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第二章

2の26 自覚

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口を閉じれば静寂が。

静寂の中見つめ合ってしまう事への、何とも形容しがたい何かが。

それは不安の様で、畏れの様で‥‥

違う。

分からない。

分からないから、取り敢えず全力回避しなければ!

何だかバカな事をしてしまう自信がある少女は、静寂を避ける様に言葉を継ぐ。



「‥‥私は、ご自分が大変な時でも周りに心を配れる彼の崇高さを尊敬し、差し伸べられた手と瞳の優しさに心を奪われてしまったのです。
あの御方は私の初恋の人で、命の恩人でもあるのです」

「君こそが、救助された者達全員の命の恩人だろう?
もちろん、その男も含めて」

「ふふ、それだけは少し誇らしく嬉しく思ってます。
あの事がなければ、今こんな目に遭ってはいないとも思ってしまいますが‥‥」



ハッとゴブリンの顔が苦し気に歪むのを見て、

『何故ゴブリンさんがそんな申し訳なさそうな顔を?』

と少女は不思議に思う。



「フラット‥‥第二王子は間違っている!
何とかしなければ‥‥
私は、私に出来る事をする!」

「! ダメです!
誰かに聞かれたら、ゴブリンさんが不敬警察に捕まってしまいます!
私は大丈夫です!
絶対殿下に嫌われて、あの城から追い出されて見せます!
いえ、まず、成人まで待ってもらっても、妃にはなれないとキチンと伝えます。
子供だから嫌だったのではなくて、他に想う人がいたから嫌なのだと。
それで分かってもらえなかったら、逃走します。
‥‥そうしたら、ゴブリンさんに会いに行っていいですか?
ハッ‥‥!
あ‥‥私はあの、
また、会いたいです。
会いたいのです‥‥」



言いながら自分の中に芽生えたものに気付かされる少女。

新たな恋とその自覚は少女を、その存在を覚醒させる凄まじい力となるが‥‥



「‥‥君は‥‥」

「はっ、はいっ!
あ、私はシレーヌといいます!」

「え‥‥ああ。
私はレイという」

「レイ様‥‥
会ったばかりですが、私はあなたが‥」

「‥‥ダメだ!」



強い拒絶にシレーヌはビクッと体を揺らす。


‥‥心はもっと揺れている‥‥
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