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「ハッ‥‥!」

「‥‥まぁッ」

「ムゥッ‥‥」



カトレア伯爵家のお茶会に、ひときわ目を引くカップルが現れた。



男の名はセロシア。 23才。

継ぐべき爵位を持たない侯爵家の三男である。

知的なダークレッドの瞳に燃える様な赤い髪は短く整えられ、派手になり過ぎずスッキリとした印象が好ましい美丈夫である。



女の名はクレオメ。 21才。

没落寸前の男爵家の一人娘。

腰まである落ち着いた藤色の髪に赤紫の魅惑的な瞳を持つクールな美女だ。

特に纏めていない髪には瞳と同じ色の花飾りが散りばめられており、妖精の様な雰囲気を醸し出している。



この美しいカップルが到着したのと同時に、楽団がダンスの為の音楽を奏で始めた。



セロシアとクレオメは阿吽の呼吸で優雅にダンスを始める。

お互いを見つめる眼差しは熱い。



強力なライバルの出現にたじろいでいた他の参加者たちはそのあまりの美しさにポウッと見惚れてしまい‥‥

ハッと我に返り慌てて自分達もダンスを始める。


カトレア伯爵夫妻はダンスがお好きなのだ。


一月前に突然届いた今日のカトレア伯爵家のお茶会の招待状。

カトレア伯爵夫妻が新たな『若いお友達』選定の為に開くので間違いない。

このチャンスを何とかモノにしたい!

夫妻の目に留まる為にと、講師を呼んでダンスの練習に明け暮れた。

努力の結果を存分に披露しなければッ!



ダンスが一段落してクレオメ・セロシアカップルが果実水で喉を潤している時。


一人の壮年の男が影のように近付いて来た。

カトレア伯爵家の執事である。



「どうぞこちらへ。
カトレア伯爵夫妻がお会いになりたいそうです」
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