【完結】宙を舞うヒーローにときめいています

③

　男性の名は柏木 晴瑠かしわぎ　はる。

　私が中学二年のときに父が転勤になり、我が家は引っ越しをしたのだけれど、晴瑠とは転校先で知り合った。
　彼は私と同じクラスで、そのころからほかの男の子と比べて身長は頭ひとつ大きかったし、イケメンだから余計に目立っていた。

　バレーボールをやっているのは有名で、地元に強豪の高校があるからそこに進学するらしいと学校中で知られていたほどだ。
　中学のころからプレー姿がめちゃくちゃカッコよくて、魅せられた私は彼と同じ高校に進学を決めた。

　晴瑠はコーチの指導が合ったのか、高校生になってからすぐにめきめきとバレーの実力をつけていく。
　そんな彼のそばにいたい思いから、私もマネージャーとしてバレー部に入った。
　
　毎日、授業が終われば体育館に向かい、部員のサポートをする。
　マネージャーになった動機は不純だったが、晴瑠が練習する姿を間近で見ることができてとても幸せだった。

「本当に久しぶりだな。なんか音羽……大人になってる」
「それは晴瑠もでしょ。ていうか、また伸びた？」
「背はそんなに変わらないだろ」

　大学に進学したのを機に晴瑠は寮生活を始めた。
　自分でルールを設けていたのか、大学生のころはお盆とお正月にしか実家には帰っていないみたいだった。

　おととしからは社会人になり、現在はマンションでひとり暮らしをしているようだ。
　というのは、風の噂で聞いた。
　今の私たちは完全に連絡が途絶えている状態なので、人づてにしかお互いのことを知らない。

「ところで、ここでランニングしてたのか？　音羽が？」
「運動音痴な私が意外でしょ？　友達が誘ってくれたの。嫌なことは汗かいて忘れちゃえー！　みたいなノリで。でも私は早々にバテて、彼女は飲み物を買いに行ってくれてる」
「ふぅん。……その嫌なことが気になるな」

　なんだか気まずくておどけながら喋っていたのに、そのひとことで私の笑顔がビキッと固まった。
　反応するポイントはそこですか、と勘のいい彼に対して突っ込みたくなる。