6 / 13
⑥
しおりを挟む
「全日本ユースとか、すごすぎるね! それでいてイケメンだし」
「中学のころからずっと黄色い声援を浴びっぱなしだよ。女子の視線をひとり占め」
「だろうね」
晴瑠は“オポジット”というセッター対角のポジションで、エースだったから余計に人気だった。
スパイクを打つときの空中姿勢がとても綺麗で、それを目にした人はみんなファンになってしまうのだ。
「サーブもレシーブもブロックも、なんでもうまかったなぁ」
高校生になってさらに身長が伸び、基礎トレーニングで筋肉をつけて全体的に体が大きくなった晴瑠は、コートの中でひときわ光り輝くようだった。
「今も上手なんでしょ?」
「もちろん。晴瑠はビッグサーバーでね、サービスエースを何本も決める姿がめちゃくちゃカッコいいんだ」
空を見上げながら彼がサーブを打つシーンを思い浮かべていると、宏美がニヤニヤとした意味深な視線を送っているのが視界に入ってくる。
「もう、なにその顔」
「音羽、それは……過去の恋? それとも現在?」
私の語り口調や表情で完全に見抜かれた。いや、宏美はあらためて気づかせてくれたのだ。
「絶対に後者だよね。“昔の話”だなんて否定できないや」
心の中にくすぶり続けた気持ちを、自分自身で認めざるをえない。
誰にも目がいかず、私がずっとほかの人との恋愛に消極的だったのも、すべてこれが原因なのだ、と。
「高校のバレー部で三年生が引退をするとき、わざと私は晴瑠と距離を置いたの。受験勉強しなくちゃいけないから、とか言い訳して」
「中学のころからずっと黄色い声援を浴びっぱなしだよ。女子の視線をひとり占め」
「だろうね」
晴瑠は“オポジット”というセッター対角のポジションで、エースだったから余計に人気だった。
スパイクを打つときの空中姿勢がとても綺麗で、それを目にした人はみんなファンになってしまうのだ。
「サーブもレシーブもブロックも、なんでもうまかったなぁ」
高校生になってさらに身長が伸び、基礎トレーニングで筋肉をつけて全体的に体が大きくなった晴瑠は、コートの中でひときわ光り輝くようだった。
「今も上手なんでしょ?」
「もちろん。晴瑠はビッグサーバーでね、サービスエースを何本も決める姿がめちゃくちゃカッコいいんだ」
空を見上げながら彼がサーブを打つシーンを思い浮かべていると、宏美がニヤニヤとした意味深な視線を送っているのが視界に入ってくる。
「もう、なにその顔」
「音羽、それは……過去の恋? それとも現在?」
私の語り口調や表情で完全に見抜かれた。いや、宏美はあらためて気づかせてくれたのだ。
「絶対に後者だよね。“昔の話”だなんて否定できないや」
心の中にくすぶり続けた気持ちを、自分自身で認めざるをえない。
誰にも目がいかず、私がずっとほかの人との恋愛に消極的だったのも、すべてこれが原因なのだ、と。
「高校のバレー部で三年生が引退をするとき、わざと私は晴瑠と距離を置いたの。受験勉強しなくちゃいけないから、とか言い訳して」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
あなたが望んだ、ただそれだけ
cyaru
恋愛
いつものように王城に妃教育に行ったカーメリアは王太子が侯爵令嬢と茶会をしているのを目にする。日に日に大きくなる次の教育が始まらない事に対する焦り。
国王夫妻に呼ばれ両親と共に登城すると婚約の解消を言い渡される。
カーメリアの両親はそれまでの所業が腹に据えかねていた事もあり、領地も売り払い夫人の実家のある隣国へ移住を決めた。
王太子イデオットの悪意なき本音はカーメリアの心を粉々に打ち砕いてしまった。
失意から寝込みがちになったカーメリアに追い打ちをかけるように見舞いに来た王太子イデオットとエンヴィー侯爵令嬢は更に悪意のない本音をカーメリアに浴びせた。
公爵はイデオットの態度に激昂し、処刑を覚悟で2人を叩きだしてしまった。
逃げるように移り住んだリアーノ国で静かに静養をしていたが、そこに1人の男性が現れた。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※胸糞展開ありますが、クールダウンお願いします。
心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義です。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。イラっとしたら現実に戻ってください。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。
香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー
私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。
隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。
※複数サイトにて掲載中です
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。
ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」
人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。
「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」
「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」
一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。
「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」
「……そんな、ひどい」
しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。
「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」
「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」
パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。
昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。
「……そんなにぼくのこと、好きなの?」
予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。
「好き! 大好き!」
リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。
「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」
パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、
「……少し、考える時間がほしい」
だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる