命を狙った私だってタダでは済まないわ!
一刻も早くあの二人を亡き者にしなければ!
でも、どうやって!?
国内の魔力持ちはいくら金を積んでもあの二人の暗殺を引き受けない。
だから外国の強い魔力持ちを使って来た。
なのにことごとく失敗して来た‥‥
もう万策尽きている現状‥‥
いっ、いいえ!
諦めてはダメッ!
諦めた時点で、負けなのよ!
諦めずに、考えるのよ!
そうよ‥‥弱点‥‥彼等にだって、何か弱点があるはず‥‥
‥‥ハッ!
北宮の王妃が色を失っていた顔にニヤリと薄汚い笑みを浮かべる。
そうだわ‥‥確か‥‥クックック‥‥
プロキオン卿は、外国人の美少年を大層大事にしているとか‥‥
最初にその話を聞いた時は、
『何だ、いい年して婚約すらしないのはゲイだからなのね』
と思っただけだったけど‥‥
これは使えるわね‥‥もはや勝利しか見えないわ!
まずは、どうやってその少年を拉致るかね‥‥
それにしても‥‥美少年ね‥‥嫌いじゃないわ‥‥
粗暴な男たちを使って見目麗しい少年を嬲るのはそりゃあ楽しいものッ‥‥
北宮の王妃は、プロキオン公爵が大切にしているという美少年が‥‥
表の噂でも裏の噂でもかなりの美貌と清らかさを持っているらしい美少年が‥‥
粗野な男達にメチャメチャに穢され泣き喚く妄想を膨らませて‥‥
(おっと、危ない危ない‥‥こんな表情、見せられないわ‥‥)
手慣れた仕草でサッと扇を広げると、おぞましい笑顔を隠すのだった。
普段 ”ぼんやり ”とは縁遠い彼女がぼんやりしていたのには理由がある。
『プロキオン公爵とエリダヌス伯爵が手を組んだらしい』
‥‥‥そんな思いもよらなかった噂が耳に入り、即刻調べさせた!
事実、彼等は今、エリダヌス伯爵の西の屋敷に滞在しているらしい。
ここ一カ月ほど、外出する事も無く、屋敷に籠っているという。
一応王都内ではあるが自然と野生動物しかいない西端のド田舎‥‥
森だの急流の川だの自然の要塞に守られたような馬鹿デカい屋敷。
屋敷の上空を凶暴な魔獣、翼竜が飛ぶ姿を見たというあり得ない情報も囁かれ‥‥
そんな辺鄙な屋敷に異母兄弟が一カ月も籠って何を企んでいるのか‥‥
謀反を企てているのではないか‥‥!?
くッ‥‥あの二人には何度も殺し屋を送ったのにッ!
特に病気持ちで魔力も無いはずだったエリダヌス伯爵には何度も!
簡単に殺せるはずだった‥‥
だから次こそはと、絶対殺せるはずだと‥‥
いまだに殺せていないのは、実は彼がかなり強い魔力持ちだったから。
そしてプロキオン卿もこの国一の魔力の持ち主!
あの二人が結託して王位を望んだら‥‥
私の大切な息子‥‥現王太子など簡単に失脚させられてしまう!
何度も命を狙った私だってタダでは済まないわ!
一刻も早くあの二人を亡き者にしなければ!
でも、どうやって!?
国内の魔力持ちはいくら金を積んでもあの二人の暗殺を引き受けない。
だから外国の強い魔力持ちを使って来た。
なのにことごとく失敗して来た‥‥
もう万策尽きている現状‥‥
いっ、いいえ!
諦めてはダメッ!
諦めた時点で、負けなのよ!
諦めずに、考えるのよ!
そうよ‥‥弱点‥‥彼等にだって、何か弱点があるはず‥‥
‥‥ハッ!
北宮の王妃が色を失っていた顔にニヤリと薄汚い笑みを浮かべる。
そうだわ‥‥確か‥‥クックック‥‥
プロキオン卿は、外国人の美少年を大層大事にしているとか‥‥
最初にその話を聞いた時は、
『何だ、いい年して婚約すらしないのはゲイだからなのね』
と思っただけだったけど‥‥
これは使えるわね‥‥もはや勝利しか見えないわ!
まずは、どうやってその少年を拉致るかね‥‥
それにしても‥‥美少年ね‥‥嫌いじゃないわ‥‥
粗暴な男たちを使って見目麗しい少年を嬲るのはそりゃあ楽しいものッ‥‥
北宮の王妃は、プロキオン公爵が大切にしているという美少年が‥‥
表の噂でも裏の噂でもかなりの美貌と清らかさを持っているらしい美少年が‥‥
粗野な男達にメチャメチャに穢され泣き喚く妄想を膨らませて‥‥
(おっと、危ない危ない‥‥こんな表情、見せられないわ‥‥)
手慣れた仕草でサッと扇を広げると、おぞましい笑顔を隠すのだった。
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