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2 四花繚乱
19 4公国君主ファミリー、召集される
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ここはカード帝国。
帝都の中心にあるカード宮殿正門前は異様な賑わいをみせている。
帝国支配下にある4公国――スペード公国、ハート公国、ダイヤ公国、クローバー公国から公王ファミリーが招集――
いや、招待されているのだ。
4公国から公王、公妃、そして公女――つまり『両親と娘』が集められた理由は一つ。
正式な発表は無いがカード皇帝の花嫁選びの為だとの情報が飛び交っている。
カード皇帝は38才。
この年まで婚姻とは無縁だった。
戦で忙しかったというワケではなく、帝国の維持に苦労していたわけでもない。
外的要因ではなく。
ただ本人が完全拒絶を貫いて来たのだ。
その拒絶ぶりは徹底しており。
周りからどんなに懇願されても皇帝は断じて皇后を娶ろうとせず。
『要らん』
低く地を這う様な声でそう言われれば、血縁者であれ側近であれ震え上がり、それ以上婚姻を勧める事は出来ずにズルズルと月日が過ぎ――帝国民は囁き合う。
ゲイでは?
不能かも?
呪いとか?
いや、そもそもカード皇帝って実在してるの?
何せ皇帝は子供の頃からカード宮殿に完全に引きこもって一切姿を現さない。
外交で出かけることも無い。
カード宮殿に人が入るのも厳しく制限しており、重厚な門は虫一匹通すまじという外部に対する拒絶感が尋常ではない。
誰も皇帝に会った事が無いのだからきっともう死んでいるのでは――
だけど現皇帝の時代になってからは帝国が安定し生活も向上している。
前皇帝時代に漂っていた暗い空気はもうどこにも無い。
では、皇帝というのは個人ではなくチーム名なのではないか…?
様々な噂が飛び交うが皇帝はどこ吹く風。
誰もが皇帝の婚姻…つまり賢帝の血を引く後継者を諦めかけた時、4公国に舞い込んだ『公女を花嫁候補に』という情報。
突然の、驚きの、願ってもない情報を手にした4公国。
実際に皇帝陛下からカード宮殿への招待状を受け取った4公王家は上を下への大騒ぎ。
何せ4公国には年頃の自慢の美しき公女がいるのだ。
『絶対に我が娘を皇后に!』と各公王は気合を入れまくる。
戦闘モードの父とは違い、公女たちは嫌悪感を露わにする。
16才~18才と年若い公女たち。
38才のオジサン――しかもカード宮殿に引き籠り限られた者にしか姿を見せない変人と結婚だなんて絶対イヤと4人全員が拒否するものの聞き入れられるワケも無し。
各公王家では壮絶な公女説得劇が繰り広げられるが、公女は泣いたり黙ったりするばかりで首を縦に振らず、とうとう公王達は言い放つ。
逆らうのなら勘当絶縁する、いや毒杯を飲め!
贅沢三昧で育った公女たちには路頭に迷う自分の姿も毒死する未来もムリ過ぎる。
『自分には甘い』とばかり思っていた父公王の本気を前に我が儘を押し通す事は不可能と悟らざるを得ない。
『ならば』
公女たちは決意する。
『花嫁選び』で選ばれなければいい。
失礼の無い程度に皇帝に嫌われてしまおう。
早々にレースから離脱して、華やかな帝都で遊びまくるのはどうよ?
