【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

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※とある護衛騎士フレデリックのお話・続。


 テュティリア様が渓谷の谷底へと突き落とされた後、予め王都から呼んでいた騎士団がやって来ました。何かあった時のためと思って呼んでいたのですが、悪い予感は当たるもので、まったく間に合いませんでしたが。

 騎士団の先頭にいるのは、テュティリア様の護衛を共にしていたハンスです。馬から降りて駆け寄ってきたハンスは、周囲の状況と私達の顔色を見て問いかけました。

「フレデリック、この状況はどうした?」

「ハンス……テュティリア様が……」

「ハンス、騎士団に命じてテュティリア様殺害の重罪人の確保が先決です」

「どういう事だグレンダ!?」

 私がテュティリア様の後を追うのを止めてくれたグレンダが、混乱して話せずにいた私に代わり、ハンスと騎士団へと事の顛末を話しております。

 彼のおかげで、幾分か落ち着きを取り戻せた私は、ハンスと騎士団にグレンダの話の補足を付け足します。グレンダは些か話をはしょりすぎですので。

 動き出した騎士団に囲まれる伯爵家の令息と騎士家の令息です。空気が読めるのか、大人しいものでしたが……

バシン!!

「お前は何をやっている!!」

 騎士団の一人が、グリード殿下の取り巻きの一人を殴りました。胸ぐらを掴んでいたので、殴り飛ばされたりはしていません。

「……と、とう……さん……」

 震える声で騎士子息君は見上げています。彼の父親でしょう。

「お前のせいで、我が家が……貴様のせいで!!」

 すごい剣幕で、子息は何度も殴られています。その様子に、グリード元王子と残りの取り巻きも青い顔で困惑したままです。

「や、やめ……」

「そ、そこまでにして……」

 子息の顔面が腫れ上がり、前歯が抜けるまで殴られてから、グリード元王子が止めに入ります。

 子息の父親は、顔を真っ赤にした怒りの表情のままグリード元王子へと向き合いました。

「貴方に息子を預けたのは間違いでした」

「なっ……」

 父親の言い方は、ある意味不敬罪と捉えかねない言い方でしたが、ここで咎める者は誰一人、居ません。

「不敬だわ! グリード王子はこの国の王族なのよ!? 騎士さんたち、早くこの人を捕らえて!」

 上等な似合いもしていないドレスをこんな場違いな場所で着こんだ平民の殺人女が、グリード元王子の前に出て言います。その少女の言葉で、グリード元王子も自信を取り戻したのか、怒りの表情を浮かべて、子息の父親へと視線を向けます。

「俺は彼と良い友人関係を結んでいた。彼が不当に理由なく殴られていたら庇うのは当然だろう!」

「私は愚息に対し、将来と親睦を深める様に言っておりました。それを、何を勘違いをしたのか、このような事になってしまい! 陛下になんとお詫びをしたら良いか……」

 子息の父親は、震える足で息子を引きずり、罪人用の馬車へと向かって行きました。

 この状況で、返事もできずにただ立ちすくむのみのグリード元王子と平民の女。

 もう一人の元側近は、空気を呼んで、自分の足で馬車へと向かって行きました。周囲は騎士団がガッチリ固めていますが。

「罪人の平民の女、マリア。それとグリード元王子殿下、護送馬車へ向かって頂けますか?」

 ハンスが残りの2人に命じます。

「なぜだ!? テュアリアの事ならばあれは事故だった!」

「そうよ! お姉様がグリード殿下を惨めたのよ! それで、私、カッとなって、つい殴ってしまったの。それは、悪いとは思うけれど……お姉様はんだもの! 誰も悪くないわ!」

 殺人を犯す者の言い分は何処の場所でも聞くに堪えないものですね。

「お前が突き落としたんだろう」

「いいえ! そうよねグリード王子!」

 潤んだ瞳でグリード元王子を見つめる殺人者に、グリード元王子は頷きました。

「ほぉら! 王族がこう言っているんだもの。これはれっきとした事故よ!」

 勝ち誇った醜い笑みの女に、私含む騎士団達は気色の悪い物を見た気分になりました。

 お姉様と親族を思わせる言葉を使う割に、その表情は家族を失って悲しむ様子すら見せず、尚且つグリード元王子の名前を使うことで、自分の罪を消し去ろうとする、浅ましくも醜い女の姿に、私は吐き気と鳥肌が止まりませんでした。

「残念ですが、ここでの私の発言は国王陛下の代理と捉えて貰っても良いと言付かっております。騎士達よ! 重罪人2人を捕らえろ!」

 有無を許さないハンスの言葉に、キビキビと動く騎士団。

「おい、待て! なんで俺がっ!……理由を話せ!


 ですが、納得のいっていないグリード元王子は、激しく抵抗されました。鉄橋の上でしたので、それこそ不慮の事故が起こってはいけませんでしたので、仕方なくも元グリード王子には、真実を話し、大人しくなって貰うしか在りませんでした。

 

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