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第一章

1の30 第二王子は戻れない

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シレーヌ姫が微かな悲鳴を上げる。


いけない、腕の力を強め過ぎてしまった‥‥

だけど、そんな色っぽい声を出してはいけないよ?



熱い‥‥

この体温‥‥
この想い‥‥


君に伝染うつしたい
君に注ぎたい

君と一つになりたい

‥‥苦しい
欲しい‥‥
全部欲しい‥‥


もうムリだ

もう我慢出来ない!


シレーヌ姫は自身が子供である事を主張して来るが。


ハッキリ言って、もう充分に‥‥

いや、むしろ過分に蠱惑的で‥‥


それでも子供のフリをして私を拒むのなら‥‥


そうだ、私が目覚めさせてやればいい‥‥

その白く細い足を開いて、大人への扉を優しく刺激して開いてやればいい‥‥


よし、今すぐ寝室に連れ込んで‥‥ハッ!?


トントン、トントン


シレーヌ姫が私の腕をトントンとたたいている?

すっかり妄想の世界に没頭していて、すぐに現実に戻れない私の耳を、快活ともいえる声がノックする。



「始まりましたよ!
イルカのショーです!
ホラ、見て下さい!
あんなにたくさんのイルカが!」



促されて目を開け、海に目を向けると、


バシャーン!


何十頭ものイルカが一気に海面から大ジャンプしたのだ!

そして弧を描き海面に着水すると同時に別の何十頭ものイルカが大ジャンプ!

デザインされ、訓練されたかの様な見事な動き!


信じられない‥‥

こんな光景を見ても私の頭は切り替わろうとしない。

シレーヌ姫を抱く事しか考えられない。


眼前で繰り広げられている素晴らしいイルカ・ショー。

それは現実のものでない様にスローモーションのように見える。


だから何だ?

どうしろと言うのだ?

今、イルカどころではないのだ!

自分のコントローラーを失くした私が口を開け固まっていると‥‥


ハッ!?
あッ!?
シレーヌ姫がいない!?
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