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10.ゴリラズとの話し合い(1)

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「俺、もう高2だよ。」
意を決して話し始める。
先ずは、俺はもう不安定だった8才の子供ではないのだ、という事実を明確にする。


「ああ、知ってる!」
「「俺達も高2だ!」」
陸城・深海・真空が力強く答える。


うん、その返し必要ない。
「高2男子、ね。誰かに守ってもらう必要なんて無い・・」


「!、・・何言ってんだ!?」
「俺達はお前を守る為にいるんだぞっ」
「また遠慮か!? 頼むから遠慮なんてしないでくれ!」


すごい勢いで言って来る。“気色ばむ”ってこういう状態を言うのかな。


176センチの俺を約2メートルの3人がグルっと囲んでギャアギャア(しかも重低音ボイス)言う姿は俺が脅されてる様にしか見えないだろう。
――と言っても学校内ではもう見慣れた光景で誰も110番通報はしないんだけど――


ホラ、校門の外に蒼ざめた顔でコッチを見てるお巡りさんがいる。

何も事件なんか起こるはずのない田舎の森林地帯の入り口、特に警戒する事なく巡回していたのに、何か弱そうなのが、何かデカくて恐そうな3人組に囲まれて脅迫されてるっぽい場面に遭遇してしまって固まっている、――って感じに見える。
可哀想に、小刻みに震えている・・・


う~~~ん・・・巡回中のお巡りさんが拳銃を携帯してるか知らないけど、勘違いして抜かれたら困るよな・・・とにかく、脅されてるワケじゃないって事は示しておかなきゃ。

「――とりあえず帰ろう。 歩きながら話そう。」
そう言って歩き出すと、3人は俺の後をついて来る形になる。
静かに、礼儀正しく、付き従うかの様に。
それはさながら主が従者を従えての進行――もしくは“謎のハリモグラ列車”。


小学生の頃は前後2列で歩いてたんだけど、誰が俺の隣を歩くかで常にケンカになってたから、呆れた俺が一人でさっさと歩き、3人はシュンとしながら後をついて来る・・・その形が今でも続いてる。


『大丈夫ですよー、暴力事件じゃないですよー、俺達フツーの友達ですよー』的な空気を出しながら 警官の横を過ぎる。
警官は『この少年・・・何者!?』的な目で俺を見てくる。


―――スイマセン、ただの激弱男子です。
子供の頃、精神的に不安定な期間があったため、後ろの優しいゴリラ・・・いや友人たちの『守ってあげなきゃ』精神に火を点けてしまったらしい、ただそれだけの残念高2男子です・・・


「・・・転校生の事なんか聞いてどーすんだよ?」
陸城が言う。


ん? 吉田君=転校生ってわかってる・・・
――て事は・・・
「吉田君の事、何か知ってる?」


「・・・今分かってるのは3日前に転校してきたって事。」

(陸城、ムッとすんなよ・・・)


「チッ、転校前は海外で暮らしてたって事。」

(深海、舌打ちヤメテ・・・)


「サッカー部入部して即レギュラーになったって事――ぐらいだな。」

(真空、その貧乏ゆすりなぁ・・・)


――ハァぁ(溜息)、ホント3人とも、イケメンの持ち腐れだよな・・・
まぁ、それはこれから正していくとして、吉田君に関しては俺が小池に聞いた話とほぼ同じだな。


「――これ以上は今後プロを雇って調査する。」
真剣な顔で真空が言い切る。


「は? プロ? 何でそんな必要・・・」


3人の顔は、俺達は当たり前の必要な処理をしている、という自信で満ち溢れている。
心配いらないよ、を意味する優しい笑顔を一瞬だけ見せ、直ぐにその表情を任務に戻す。

「アイツはあれんに妙な態度だった。危険人物臭がハンパない。
キチッと調査しなきゃならん!」


「いや、調査なんかしなくても、本人に聞きゃいーじゃん?!」
何を聞くのだ?と思いながらも、とにかくゴリラ達を止めねばならない。


「「「言葉が通じる気がしない。」」」


――今のところ確かに。
でも止めねばならない。


「小池が言うには、日本語は不自由ないらしいよ?
クラスではちゃんと意思疎通出来てるらしい。 むしろ流暢だって・・・
さっきは、たまたま変だったんじゃない?」


「たまたま?」
「・・・フッ・・・」
「・・・ハハ・・・」


3人して苦笑している。


『まったくボウヤだな』
『甘ちゃんにもほどがある』
『お花畑育ちか・・・』


――的な事を言外に言われてる気がする。



フゥと息を吐く。どうやら俺は覚悟が足りなかったんだな。


「逃げないで、ちゃんと言葉にしないと解かんないよな。
ちゃんと言うから、ちゃんと聞いてくれ。」
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