公女たちは別の意味でやる気満々となる。
結果、4家全てが皇帝の招待を喜んで受け、カード宮殿に顔を揃える事となった。
ほぼ同時に帝都に到着した4公王家。
カード宮殿正門へと続くぶっとく長い道を馬車を連ねてゆうるり進む。
一公王家の馬車が10台ほど。
計40台ほどの馬車がパレードよろしく宮殿に向かう道の両サイドには帝都民たちが集まり花を投げて大歓迎する。
「公女様達、がんばって~~!」
「皇帝陛下のお心を射止めてね~~!」
「早くお世継ぎを産んでおくれ~~!」
等々、公女達には有難くないエールを送られながらやっと宮殿内へ。
「こちらで少々お待ち下さいませ」
と通された豪華な部屋には全員がゆったりくつろげる様お茶の準備が整っている。
公妃達が牽制し合って修羅場になるのではとの予想を裏切り大人達は大人の会話を繰り広げている。
どうやらベールを被った公妃――ハート公妃が上手く場を回しているようである。
ホッとした様に、拍子抜けした様に大人達を見ながら公女達は無言でお茶を飲む。
互いに互いを観察し合いながら。
(…どうやら)
(みんな考えてる事は同じ様ね)
(輝くばかりに美しく華やかと噂の3人だけど、意外と大人しい――ううん、敢えての『地味』を演出している様ね)
(わたくしももっと思い切ったブスメイクが必要かもしれないわ…)
戦いは既に始まっている。
公女の胸の内で作戦は修正され練り直される。
誰にも相談は出来ない。
たった一人で闘わねばならない。
公女付きの侍女達とは仲良しだけど…
彼女たちも自分が仕える公女が皇后となる事を望んでいる。
今回はいつもの様に味方として信用するわけにはいかない。
下手に相談して父公王にチクられたら面倒な事になる。
4人が4人とも同じ気持ちで戦いに挑む。
『負けるが勝ち』のこのレース。
だが、誰かが勝たねばならない。
絶対勝ってはいけない戦いに勝ってしまうのは誰なのか――‥
私は絶対イヤ!
その為に、出来る事は全てやるわよ!
『カード宮殿滞在のしおり』なるものをにこやかな宮殿侍女から渡された公女達。
『宮殿侍女の制服カワイイ』などと思いながら鼻息荒くしおりに目を通していると――
「お待たせ致しました
皇帝陛下がお会いになります。
先ずは一番最初にお着きになられたスペード公国ファミリーの皆さま、どうぞ」
来た!
始まった!
4公国に緊張が走る!
先ずは先着順に公王家ごとにご挨拶となる――
帝都の中心にあるカード宮殿正門前は異様な賑わいをみせている。
帝国支配下にある4公国――スペード公国、ハート公国、ダイヤ公国、クローバー公国から公王ファミリーが招集――
いや、招待されているのだ。
4公国から公王、公妃、そして公女――つまり『両親と娘』が集められた理由は一つ。
正式な発表は無いがカード皇帝の花嫁選びの為だとの情報が飛び交っている。
カード皇帝は38才。
この年まで婚姻とは無縁だった。
戦で忙しかったというワケではなく、帝国の維持に苦労していたわけでもない。
外的要因ではなく。
ただ本人が完全拒絶を貫いて来たのだ。
その拒絶ぶりは徹底しており。
周りからどんなに懇願されても皇帝は断じて皇后を娶ろうとせず。
『要らん』
低く地を這う様な声でそう言われれば、血縁者であれ側近であれ震え上がり、それ以上婚姻を勧める事は出来ずにズルズルと月日が過ぎ――帝国民は囁き合う。
ゲイでは?
不能かも?
呪いとか?
いや、そもそもカード皇帝って実在してるの?
何せ皇帝は子供の頃からカード宮殿に完全に引きこもって一切姿を現さない。
外交で出かけることも無い。
カード宮殿に人が入るのも厳しく制限しており、重厚な門は虫一匹通すまじという外部に対する拒絶感が尋常ではない。
誰も皇帝に会った事が無いのだからきっともう死んでいるのでは――
だけど現皇帝の時代になってからは帝国が安定し生活も向上している。
前皇帝時代に漂っていた暗い空気はもうどこにも無い。
では、皇帝というのは個人ではなくチーム名なのではないか…?
