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アル
20 あなたはあなた
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俯き、両手で顔を覆ってしまったスピカ嬢。
なぜ‥‥
「‥‥昔、父が先生を閉じ込めようとした時‥‥
それまで一度も父に逆らった事が無い大人しい母が先生を逃がしたの。
私、母が誇らしかった。
母の様に強く正しい女性になりたいと思った。
母を尊敬していたの。
だけど‥‥
だけど母も欲望に狂った変態だった‥‥」
顔を覆った手から涙がこぼれ落ちて来る。
「‥‥恐いの。
あの父と母の血を引いている私はやはり変態になってしまうかも‥‥
今は偉そうに二人を軽蔑しているけど、いつか私も‥‥ッ」
「スピカ嬢はスピカ嬢だよ!」
「!! ‥‥ア、アル君‥‥」
スピカ嬢が顔を上げて僕を見る。
大粒の涙がポロポロと零れるから‥‥
思わず手を伸ばし柔らかそうな頬を伝い落ちる涙を指に受ける。
「泣かないで。
泣く必要なんて無いんだから。
二人の子供である事はあなたの全てじゃない。
ほんの一部だよ。
スピカ嬢はスピカ嬢。
僕にとってスピカ嬢は、優しくて強くて清らかで‥‥
可愛い女性だよ。」
「あ‥‥アル君ッ‥‥可愛い女性‥‥はわわわ‥‥」
フフッ、くりくりした目が可愛いな。
良かった、涙も止まった様だ。
ん? 何か急激に部屋の温度が上がって来た?
もう夜明けが近いのかな?
名残惜しいけど、急がなきゃ‥‥か。
僕はベッドから立ち‥‥
痛タタタタ‥‥
‥‥何とかベッドから立ち上がり、スピカ嬢にお礼を言う。
「色々ありがとうございます。
あなたのお陰で逃げる勇気が湧きました。
明るくなる前に行きますね。
‥‥僕を逃がした事で、あなたに迷惑が掛からないといいのですが‥‥」
「‥‥ハッ!
そ、そうなのね!?
もう、お別れなのね‥‥
あ、私の方は大丈夫よ。
上手く誤魔化すわ。
誤魔化せなくても、母は私に甘いから‥‥
‥‥お別れ‥‥なのね‥‥
きッ、気を付けてね!
絶対、逃げ伸びてね!」
「‥‥最後に一つ‥‥いいですか?」
僕の口は、無意識にそう言っていた‥‥
なぜ‥‥
「‥‥昔、父が先生を閉じ込めようとした時‥‥
それまで一度も父に逆らった事が無い大人しい母が先生を逃がしたの。
私、母が誇らしかった。
母の様に強く正しい女性になりたいと思った。
母を尊敬していたの。
だけど‥‥
だけど母も欲望に狂った変態だった‥‥」
顔を覆った手から涙がこぼれ落ちて来る。
「‥‥恐いの。
あの父と母の血を引いている私はやはり変態になってしまうかも‥‥
今は偉そうに二人を軽蔑しているけど、いつか私も‥‥ッ」
「スピカ嬢はスピカ嬢だよ!」
「!! ‥‥ア、アル君‥‥」
スピカ嬢が顔を上げて僕を見る。
大粒の涙がポロポロと零れるから‥‥
思わず手を伸ばし柔らかそうな頬を伝い落ちる涙を指に受ける。
「泣かないで。
泣く必要なんて無いんだから。
二人の子供である事はあなたの全てじゃない。
ほんの一部だよ。
スピカ嬢はスピカ嬢。
僕にとってスピカ嬢は、優しくて強くて清らかで‥‥
可愛い女性だよ。」
「あ‥‥アル君ッ‥‥可愛い女性‥‥はわわわ‥‥」
フフッ、くりくりした目が可愛いな。
良かった、涙も止まった様だ。
ん? 何か急激に部屋の温度が上がって来た?
もう夜明けが近いのかな?
名残惜しいけど、急がなきゃ‥‥か。
僕はベッドから立ち‥‥
痛タタタタ‥‥
‥‥何とかベッドから立ち上がり、スピカ嬢にお礼を言う。
「色々ありがとうございます。
あなたのお陰で逃げる勇気が湧きました。
明るくなる前に行きますね。
‥‥僕を逃がした事で、あなたに迷惑が掛からないといいのですが‥‥」
「‥‥ハッ!
そ、そうなのね!?
もう、お別れなのね‥‥
あ、私の方は大丈夫よ。
上手く誤魔化すわ。
誤魔化せなくても、母は私に甘いから‥‥
‥‥お別れ‥‥なのね‥‥
きッ、気を付けてね!
絶対、逃げ伸びてね!」
「‥‥最後に一つ‥‥いいですか?」
僕の口は、無意識にそう言っていた‥‥
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