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第一章
41 一人の前世に今世は二人?
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【まず。
私はアルの前世のようだね。
そしてあなた達は私の最愛の ”彼 ”の今世。】
開口一番、中二病を疑われる様な事を堂々と言う ”私 ”。
ここはシリウス様の西の屋敷2階の応接室。
1階の応接室とは違い、防音・警備に優れたこじんまりとした部屋だそうで。
‥‥充分広いですけどね。
部屋中央には不思議な素材でできたどっしりとしたテーブル。
それを挟む形で長ソファが置かれています。
余裕で10人ぐらい座れそうですが、3人掛けの様です。
一人で座るには長すぎるソファの中央に足を組みゆったりと腰かける ”私 ”。
この屋敷の ”主 ”感が半端じゃありません。
対面のソファにデネブ様とシリウス様が距離を開けて座っています。
僕の知る限り信じられない程に必死な形相です。
「「‥‥なっ!?
二人とも!?
アルの前世には二人も ”最愛 ”がいたのか!?」」
カッとして叫ぶお二方。
必死な声には非難の色が滲んでいます。
【そこだよ。
一つ目の問題は。
あなた達は、前世では一人だった。】
「「??」」
”私 ”は何を言っているのでしょうか?
そもそも前世とか生まれ変わりって本当にあるんでしょうか?
【うん‥‥つまりね、
前世では一つだった魂が、今世では二つに分かれて生まれて来たんだね。
一つに収まりきらなかったのかな‥‥
魔力が異常に強かったから‥‥】
「「‥‥っ‥‥ケホ、コホ、ケホッ」」
元は一人だった‥‥
と信じるしかないほどシンクロするお二方。
いや、そこまで合う?
【喉が乾いているんだね。
そろそろさっき頼んだお茶が届くんじゃない?】
”私 ”がそう言った直後にノックが聞こえ、メイドの声がします。
「遅れて申し訳ございません。
お茶をお持ち致しました。」
シリウス様が『入れ。』と言う前に、”私 ”がスイと立ち上がります。
素早くドアを開けて、驚いているメイドに入室を促す笑顔を向けます。
‥‥何だろう、この謎行動‥‥
「し、失礼致しますっ‥‥」
可哀想に、メイドは真っ赤な顔で震えてしまっています。
”私 ”の目的が不明です。
ただ‥‥どうもワクワクしているような?
何でルンルン気分でこのメイドさんを見ているのでしょう?
「「 ‥‥ッ!! 」」
ソファの方から何かを察知したかのような気配を感じます。
同時に怒気を含んだ冷気が流れて来ます。
さ、寒‥‥
【寒い。】
”私 ”がお二方をチラと見ます。
‥‥どんな視線だったんでしょうか‥‥
お二方が叱られた子犬の様にシュンと項垂れます。
冷気が止まりました。
【ごめんね、驚かせちゃった?
お茶を淹れるの、手伝うよ。】
ああ、そうですね。
僕でも手伝います。
「‥‥そ、そんな滅相もございませんっ!
お客様のお手を煩わせるなどっ‥‥」
【私はお客様じゃない。
あなたと同じ、伯爵に雇われた身だ。
だからあなたと立場は同じなんだよ。
私の事は気安くアルと呼んでほしい。
あなたを手伝いたいんだ‥‥いいね?】
「まぁ‥‥そうなんですか?
あ‥‥でも、いけませんわ!
アル様のお美しい手を煩わせたくは‥‥
ハッ!?」
【では、あなたの手は尊い手だ。
柔らかくて、優しくて‥‥
こうして触れているだけで癒‥‥】
ガッ、グイッ、ズルズルズル~~~
2人のイケメン貴族に両側から拘束されソファへ連行されます。
僕は死を覚悟するべきでしょうか?
でも、メイドさんの手を握ったのは僕じゃなくて ”私 ”です。
「君は下がっていい。
お茶はこちらでやる。
この子の事は忘れる様に。」
シリウス様がメイドさんに命じます。
「えッ‥‥あ、は、はい、
失礼致します‥‥」
メイドさんがこちらをチラリと盗み見ます。
”私 ”はウインクします。
って、なにウインクなんかしてンの!?
って言うか、僕ウインクなんか出来たの!?
やった事ないんだけどっ!!
「キャッ‥‥」
メイドさんが小さく叫んで、既に真っ赤だった顔を更に真っ赤にさせます。
転びそうになりながらドアを開け、ペコリと頭を下げて‥‥
ニッコリしているらしい ”私 ”に向けて一瞬、小さくウインクを返して。
‥‥や、やるね! メイドさん‥‥
見てはいけない大人の世界を垣間見た‥‥
そんな気持ちだよ!
‥‥はっ‥‥
赤眼と金眼の美青年貴族たちにメチャメチャ見られています。
僕、もう気絶していいですか?
