【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

キーノ

文字の大きさ
上 下
13 / 18

12

しおりを挟む

※とある護衛騎士フレデリックのお話・続。


 テュティリア様が渓谷の谷底へと突き落とされた後、予め王都から呼んでいた騎士団がやって来ました。何かあった時のためと思って呼んでいたのですが、悪い予感は当たるもので、まったく間に合いませんでしたが。

 騎士団の先頭にいるのは、テュティリア様の護衛を共にしていたハンスです。馬から降りて駆け寄ってきたハンスは、周囲の状況と私達の顔色を見て問いかけました。

「フレデリック、この状況はどうした?」

「ハンス……テュティリア様が……」

「ハンス、騎士団に命じてテュティリア様殺害の重罪人の確保が先決です」

「どういう事だグレンダ!?」

 私がテュティリア様の後を追うのを止めてくれたグレンダが、混乱して話せずにいた私に代わり、ハンスと騎士団へと事の顛末を話しております。

 彼のおかげで、幾分か落ち着きを取り戻せた私は、ハンスと騎士団にグレンダの話の補足を付け足します。グレンダは些か話をはしょりすぎですので。

 動き出した騎士団に囲まれる伯爵家の令息と騎士家の令息です。空気が読めるのか、大人しいものでしたが……

バシン!!

「お前は何をやっている!!」

 騎士団の一人が、グリード殿下の取り巻きの一人を殴りました。胸ぐらを掴んでいたので、殴り飛ばされたりはしていません。

「……と、とう……さん……」

 震える声で騎士子息君は見上げています。彼の父親でしょう。

「お前のせいで、我が家が……貴様のせいで!!」

 すごい剣幕で、子息は何度も殴られています。その様子に、グリード元王子と残りの取り巻きも青い顔で困惑したままです。

「や、やめ……」

「そ、そこまでにして……」

 子息の顔面が腫れ上がり、前歯が抜けるまで殴られてから、グリード元王子が止めに入ります。

 子息の父親は、顔を真っ赤にした怒りの表情のままグリード元王子へと向き合いました。

「貴方に息子を預けたのは間違いでした」

「なっ……」

 父親の言い方は、ある意味不敬罪と捉えかねない言い方でしたが、ここで咎める者は誰一人、居ません。

「不敬だわ! グリード王子はこの国の王族なのよ!? 騎士さんたち、早くこの人を捕らえて!」

 上等な似合いもしていないドレスをこんな場違いな場所で着こんだ平民の殺人女が、グリード元王子の前に出て言います。その少女の言葉で、グリード元王子も自信を取り戻したのか、怒りの表情を浮かべて、子息の父親へと視線を向けます。

「俺は彼と良い友人関係を結んでいた。彼が不当に理由なく殴られていたら庇うのは当然だろう!」

「私は愚息に対し、将来と親睦を深める様に言っておりました。それを、何を勘違いをしたのか、このような事になってしまい! 陛下になんとお詫びをしたら良いか……」

 子息の父親は、震える足で息子を引きずり、罪人用の馬車へと向かって行きました。

 この状況で、返事もできずにただ立ちすくむのみのグリード元王子と平民の女。

 もう一人の元側近は、空気を呼んで、自分の足で馬車へと向かって行きました。周囲は騎士団がガッチリ固めていますが。

「罪人の平民の女、マリア。それとグリード元王子殿下、護送馬車へ向かって頂けますか?」

 ハンスが残りの2人に命じます。

「なぜだ!? テュアリアの事ならばあれは事故だった!」

「そうよ! お姉様がグリード殿下を惨めたのよ! それで、私、カッとなって、つい殴ってしまったの。それは、悪いとは思うけれど……お姉様はんだもの! 誰も悪くないわ!」

 殺人を犯す者の言い分は何処の場所でも聞くに堪えないものですね。

「お前が突き落としたんだろう」

「いいえ! そうよねグリード王子!」

 潤んだ瞳でグリード元王子を見つめる殺人者に、グリード元王子は頷きました。

「ほぉら! 王族がこう言っているんだもの。これはれっきとした事故よ!」

 勝ち誇った醜い笑みの女に、私含む騎士団達は気色の悪い物を見た気分になりました。

 お姉様と親族を思わせる言葉を使う割に、その表情は家族を失って悲しむ様子すら見せず、尚且つグリード元王子の名前を使うことで、自分の罪を消し去ろうとする、浅ましくも醜い女の姿に、私は吐き気と鳥肌が止まりませんでした。

「残念ですが、ここでの私の発言は国王陛下の代理と捉えて貰っても良いと言付かっております。騎士達よ! 重罪人2人を捕らえろ!」

 有無を許さないハンスの言葉に、キビキビと動く騎士団。

「おい、待て! なんで俺がっ!……理由を話せ!


 ですが、納得のいっていないグリード元王子は、激しく抵抗されました。鉄橋の上でしたので、それこそ不慮の事故が起こってはいけませんでしたので、仕方なくも元グリード王子には、真実を話し、大人しくなって貰うしか在りませんでした。

 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やはり婚約破棄ですか…あら?ヒロインはどこかしら?

桜梅花 空木
ファンタジー
「アリソン嬢、婚約破棄をしていただけませんか?」 やはり避けられなかった。頑張ったのですがね…。 婚姻発表をする予定だった社交会での婚約破棄。所詮私は悪役令嬢。目の前にいるであろう第2王子にせめて笑顔で挨拶しようと顔を上げる。 あら?王子様に騎士様など攻略メンバーは勢揃い…。けどヒロインが見当たらないわ……?

冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します

みおな
ファンタジー
 王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。  それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。  死んだはずの私が目覚めたのは・・・

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

婚約破棄されたけど、逆に断罪してやった。

ゆーぞー
ファンタジー
気がついたら乙女ゲームやラノベによくある断罪シーンだった。これはきっと夢ね。それなら好きにやらせてもらおう。

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星里有乃
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

処理中です...