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第三章

3の04 それぞれに、意外な反応

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王家の離宮 ”湖の貴婦人 ”に囚われのラメール王国第一王女、シレーヌ。

ある朝‥‥

『妖しの沼の魔女』に魔法でゴブリンにされてしまう。

魔法を解く方法はただ一つ。

変身前に口付けした事のある相手に、変身後その時と同等以上の愛を持って口付けされる事(家族は除外)。


まだ15才のシレーヌはキスの経験など無く、つまり一生ゴブリンのまま!



(‥‥なのに何で絶望しないの!?
あれ程の美貌を失って、なのに前向きなのは何故!?
フラット殿下がどこか嬉しそうにちょっかいを出すのはどういう事なの!?)



シレーヌが第二王子フラットに捨てられ絶望する姿を見るのを楽しみにしていたモーレイは、思惑が外れる。



第二王子フラットの方はと言うと――

ベビーピンクのゴブリンの可愛さにやられてしまっている!

それに、とフラットは首をひねる。

不思議な事だが、ゴブリンになってからのシレーヌはちゃんと会話をしてくれる。

人間の時のシレーヌは話しかけても押し黙り何も返さない事が多かった。

ゴブリン・シレーヌはパッと返事を返してくれるし‥‥

一生懸命話す姿がメチャメチャ可愛い!


(私の内に溢れて来るもの‥‥これは何なんだ?
コレが『父性愛』というものだろうか?
愛しい、慈しみたい。
今の私は、ゴブリン・シレーヌを見るだけで癒されてしまう。
だが‥‥)


だが、ソレとコレとは別だ!

キリッ!

とフラットは、癒され、だらしなく緩んだ顔を引き締める。


ゴブリン・シレーヌは可愛いが、やはり人間の、本当のシレーヌに戻ってもらわなければ困る!

欲しいのは、抱きたいのは、本当のシレーヌなのだ!

私は必ずシレーヌを人間に戻し、娶るのだ!


そう決意を新たにする側で、ベビーピンクのゴブリンがぷぅっと頬を膨らませる。



「サッサとわーちを自由にちて下ちゃい!
ゴブリンんにゃった途端、今まで出来ていた事が出来なくなぃまちた!
学校?
行かないでちゅ!
虐めやえてう時間があったや、自分に出来ゆ事探ちて、弟子入うぃしまちゅ!
お城にいたや、何も出来まちぇん!」

「歩くのもトテトテと覚束おぼつかないのに、私の庇護無しに生きられるわけ無いだろう?
大丈夫、必ず人間に戻‥‥」

「戻らなくていいでちゅよ!
何度もそう言ってまちゅ!
だかや、ゴブインとして出来ゆ事、見ちゅけゆんでちゅ!
遊んでうヒマは無いでちゅう!」

「強がらなくても‥‥
君だって自分の美し過ぎる容姿を気に入っていただろう?
よく鏡を見ていたじゃないか?」

「ちょ‥ひょう‥表情を見てたでちゅ!
弱い顔ちてたや直ちゅ為でちゅ!」

「‥‥可愛いな‥‥」

「はぁ!?」

「あ、いや済まない。
うん‥‥
どうしようかな。
とりあえず私のお膝に座るかい?
あ、待って、ちゃんと考えるからトテトテ歩いて行かないで‥‥可愛い‥」
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