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第一章
1の44 魔法を解くには
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キタキタ、私の出番!
とばかりに、聖女マーリンがズイッとゴブリンの前に進み出て、胸の前で手を組み、芝居じみた大声を上げる。
「まあぁ、お可哀想に!
誰もが憧れる美しいあなた様が、誰もが忌み嫌う醜いゴブリンになってしまったなんて!
だけど安心して、私のキスでその魔法は解けるから!」
「‥‥君のキスで?」
「ええ!
ゴブリンになる前にキスした事がある相手と、その時以上に愛のこもったキスをすれば、魔法は解けて人間に戻れるのよ!
そしてキスで魔法を解いた相手と結婚し、愛し合い、幸せに暮らす‥‥
素敵でしょう?」
「断る!」
「その魔法は、私のキスでしか解けないのよ?
弟の第二王子と違って堅物のあなた、
今まで女性を遠ざけて来たんですもの。
私はあなたとキスした唯一の相手でしょう?
ねぇ、輝く金髪に深く美しい青い瞳の美しい自分に戻りたくないの?
誰もが一目で恋に落ちてしまう美しい本当のあなたに!」
「君は‥‥そうか、この為だったのか!
全ては私と結婚する為の嘘だったんだな!?
父上からシツコクされて困っているというのも、あの不自然な婚約式も‥‥」
(形だけの婚約のはずが小規模とは言え婚約式が行われた。
『書類にサインするだけ』のはずだったのに、不意打ちで『誓いのキス』をされた‥‥ああ、キス‥‥この為だったのか!)
「私は、何と愚かだったのだ!
いくら父上が女性にだらしないからって、父上本人に確認もせず騙されるなんて!
だが、私は君の思い通りになどならない!
君と結婚などしない!」
「ま、まぁッ‥‥どうしてなの!?
私は誰よりも美しく、しかも聖女で、何よりあなたを愛しているのにッ!
ッ、私の愛を拒めるのも今の内よ!
ゴブリンがどんな扱いを受けるか、少し経験してみれば直ぐに考えも変わるわ!
ホホ、私は心が広いから、待ってあげる。
私のキスが欲しくなったらいつでも言って頂戴ね」
ゴブリンとなった彼は踵を返し、祭壇の間を出て行く。
その後ろ姿に聖女マーリンはなおも言葉を投げ続ける。
「宮殿敷地内からは出ないで下さいませ!
出られない様、騎士に命じておきます!
きっとすぐに、私のキスが欲しくなりますわ!
今までの輝かしい人生を捨てて、一生ゴブリンのまま生きる苦痛に耐えられるはずないのですもの!
そして私達は結婚し愛し合うのです!
ホホホ、ホ~ッホッホッホッホ‥‥」
神殿中に木霊する不気味な笑い声から逃れる様に、急ぎ神殿を後にするゴブリンは
――ブルーフィン王国の第一王子、レイ・ブルーフィンである。
‥‥いや、レイ・ブルーフィンであったゴブリン、と言うべきか‥‥
とばかりに、聖女マーリンがズイッとゴブリンの前に進み出て、胸の前で手を組み、芝居じみた大声を上げる。
「まあぁ、お可哀想に!
誰もが憧れる美しいあなた様が、誰もが忌み嫌う醜いゴブリンになってしまったなんて!
だけど安心して、私のキスでその魔法は解けるから!」
「‥‥君のキスで?」
「ええ!
ゴブリンになる前にキスした事がある相手と、その時以上に愛のこもったキスをすれば、魔法は解けて人間に戻れるのよ!
そしてキスで魔法を解いた相手と結婚し、愛し合い、幸せに暮らす‥‥
素敵でしょう?」
「断る!」
「その魔法は、私のキスでしか解けないのよ?
弟の第二王子と違って堅物のあなた、
今まで女性を遠ざけて来たんですもの。
私はあなたとキスした唯一の相手でしょう?
ねぇ、輝く金髪に深く美しい青い瞳の美しい自分に戻りたくないの?
誰もが一目で恋に落ちてしまう美しい本当のあなたに!」
「君は‥‥そうか、この為だったのか!
全ては私と結婚する為の嘘だったんだな!?
父上からシツコクされて困っているというのも、あの不自然な婚約式も‥‥」
(形だけの婚約のはずが小規模とは言え婚約式が行われた。
『書類にサインするだけ』のはずだったのに、不意打ちで『誓いのキス』をされた‥‥ああ、キス‥‥この為だったのか!)
「私は、何と愚かだったのだ!
いくら父上が女性にだらしないからって、父上本人に確認もせず騙されるなんて!
だが、私は君の思い通りになどならない!
君と結婚などしない!」
「ま、まぁッ‥‥どうしてなの!?
私は誰よりも美しく、しかも聖女で、何よりあなたを愛しているのにッ!
ッ、私の愛を拒めるのも今の内よ!
ゴブリンがどんな扱いを受けるか、少し経験してみれば直ぐに考えも変わるわ!
ホホ、私は心が広いから、待ってあげる。
私のキスが欲しくなったらいつでも言って頂戴ね」
ゴブリンとなった彼は踵を返し、祭壇の間を出て行く。
その後ろ姿に聖女マーリンはなおも言葉を投げ続ける。
「宮殿敷地内からは出ないで下さいませ!
出られない様、騎士に命じておきます!
きっとすぐに、私のキスが欲しくなりますわ!
今までの輝かしい人生を捨てて、一生ゴブリンのまま生きる苦痛に耐えられるはずないのですもの!
そして私達は結婚し愛し合うのです!
ホホホ、ホ~ッホッホッホッホ‥‥」
神殿中に木霊する不気味な笑い声から逃れる様に、急ぎ神殿を後にするゴブリンは
――ブルーフィン王国の第一王子、レイ・ブルーフィンである。
‥‥いや、レイ・ブルーフィンであったゴブリン、と言うべきか‥‥
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