上 下
30 / 117
2 四花繚乱

29 クローバー公女オクサリス 4

しおりを挟む
オクサリスが母公妃を真っ直ぐ見据えたまま言い放つ。


「――血よりも濃い絆がわたくしとカーミレの間にはあるの。
カーミレに害をなそうとする者は誰であってもわたくしが許さない!」

「‥姫様ッ‥」


いつの間にかカーミレよりも背が高くなっていたオクサリス。

あの小さくて、体が弱くて、いつも不安気に瞳を揺らしていた姫様が、こんなに強く立派になられて私を守ろうと――!

カーミレの頬を幾重にも涙が伝う。


「‥な、何が絆よ?
カーミレは侍女の仕事をしてるだけ!
お金の為にやっているただの仕事を絆だとか笑っちゃうわ‥」

「あなたと話す事は何も無いわ。
今すぐこの部屋を出てお行きなさい。
――命令よ!」

「ッ!偉そうに!
そんな風にしていられるのも今の内よ!
わたくしが皇后になったら、また立場が逆転するんだからッ!」

「「――は??」」


クローバー公妃がカード皇帝の皇后になる?

突然おかしな事を言い出す公妃に、オクサリスもカーミレも揃ってポカンとする。

その様子に気を良くしたのか、公妃は密かな計画をぶちまける!


「わたくしはね、今夜皇帝陛下に抱かれるつもり――夜這いをかけるのよ!
今回のカード宮殿への御招待の話を聞いた時からそうすると決めて来たんだから!
――あら、何をビックリしているの?
本当なら皇帝陛下の妃になるべきはわたくし達の世代なのよ!
20年前、わたくしはお后候補の一人だったんだから!
その時は皇帝陛下に結婚の御意志が無くてお会いする事も叶わなかったけど…
やっと結婚する気になられたのだから、今回のお話はわたくし達の世代に来るのが筋ってものでしょうよ?
皇帝陛下だってあなた達の様なお子様より、大人の魅力タップリの女盛りのわたくしの方がいいと直ぐに分かる――わたくしがこのカラダで教えて差し上げる!
お世継ぎ問題だってあるのだから。
子を産む能力があるかどうかも分からないあなた達より、既に子を産んだ実績のあるわたくしの方が相応しいのよ!
――ふんッ、そんな顔しちゃって…
今さら焦ったって夜這いをやめてあげないわよ!
今夜の為にずっと体の手入れをして最高に仕上げて来たんだから!
アッハハハハァ!
真っ青な顔しちゃってさっきまでの威勢はどうしたのよ!?
え? 後ろ? 何?」


黙って俯き加減で公妃の後ろを指差すオクサリスとカーミレに、公妃は後ろに目をやり――絶句する。

萌黄色の髪に金の瞳。

オクサリスと全く同じ色のその男性はオクサリスの父親、公妃の夫――

クローバー公国君主クローバー公王である。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役公爵令嬢のご事情

あいえい
恋愛
執事であるアヒムへの虐待を疑われ、平民出身の聖女ミアとヴォルフガング殿下、騎士のグレゴールに詰め寄られたヴァルトハウゼン公爵令嬢であるエレオノーラは、釈明の機会を得ようと、彼らを邸宅に呼び寄せる。そこで明された驚愕の事実に、令嬢の運命の歯車が回りだす。そして、明らかになる真実の愛とは。 他のサイトにも投稿しております。 名前の国籍が違う人物は、移民の家系だとお考え下さい。 本編4話+外伝数話の予定です。

嫌われ王妃の一生 ~ 将来の王を導こうとしたが、王太子優秀すぎません? 〜

悠月 星花
恋愛
嫌われ王妃の一生 ~ 後妻として王妃になりましたが、王太子を亡き者にして処刑になるのはごめんです。将来の王を導こうと決心しましたが、王太子優秀すぎませんか? 〜 嫁いだ先の小国の王妃となった私リリアーナ。 陛下と夫を呼ぶが、私には見向きもせず、「処刑せよ」と無慈悲な王の声。 無視をされ続けた心は、逆らう気力もなく項垂れ、首が飛んでいく。 夢を見ていたのか、自身の部屋で姉に起こされ目を覚ます。 怖い夢をみたと姉に甘えてはいたが、現実には先の小国へ嫁ぐことは決まっており……

推しのトラウマメイカーを全力で回避したら未来が変わってしまったので、責任もって彼を育てハッピーエンドを目指します!

海老飛りいと
恋愛
異世界転生したら乙女ゲームのスチルに一瞬映るモブキャラ(たぶん悪役)で、推しキャラに性的トラウマを与えたトラウマメイカー役だった。 今まさにその現場に当人としていることを思い出したので、推しを救いだしたらルートが改変? 彼の未来が変わってしまったようなので、責任をとってハッピーエンドになるようにがんばる! な、モブキャラの大人女性×ショタヒーローからはじまるちょっとえっちなギャグラブコメディです。 ライトな下品、ご都合あり。ラッキースケベ程度のエロ。恋愛表現あり。年の差と立場と前世の記憶でじれじれだけどなんだかんだで結果的にはラブラブになります。 完結しました。

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。

拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。 一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。 残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。

運命の再会だと言う騎士様の愛が重すぎます!!

茜カナコ
恋愛
私は子どものころ、国王のパレードを見て騎士に憧れを抱いていた。 自分も騎士になりたいと、騎士団の訓練をたびたび、こっそり見に行っていた。 その時に、私は騎士見習いのブラッドのブラッドを助けた。月日は流れ、私は、騎士となり結婚を考える年齢になったブラッドと、再会した。婚約相手として。でも、ほぼ初対面と言っていいくらいの関係のはずなのに、ブラッド様の愛が重すぎるんですけど!?

私、侯爵令嬢ですが、家族から疎まれ、皇太子妃になる予定が、国難を救うとかの理由で、野蛮な他国に嫁ぐことになりました。でも、結果オーライです

もぐすけ
恋愛
 カトリーヌは王国有数の貴族であるアードレー侯爵家の長女で、十七歳で学園を卒業したあと、皇太子妃になる予定だった。  ところが、幼少時にアードレー家の跡継ぎだった兄を自分のせいで事故死させてしまってから、運命が暗転する。両親から疎まれ、妹と使用人から虐められる日々を過ごすことになったのだ。  十二歳で全寮制の学園に入ってからは勉学に集中できる生活を過ごせるようになるが、カトリーヌは兄を事故死させた自分を許すことが出来ず、時間を惜しんで自己研磨を続ける。王妃になって世のため人のために尽くすことが、兄への一番の償いと信じていたためだった。  しかし、妹のシャルロットと王国の皇太子の策略で、カトリーヌは王国の皇太子妃ではなく、戦争好きの野蛮人の国の皇太子妃として嫁がされてしまう。  だが、野蛮だと思われていた国は、実は合理性を追求して日進月歩する文明国で、そこの皇太子のヒューイは、頭脳明晰で行動力がある超美形の男子だった。  カトリーヌはヒューイと出会い、兄の呪縛から少しずつ解き放され、遂にはヒューイを深く愛するようになる。  一方、妹のシャルロットは王国の王妃になるが、思い描いていた生活とは異なり、王国もアードレー家も力を失って行く……

処理中です...