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晴瑠からメッセージが来れば短く返事はするけれど、自分からは送るのはやめた。
バッタリ遭遇しないように、彼の実家周辺の道を通らずに遠回りまでしていた。学校で会うのは仕方ないとしても、かなり避けていた自覚はある。
そうしているうちに高校卒業を迎え、連絡が途絶えた。私たちは別々の道を歩み始めたのだ。
「わざと遠ざけたの?! どうして?」
「私が近くにいたらダメだと思った。彼がバレーに集中できない気がして。……ちゃんとあきらめたはずだったのになぁ」
私が自虐的な笑みをたたえながら言えば、宏美は途端に眉尻を下げて切なげな表情になった。
あのころの晴瑠は間違いなく人生の岐路に立っていた。
引き続き全日本ユースのメンバーとして招集がかかっていたし、卒業後の進路をどうするのか悩んでもいたのだ。
そんなときに私が頻繁に連絡を入れ、抑えられなくなった気持ちをもしも吐露してしまったら、確実に晴瑠を困らせる。
大きく羽ばたこうとしている彼の足を引っ張りたくない。その思いが先行し、なにが最善かを考えたら私にはあきらめるしか選択肢が残っていなかった。
「宏美、お願いがあるの。来週の土曜日、一緒にバレーの試合を見に行ってくれない?」
「いいよ。私、生で観戦したことないから行きたい!」
彼女は私の頼みを笑顔で快諾してくれた。
美しく宙を舞う今の彼の姿を、宏美にもぜひ生で見てもらいたい。そう考えたら私も自然と笑みがこぼれた。
バッタリ遭遇しないように、彼の実家周辺の道を通らずに遠回りまでしていた。学校で会うのは仕方ないとしても、かなり避けていた自覚はある。
そうしているうちに高校卒業を迎え、連絡が途絶えた。私たちは別々の道を歩み始めたのだ。
「わざと遠ざけたの?! どうして?」
「私が近くにいたらダメだと思った。彼がバレーに集中できない気がして。……ちゃんとあきらめたはずだったのになぁ」
私が自虐的な笑みをたたえながら言えば、宏美は途端に眉尻を下げて切なげな表情になった。
あのころの晴瑠は間違いなく人生の岐路に立っていた。
引き続き全日本ユースのメンバーとして招集がかかっていたし、卒業後の進路をどうするのか悩んでもいたのだ。
そんなときに私が頻繁に連絡を入れ、抑えられなくなった気持ちをもしも吐露してしまったら、確実に晴瑠を困らせる。
大きく羽ばたこうとしている彼の足を引っ張りたくない。その思いが先行し、なにが最善かを考えたら私にはあきらめるしか選択肢が残っていなかった。
「宏美、お願いがあるの。来週の土曜日、一緒にバレーの試合を見に行ってくれない?」
「いいよ。私、生で観戦したことないから行きたい!」
彼女は私の頼みを笑顔で快諾してくれた。
美しく宙を舞う今の彼の姿を、宏美にもぜひ生で見てもらいたい。そう考えたら私も自然と笑みがこぼれた。
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