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Study60: struggle「足掻き」
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「……ちょっと、なんで保護者までいんのよ」
春香が目尻を険しく釣り上げ夢月を睨みつける。
「保護者は早く帰って、保護者は!」
春香が素早い身のこなしで真崎の腕にしがみつき牽制してきた。
「触らないルールだろ」
真崎が表情を変えないまま腕を引き抜く。
「えー………、こんなの詐欺だし」
「二人でデート、とは言ってないもの。今日は三人でデート」
納得いかず眉をしかめる春香に夢月は強い姿勢を保ちながら言い切って見せた。
納得いかない春香の気持ちはよくわかる。
狡いけれど有益かどうかわからない情報だっただけに、実際騙すような形に持ち込んだ。
「保護者付きはデートなんかじゃないわよ!」
「じゃあ、私のことは空気だと思ってよ」
「こんな厄介な空気ないって!」
「それならさ」
真崎が二人の間に口を挟む。
「オレと夢月のデートに春香が着いてきたって事で良くない?」
些か、うんざりした口調で真崎が腕を組んだ。
「有くん、ソレ一番ないやつだから」
「なんでもいいだろ、さっさと済ませようぜ」
「嫌な事片付けるみたいに言わないでよ!」
「当たり前だろ。オレは好きでここにいるワケじゃねーし」
「酷い、有くんっ」
真崎の春香への冷ややかな対応に、夢月は僅かに春香への同情を覚える。
自分の前にいる時の真崎とはかなり違う温度感に戸惑うばかりだ。
「えー、賑やかで楽しそうだね」
言い合う二人を見やりハラハラする夢月の後ろから聞き覚えのある声がかけられた。
夢月は嫌な予感を抱きながら振り返る。
「清水先生、なんでここに?!」
「蓮兄、なんでいるの?!」
意外にも同時に叫んだのは春香だった。
「蓮兄?え…………??」
二人を見比べて顔のパーツの共通点に気づく。
そういえば、春香は清水春香と名乗ったような………
「腹違いの妹なんだよね」
清水が春香の頭をぽんぽんと叩いた。
釈然とはするのだが、受け入れたくはないような微妙な真実に、夢月は首を傾げてしまう。
「アルト、言ってないの?」
清水が夢月の反応を見てくすくすと笑った。
「できれば包み隠したい関係性なんだよ」
真崎が複雑そうに息を吐く。
「とりあえず、せっかく4人だし、Wデートしよか」
「だな………」
清水と真崎が頷き合い、真崎が夢月の腕を取り歩き出した。
「なんで私が蓮兄と歩くのよっ」
春香が後ろで文句を言うが、真崎は全く気にしていない様子である。
まーまー、と清水が春香をなだめる声が聞こえた。
「私と真崎くんが歩いて平気かな?」
手を繋いできた真崎に夢月はこっそりと尋ねる。
「変装したし大丈夫だろ」
夢月は普段は滅多に履かないデニムコーデで、スニーカーにキャップとダメージ加工のストレートジーンズ、ショルダーカットのトップスで肩見せにチャレンジした。
校内では絶対にしない装いで、普段のイメージからもかけ離れてみた。
真崎も普段は羽織らないマウンテンパーカーに、いつも人目を忍ぶ時の黒縁メガネと黒キャップなだけに、校内とは全くイメージが違う。
一見してすぐにバレることはないだろうけど、人目は気になる。
「今日の夢月は教師には見えないな」
「何に見えるかな?」
「大学生の彼氏とデートする女子高生」
内心、流石に女子高生はないだろと思いながら、夢月は屈託の無い真崎の笑顔に頬を染めた。
真崎の目に自分がどう写っているのか不思議になる。
「そうだといいな」
夢月が笑顔で真崎を見上げた。
服装を変えて、普段は見せない部分を見せて、今は少しでも真崎に年齢が近づいて見えるのだろうか。
少しでもいい近づきたい。
年齢の差はどうしても縮められない。
分かっていても足掻いてしまう。
春香を羨ましくも思う。
春香が目尻を険しく釣り上げ夢月を睨みつける。
「保護者は早く帰って、保護者は!」
春香が素早い身のこなしで真崎の腕にしがみつき牽制してきた。
「触らないルールだろ」
真崎が表情を変えないまま腕を引き抜く。
「えー………、こんなの詐欺だし」
「二人でデート、とは言ってないもの。今日は三人でデート」
納得いかず眉をしかめる春香に夢月は強い姿勢を保ちながら言い切って見せた。
納得いかない春香の気持ちはよくわかる。
狡いけれど有益かどうかわからない情報だっただけに、実際騙すような形に持ち込んだ。
「保護者付きはデートなんかじゃないわよ!」
「じゃあ、私のことは空気だと思ってよ」
「こんな厄介な空気ないって!」
「それならさ」
真崎が二人の間に口を挟む。
「オレと夢月のデートに春香が着いてきたって事で良くない?」
些か、うんざりした口調で真崎が腕を組んだ。
「有くん、ソレ一番ないやつだから」
「なんでもいいだろ、さっさと済ませようぜ」
「嫌な事片付けるみたいに言わないでよ!」
「当たり前だろ。オレは好きでここにいるワケじゃねーし」
「酷い、有くんっ」
真崎の春香への冷ややかな対応に、夢月は僅かに春香への同情を覚える。
自分の前にいる時の真崎とはかなり違う温度感に戸惑うばかりだ。
「えー、賑やかで楽しそうだね」
言い合う二人を見やりハラハラする夢月の後ろから聞き覚えのある声がかけられた。
夢月は嫌な予感を抱きながら振り返る。
「清水先生、なんでここに?!」
「蓮兄、なんでいるの?!」
意外にも同時に叫んだのは春香だった。
「蓮兄?え…………??」
二人を見比べて顔のパーツの共通点に気づく。
そういえば、春香は清水春香と名乗ったような………
「腹違いの妹なんだよね」
清水が春香の頭をぽんぽんと叩いた。
釈然とはするのだが、受け入れたくはないような微妙な真実に、夢月は首を傾げてしまう。
「アルト、言ってないの?」
清水が夢月の反応を見てくすくすと笑った。
「できれば包み隠したい関係性なんだよ」
真崎が複雑そうに息を吐く。
「とりあえず、せっかく4人だし、Wデートしよか」
「だな………」
清水と真崎が頷き合い、真崎が夢月の腕を取り歩き出した。
「なんで私が蓮兄と歩くのよっ」
春香が後ろで文句を言うが、真崎は全く気にしていない様子である。
まーまー、と清水が春香をなだめる声が聞こえた。
「私と真崎くんが歩いて平気かな?」
手を繋いできた真崎に夢月はこっそりと尋ねる。
「変装したし大丈夫だろ」
夢月は普段は滅多に履かないデニムコーデで、スニーカーにキャップとダメージ加工のストレートジーンズ、ショルダーカットのトップスで肩見せにチャレンジした。
校内では絶対にしない装いで、普段のイメージからもかけ離れてみた。
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一見してすぐにバレることはないだろうけど、人目は気になる。
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真崎の目に自分がどう写っているのか不思議になる。
「そうだといいな」
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服装を変えて、普段は見せない部分を見せて、今は少しでも真崎に年齢が近づいて見えるのだろうか。
少しでもいい近づきたい。
年齢の差はどうしても縮められない。
分かっていても足掻いてしまう。
春香を羨ましくも思う。
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