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第一章

32 飛んでます

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「あ、あの‥‥申し訳ございません!
何か今、ぼ~っとして‥‥気が抜けて‥‥?
口が勝手に喋ったみたいな感じに‥‥
何か不敬な感じだったかも‥‥すみません!!」

そう‥‥何か気が抜けて‥‥?
自然に喋っちゃってた?
自然‥‥とも違うのかな‥‥
何だろう?

あ‥‥お二方とも、顔が赤い‥‥
眼が‥‥‥潤んでる?
なっ‥‥何て艶っぽい表情で僕を見るんですかっ‥‥!?


≪キュゥ~~ン‥‥≫

ベガまで何て声‥‥‥あッ‥‥!
やられた!
やられましたッ
そんなウルウルめん目で見つめられて、やられない奴いる?


タッ! ストッ!

わ!? 突然伯爵様がベガの、僕の後ろに飛び乗りました!

ボフッ

左足でベガに合図すると‥‥

ヴワッ!!

叫ぶ間もなく一瞬で、空高く舞い上がりました!?

ヒュンッ!

そのまま凄いスピードで移動します。


「うわぁ~~~!
す、スゴイです!
伯爵様ッ!!
地上に、沢山の光が瞬いています!
キレイです‥‥‥」


「? 沢山の?
王宮、それに貴族の邸宅周りにしか灯りは灯っていないが‥‥」


「ああ、ヒトの生体エネルギーの光です。
魔力持ちのは更に強い光です。
それらの光が色とりどりに瞬いて、夢のような美しさです‥‥!」


「私にはただの真っ暗闇に見える部分も、君にはそんな風に見えているのか。
‥‥‥全く、君は不思議な少年だ。」


「16才です。 大人の男です。
少年じゃありません。
‥‥これ、伯爵様の西の屋敷へ向かっているのでしょうか?
先程、私を ”連れて行く ”と仰っていた‥‥
もしそうなら、もう遅いので、明日にして頂けないでしょうか?
明日、改めてお伺いいたしますので‥‥‥」

体ごとひねって後ろにいる伯爵様を見上げお願いします。
無表情に戻っている伯爵様は彫刻のような端正さ。
でも、第一印象とは違い、人間らしい危うさを感じます。
――― ゾッとする程、美しいです。


「‥‥3年前、私は君に会っている。
‥‥‥覚えているか?」

僕のお願いには答えない伯爵様。
つまり明日ではダメなんですね。
うう、帰り何時になるんだろう‥‥‥
デネブ様とのお出かけ予定が消えてガッカリ‥‥
でも、やっぱり3年前の事、覚えていたんですね!


「あの、はい。
β王国で、ですよね?
伯爵様が何も仰らないので、お忘れになったのかと。
それにあの時私は逃亡中で、髪を染めたり、変装してましたから。
‥‥‥伯爵様も覚えておいでだったのですね。」


「忘れるはずない。
‥‥‥逃亡中だった?
さっき君は言っていたな。
『逃亡中、追い詰められてβ王国の崖から海に落ちた。
が、何故かα王国の海で、海釣り中のプロキオン卿に救助された。』と。
では、私と君が会ったのは‥‥」


「はい。 崖から落ちる少し前にお会いしました。
私は逃亡中で、人気のない道を選んで逃げていました。
驚きましたよ。
草むらでうずくまり、苦し気な様子の伯爵様を見た時は。」


「ああ。
私は生まれた時から原因不明の病でいつも体調が最悪だった‥‥」

三年前‥‥いえ、もっと昔を思い起こしているのでしょうか‥‥
伯爵様の金色の瞳は神秘的に‥‥

そしてどこか哀し気に見えるのです。
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