【完結】ゲーム開始は自由の時! 乙女ゲーム? いいえ。ここは農業系ゲームの世界ですよ?

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 新薬で懐も潤い、渓谷に落ちたあとの生活向上の準備も順調に整い終わったころ、私は17歳になりました。

 とうとうゲーム開始の年ですよ。どのような理由で渓谷への視察を行うのでしょうか?

 視察とは関係ありませんが、私の渓谷への献花はいまだに続いております。良いお散歩にもなりますしね。体力作りも必要ですから。

 ゲーム開始時期をワクワクとしながら日々を過ごし、個人的なゴーレム研究や植物研究もはかどっております。毎日が楽しすぎますね。

 それと、ゲームでは私が国から居なくなった後で、飢饉や疫病が流行りますので、その対策案をこっそり私の研究室の机の書類に紛れ込ませました。疫病は王族であれば育てられる薬の素となる植物を、私の机の鉢植えで育てております。ギゼラに頼んで、水やりと日光浴をお願いしているので、枯れることは無いでしょう。

 あとは、飢饉については色々と理由を着けて、厳しい環境でも育つ食用植物の種も試作品として無償で各領地の農村や街に配りましたわ。ここまでやれば、私がこの国から居なくなっても問題は無いでしょう。私は戻るつもりはありませんから。何者にも縛られない地下で、悠々自適に農業をして暮らすのです!

 そして、次に考えていますのは、大型ゴーレムを活用した重機ですわね。土木工事や建築にも使える物を蜘蛛ゴーレムを元に頑張って改良しております。現在はアルフォンス王子の直轄領の開拓として試作機が動いておりますが、そのうちゴーレムメイドよりも需要が上がりそうです。

 17歳の誕生日には、国王陛下である叔父様と個人的なお茶会をしました。頂いたブレスレットは、もちろん毎日身に付けております。その時に叔父様に伺ったのですが、やっぱりお母様と私は王族の中でも特別な様で、『シードキメラ』と『シード継承』は、叔父様や第一王子アルフォンス様でも持っていないスキルのようです。

 第二王子のグリード様のスキルは把握されていないのは、公務を放棄しておられるので……ここは空気を読みますよ。それと私の固有スキル『豊穣神の加護』に至っては、初代国王以来、持つ者が居なかったとさえ言われましたね。さすが主人公補正です。


 そんなある日、久々にグリード第二王子からお茶会への招待が、王都の薬草管理センターの研究所の私の寮の部屋へと送られて来ました。

 研究当初は公爵領から王都まで毎日通っては居ましたが、それが3日に1回、1週に1回、月に2回になり、とうとう薬草管理センターの研究棟の一般寮に部屋をお借りしました。

 正直に言いますと、公爵家の離宮よりこちらの方が快適です。地下の貯水槽から浄化された水が水道管を通り、取手をひねるだけで温度を調節できる蛇口が設置されております。
 井戸の前で水浴びする日々からお別れですよ。さすが王都の王族専属機関ですね。
他の領にある薬草管理センターとは一味も二味も違いますよ。

 閑話休題ですね。グリード第二王子との月1のお茶会はいつの間にか無くなり、たまに新薬の報告のみとなっていましたので、珍しいと思いつつも、私は久しぶりに離宮へと帰って準備を整えました。

 ちなみにドレスは叔父様が新薬のご褒美にとプレゼントしてくださったので、サイズが合わない事はありませんよ。私の赤い髪色よりも暗めのワインレッドのAラインのドレスです。他にもプリンセスラインのドレスもプレゼントされましたが、舞踏会等でしか着ませんし、夜会用にマーメイドラインのドレスもありますが、お昼時に開かれるグリード王子の個人的なお茶会ですので、あまりヒラヒラしたものは適合しておりませんよ。

 と言うことで、着ていくAラインのドレスをトルソーに飾りまして、準備を致します。

 ドレスの流行は2年前止まりですが、サイズが合えば良しとしましょう。あいにくと私、15歳からまったく成長が止まってしまいましたので、こればっかりは致し方在りませんのよ。お尻とお胸だけは、お母様に似て形の良いものが付いておりますが……。

 ……ペタンコよりはマシでしょうか? すべての栄養をお胸とお尻に集中しすぎじゃ在りませんかね? もっと腕周りに欲しいです。せめて浮き出る肋骨と鎖骨部分に肉を下さい。

 お茶会の日、朝から忙しくゴーレムメイドにお世話をされますよ。ウエストは細いのでコルセット要らずですが、貴族女性の嗜みとして着けないわけには行きません。それに、コルセットに勝手に付け足した隠しポケットにいろいろ種を仕込んでおけますので、これはこれで使えますよ。

 王家の馬車の迎えが来て、揺れの少ない馬車で王都へと向かいます。今更ですが、馬車の護衛騎士をしている4人の護衛騎士は、渓谷へ向かう時に叔父様にお借りする護衛の皆さんでした。私が王都にいる間の私専属の護衛騎士だったのです。これでも王族の血を引いているのですよね、私。

 王都でも薬草管理センターでも、いつも見えないところで護衛をしてくださって居たのだとか。とてもありがたいことですね。お礼を言いますと、皆さん照れ臭そうに任務ですのでと笑って下さいます。気さくで良い人達ですよ。こんなところでも叔父様に守られていたのだと、今更ながら叔父様には感謝しかありませんね。護衛の皆さんとも仲良くなれました。

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