私はアルの前世のようだね。
そしてあなた達は私の最愛の ”彼 ”の今世。】
開口一番、中二病を疑われる様な事を堂々と言う ”私 ”。
ここはシリウス様の西の屋敷2階の応接室。
1階の応接室とは違い、防音・警備に優れたこじんまりとした部屋だそうで。
‥‥充分広いですけどね。
部屋中央には不思議な素材でできたどっしりとしたテーブル。
それを挟む形で長ソファが置かれています。
余裕で10人ぐらい座れそうですが、3人掛けの様です。
一人で座るには長すぎるソファの中央に足を組みゆったりと腰かける ”私 ”。
この屋敷の ”主 ”感が半端じゃありません。
対面のソファにデネブ様とシリウス様が距離を開けて座っています。
僕の知る限り信じられない程に必死な形相です。
「「‥‥なっ!?
二人とも!?
アルの前世には二人も ”最愛 ”がいたのか!?」」
カッとして叫ぶお二方。
必死な声には非難の色が滲んでいます。
【そこだよ。
一つ目の問題は。
あなた達は、前世では一人だった。】
「「??」」
”私 ”は何を言っているのでしょうか?
そもそも前世とか生まれ変わりって本当にあるんでしょうか?
【うん‥‥つまりね、
前世では一つだった魂が、今世では二つに分かれて生まれて来たんだね。
一つに収まりきらなかったのかな‥‥
魔力が異常に強かったから‥‥】
「「‥‥っ‥‥ケホ、コホ、ケホッ」」
元は一人だった‥‥
と信じるしかないほどシンクロするお二方。
いや、そこまで合う?
【喉が乾いているんだね。
そろそろさっき頼んだお茶が届くんじゃない?】
”私 ”がそう言った直後にノックが聞こえ、メイドの声がします。
「遅れて申し訳ございません。
お茶をお持ち致しました。」
シリウス様が『入れ。』と言う前に、”私 ”がスイと立ち上がります。
素早くドアを開けて、驚いているメイドに入室を促す笑顔を向けます。
‥‥何だろう、この謎行動‥‥
「し、失礼致しますっ‥‥」
可哀想に、メイドは真っ赤な顔で震えてしまっています。
”私 ”の目的が不明です。
ただ‥‥どうもワクワクしているような?
何でルンルン気分でこのメイドさんを見ているのでしょう?
「「 ‥‥ッ!! 」」
ソファの方から何かを察知したかのような気配を感じます。
同時に怒気を含んだ冷気が流れて来ます。
さ、寒‥‥
【寒い。】
”私 ”がお二方をチラと見ます。
‥‥どんな視線だったんでしょうか‥‥
お二方が叱られた子犬の様にシュンと項垂れます。
冷気が止まりました。
【ごめんね、驚かせちゃった?
お茶を淹れるの、手伝うよ。】
ああ、そうですね。
僕でも手伝います。
「‥‥そ、そんな滅相もございませんっ!
お客様のお手を煩わせるなどっ‥‥」
【私はお客様じゃない。
あなたと同じ、伯爵に雇われた身だ。
だからあなたと立場は同じなんだよ。
私の事は気安くアルと呼んでほしい。
あなたを手伝いたいんだ‥‥いいね?】
「まぁ‥‥そうなんですか?
あ‥‥でも、いけませんわ!
アル様のお美しい手を煩わせたくは‥‥
ハッ!?」
【では、あなたの手は尊い手だ。
柔らかくて、優しくて‥‥
こうして触れているだけで癒‥‥】
ガッ、グイッ、ズルズルズル~~~
2人のイケメン貴族に両側から拘束されソファへ連行されます。
僕は死を覚悟するべきでしょうか?
でも、メイドさんの手を握ったのは僕じゃなくて ”私 ”です。
「君は下がっていい。
お茶はこちらでやる。
この子の事は忘れる様に。」
シリウス様がメイドさんに命じます。
「えッ‥‥あ、は、はい、
失礼致します‥‥」
メイドさんがこちらをチラリと盗み見ます。
”私 ”はウインクします。
って、なにウインクなんかしてンの!?
って言うか、僕ウインクなんか出来たの!?
やった事ないんだけどっ!!
「キャッ‥‥」
メイドさんが小さく叫んで、既に真っ赤だった顔を更に真っ赤にさせます。
転びそうになりながらドアを開け、ペコリと頭を下げて‥‥
ニッコリしているらしい ”私 ”に向けて一瞬、小さくウインクを返して。
‥‥や、やるね! メイドさん‥‥
見てはいけない大人の世界を垣間見た‥‥
そんな気持ちだよ!
‥‥はっ‥‥
赤眼と金眼の美青年貴族たちにメチャメチャ見られています。
僕、もう気絶していいですか?
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