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しおりを挟む出される食事に不満と不安を覚えている今日この頃。私は『植物知識』と『シード創造』を使って、生でも美味しい果物とあらゆる解毒作用のある植物を鉢植えとプランターで育て始めました。固有スキル『豊穣神の加護』と『植物成長促進』のおかげで、私が育てる植物は成長が速いです。
昨日の夜に植えたプランターからは、品種改良で小さいながらも味も実の大きさも元と同じの桃とリンゴ。それと、赤じそ等含む5種類の解毒薬にもなる植物が生え茂っております。しかし解毒薬にもなる草はどうやって解毒薬にすれば良いのでしょうか?
肝心の製薬知識が乏しい私は、取り敢えずずっと使われていなかった台所へと向かいました。勿論、調理道具の一切が無い台所です。釜戸と窯はありますね。薪がないので火をつけることも出来ません。薪があっても、父に見つかるわけにはいかないので、火を使うことは出来ませんが。
しょうがないので『シード創造』で造り出したキザミ草を、スキルを駆使した魔力を込めて一瞬で成長させて、包丁がわりに使いましょう。
私は適当に切った解毒薬草のサラダをその場所でもりもり食べます。苦味はもちろん、鼻に抜けるハーブの強すぎる香りに顔が歪みます。青汁のようなエグミも美味しくない原因です。これで効いてくれれば良いのですが。お口直しに頂いたデザートの桃とリンゴがすっごく美味ちぃ……グスン。
スキルを使って、ゲーム開始に備える日々はとても楽しいものですね。今まで感じる事の出来なかった嬉しさという感情の起伏が、ここ最近は表情にも現れるようになったと思います。
と言うのも、やはりと言うべきか、私は料理に毒を盛られていたようですね。ええ、解っておりましたが。
抵抗する気力すら湧かなかったですからね。そういう情緒に異常をきたす毒だったのでしょう。この毒のおかげで、私は前世の記憶を取り戻し、未来への渇望を奮い立たせられたのですがね。
ちなみに解毒薬草のサラダと料理を交互に食べていた結果、私には『毒軽減』のスキルが増えておりました。取り敢えずはひと安心ですね。今更ですが、前世のゲーム知識で終盤に手に入る万能薬の種の事を思い出しました。これを最初から作っていれば、複数の解毒薬草のまずいサラダを毎日食べる必要は無かったのではないでしょうか? 今更ですがね。
ちなみに『シード創造』で簡単に造り出せました。ゲーム図鑑とお母様の図鑑の書かれ方が完全に一致していましたからね。効能と種の柔らさやサイズまでも覚えておりました。
さらにゲーム開始に向けて過ごす日々を楽しんでいたのですが、明日は月に一度の第二王子とのお茶会だそうです。前日の今日の夜、急にゴーレムメイドが父からの伝言として、「体調が良くなければ、今回も行かなくてもいい。かわりにお前の妹に行かせる」という伝言(なんとも頭の痛くなる内容の伝言では在りませんか。)を持ってきました。私には妹なんておりませんのに。
私は出席する事をゴーレムメイドへと伝えます。ゴーレムメイドを通した父への伝言ゲームを数回繰り返し、渋々ではありますが父が折れて、明日は私が王宮に出向くことになりました。
急いで2人のゴーレムメイドに指示を出して、身体を清めます。お風呂ですか? 当然井戸前で水浴びですよ? 火が使えませんので、致し方在りません。
水浴びでは、ゴーレムメイドに頼んで香りの強い薔薇と桃の果汁をたっぷり入れた水にて揉みくちゃにして身体を擦ってもらいます。桃は匂い漬けも兼ねております。髪と頭もちゃんと洗いますよ。油分を多く含んだ種とハーブと桃の果汁を磨り潰したモノで、丁寧に何度もしごき洗い、清潔にします。
あとは髪を『風魔法』で乾かし、流行遅れの2年前に国王陛下である叔父様から頂いたドレスを軽く外干しして、トルソーに飾っておきます。2年前のドレスが着れるのかって? 大丈夫です。栄養失調気味の私の体型はとても7歳には見えませんので。腕なんか青白い枯れ枝ですし、鎖骨も肋骨もガリガリです。窪んだ目元は、記憶が戻る前よりはマシですが、お化粧でどうにか誤魔化しましょう。
次の日、王家の馬車が私を御迎えに来て、揺れの少ない馬車で2時間ほどかけて出発しました。
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