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婚約破棄

殿下、婚約破棄をしましょう

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  泣いてしまったわたくしは化粧を直して王宮へと参りました。

  「お父様。お母様。ありがとうございます。絶対にモリソン家に迷惑をかけません」

  強い意志を両親に目で訴えかけると両親は首を横に振った。

  「娘をここまでコケにされて……許せん。家のことなどいい。思い切りやれば良いよレティシア」
  「そうよ。あなたは可愛いのだから。それに婚約破棄をして困るのはこっちではないしね」
  「だな……」

  お母様の言葉にお父様が苦笑いをしながら頷きました。
困るのはこっちではない?よくわかりませんが今日は婚約破棄するために来たのです。
両親もそう言っているので盛大にやってやりましょう。

  「殿下も素直になれば良いのにな……」

  「そうね。ここまで来ればもう流石にね……それにあの子はもう……」

  そんな両親の声がレティシアに届くことはなかった。

***

  「皇帝陛下に拝謁します」

  拝謁に入り玉座に座られている皇帝陛下に最高の挨拶をする。
父は官僚の礼をわたしと母は淑女の礼を。

  「顔をあげよ」

  低く重苦しい声がその場を支配する。
言われた通り顔を上げると陛下の周りには当事者の第二王子、兄である第一王子、そして王妃様がいました。
すごい面子にわたくし少したじろぎましたわ。
  パーティーなどであれば大抵無礼講ですし他にも人がいるのであまり緊張はしないのですが今はプライベートでお会いしているのですごい威圧感。心臓もつかしら?

  「アルバート。そちの娘が婚約破棄したいと言っていたそうだがどういうことか説明してもらっても良いか?」
  
  「もちろんです。陛下。私の娘はレイモンド殿下と婚約しておりましたが当の殿下は娘を蔑ろにし他の令嬢たちと懇意になさってたそうではないでしょうか。違いますか、殿下?」

  最後の語尾に怒りが籠っている。お父様、そこまでなさらなくても……
殿下はわたくしたちを見据え言いました。

  「令嬢たちと懇意にしていたのは事実だが疑うような関係ではない。本当だ」

  その言葉を聞いた父はわたくしにアイコンタクトをしてきます。
わたくしから話すべきなのでしょう。

  「信じましょう。しかし、殿下、わたくしはこれまで殿下の心無い態度により傷ついてきたのも事実です。
それに対してはどうお考えで?」

  「それは、すまないと思っている。どうか償いをさせてくれ」

  償い、ですか……どうしてそれを今更しようと思うのですか?皮肉ですわ。
自嘲気味になりつつもそれを表には出さない。腐っても淑女たるもの仮面は貼り付けますわ。

  「そうですね。殿下が償いをなさりたいというなら喜んでお受けします。ではお願いを言ってもよろしいでしょうか?」
  
  「もちろんだ。なんでも叶える」

  「ありがとうございます。では遠慮なく。
--殿下、婚約破棄をしましょう」

  その瞬間、マイナスの空気だった部屋が凍りついた。



  
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