様々な噂が飛び交うが皇帝はどこ吹く風。
誰もが皇帝の婚姻…つまり賢帝の血を引く後継者を諦めかけた時、4公国に舞い込んだ『公女を花嫁候補に』という情報。
突然の、驚きの、願ってもない情報を手にした4公国。
実際に皇帝陛下からカード宮殿への招待状を受け取った4公王家は上を下への大騒ぎ。
何せ4公国には年頃の自慢の美しき公女がいるのだ。
『絶対に我が娘を皇后に!』と各公王は気合を入れまくる。
戦闘モードの父とは違い、公女たちは嫌悪感を露わにする。
16才~18才と年若い公女たち。
38才のオジサン――しかもカード宮殿に引き籠り限られた者にしか姿を見せない変人と結婚だなんて絶対イヤと4人全員が拒否するものの聞き入れられるワケも無し。
各公王家では壮絶な公女説得劇が繰り広げられるが、公女は泣いたり黙ったりするばかりで首を縦に振らず、とうとう公王達は言い放つ。
逆らうのなら勘当絶縁する、いや毒杯を飲め!
贅沢三昧で育った公女たちには路頭に迷う自分の姿も毒死する未来もムリ過ぎる。
『自分には甘い』とばかり思っていた父公王の本気を前に我が儘を押し通す事は不可能と悟らざるを得ない。
『ならば』
公女たちは決意する。
『花嫁選び』で選ばれなければいい。
失礼の無い程度に皇帝に嫌われてしまおう。
早々にレースから離脱して、華やかな帝都で遊びまくるのはどうよ?
公女たちは別の意味でやる気満々となる。
結果、4家全てが皇帝の招待を喜んで受け、カード宮殿に顔を揃える事となった。
ほぼ同時に帝都に到着した4公王家。
カード宮殿正門へと続くぶっとく長い道を馬車を連ねてゆうるり進む。
一公王家の馬車が10台ほど。
計40台ほどの馬車がパレードよろしく宮殿に向かう道の両サイドには帝都民たちが集まり花を投げて大歓迎する。
「公女様達、がんばって~~!」
「皇帝陛下のお心を射止めてね~~!」
「早くお世継ぎを産んでおくれ~~!」
等々、公女達には有難くないエールを送られながらやっと宮殿内へ。
「こちらで少々お待ち下さいませ」
と通された豪華な部屋には全員がゆったりくつろげる様お茶の準備が整っている。
公妃達が牽制し合って修羅場になるのではとの予想を裏切り大人達は大人の会話を繰り広げている。
どうやらベールを被った公妃――ハート公妃が上手く場を回しているようである。
ホッとした様に、拍子抜けした様に大人達を見ながら公女達は無言でお茶を飲む。
互いに互いを観察し合いながら。
(…どうやら)
(みんな考えてる事は同じ様ね)
(輝くばかりに美しく華やかと噂の3人だけど、意外と大人しい――ううん、敢えての『地味』を演出している様ね)
(わたくしももっと思い切ったブスメイクが必要かもしれないわ…)
戦いは既に始まっている。
公女の胸の内で作戦は修正され練り直される。
誰にも相談は出来ない。
たった一人で闘わねばならない。
公女付きの侍女達とは仲良しだけど…
彼女たちも自分が仕える公女が皇后となる事を望んでいる。
今回はいつもの様に味方として信用するわけにはいかない。
下手に相談して父公王にチクられたら面倒な事になる。
4人が4人とも同じ気持ちで戦いに挑む。
『負けるが勝ち』のこのレース。
だが、誰かが勝たねばならない。
絶対勝ってはいけない戦いに勝ってしまうのは誰なのか――‥
私は絶対イヤ!
その為に、出来る事は全てやるわよ!
『カード宮殿滞在のしおり』なるものをにこやかな宮殿侍女から渡された公女達。
『宮殿侍女の制服カワイイ』などと思いながら鼻息荒くしおりに目を通していると――
「お待たせ致しました
皇帝陛下がお会いになります。
先ずは一番最初にお着きになられたスペード公国ファミリーの皆さま、どうぞ」
来た!
始まった!
4公国に緊張が走る!
先ずは先着順に公王家ごとにご挨拶となる――
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