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デネブ・プロキオン

09 移動中、少年が可愛過ぎる

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考え事をしていて気付かなかった。

寝室のドアから少年がこちらへ来る。


「ああ、まだ寝ていていいのに。
ここには私一人。
遠慮など必要ない。
‥‥あ、だが他の奴は別だぞ?
最大限の警戒をしなければならない!
無防備に寝ていいのは私の傍でだけだ。
口うるさいヤツと思われたくは無いが‥‥
大切な事だからな」


「? ‥‥はい‥‥
夜釣りですよね?
ポイントを変えるのですか?」


少年が無邪気に聞いて来る。

蒼白かった顔には生気が戻り白い肌に頬がほんのり桃色に染まっていて‥‥


‥‥これは無防備じゃなくてもヤバいな‥‥


美し過ぎる。

可愛過ぎる。


ふぅ‥‥、

‥‥こんな子は人目に触れさせてはいけないな。

しっかりガッチリ囲い込まなくては守り切れるものではない。

その髪に頬に唇に触れたい‥‥

などと思っている場合ではないッ!



「‥‥ああ。
さっきのポイントでは(君という)大きな獲物が釣れたからね。
ポイントを変えて次の(先王という)獲物を狙う事にする」


そう。

私は先王‥‥祖父に命乞いに行く。

現王よりも先王の方が色々な面で私を救える可能性が高い。
(それに私への執着も強い)


少年を守る為、絶対先王を釣り上げて見せる!



「‥‥岸‥‥港から離れて行っているのですね?
港で十数人の人が右往左往している様です。
あなた様を心配しているのでは?」


‥‥私に逃げられた言い訳の心配だろうな‥‥



「気遣う必要は無い。
私を嫌っている連中だ」


「!?
あ、あなた様を嫌う人なんているのですか!?」


少年が驚きを露わに訊いて来る。

その表情、堪らない‥‥!


「たくさんいる。
私を知っている人は二名を除いて全員だろう」


私は事実を隠さず告げる。

少年は私に失望するだろうか‥‥


「まさかっ!!
信じられません!!
あなた様は優しくて、カッコよくて、ステキで!!
心も、姿も、何もかも美しい方です!
あなた様を嫌うなんて、誰にも出来ないはずです!」


少年は美しい顔を真っ赤にして言ってくれる。

もうこのまま、二人だけで見知らぬ国まで行ってしまいたくなる。


「‥‥ありがとう。
君は私を喜ばせる天才だね」



顔が熱い。

きっと私も真っ赤だろうな。


「本当の事を言っただけです。
本当です!」


そう言って少年は俯く。



323‥‥324‥‥325‥‥326‥‥

ナゼか心の中で数を数えながら己を落ち着かせる。




――― もうすぐ目的地へ着く。
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