【完結】ずっと好きでした~そばにいてもいいですか?~

夏目若葉

文字の大きさ
上 下
5 / 10

しおりを挟む
「それは無理!」
「中学から好きだったんだから、このままだと絶対後悔する。あとになって、やっぱり伝えておけばよかったって思っても遅いんだよ?」

「でも、水上くんは日鞠のこと……」

 そこまで言ったところでハッとして言い淀んだ。だが時すでに遅しで、日鞠は途端にあきれ顔になる。

「まだそんな誤解をしてるの?」

 水上くんは日鞠を好きなのだと思う。
 日鞠は根も葉もない憶測だと言うけれど、中学のころからふたりを見てきている私がそう感じるのだ。

「日鞠はいつも真っ直ぐで眩しいくらい輝いてるから。根暗な私とは大違いだもん」

 太陽みたいに明るい日鞠は、水上くんの隣にいるのがよく似合う。

「べ、別にひがんで言ってるわけじゃないからね。本気でそう思ってるの」

 あまりに悲観的すぎる言葉を口にしてしまい、私はあわてて取り繕った。
 日鞠は気を悪くすることもなく、フッと口元を緩める。

「いつも真っ直ぐで眩しいって……それは私じゃなくて透桜子でしょ」

 彼女の表情を読み取っても冗談を言っているようには見えなくて、私は「へ?」という気の抜けた返事しかできない。

「水上くんもきっとそう思ってるんじゃない? 透桜子は自己評価が低すぎる」

 日鞠はやさしいからいつも私を元気づけてくれて、自信を持つようにと励ましてくれる。
 だけど私は昔からウジウジと悩んでばかりで、ちっとも前に進めない。

「ま、とにかく。文化祭当日が最後のチャンスだよ。その日しか残ってない!」

 そんなふうに鼓舞されても、肝心の私は水上くんに気持ちを打ち明けるシーンを想像するだけで、緊張して身体が硬くなってくる始末だ。
 ずっとこんな調子でどうするのだと自分でも思うけれど、なかなか臆病な部分は直らない。

「透桜子、勇気を出して? なんでも協力するし、全力で応援するから。ね?」

 日鞠が私の両手を包み、真剣な眼差しを向けて言ってくれた。
 親友をここまで心配させていたのかと、少し驚くくらいに。

 内向的な性格のせいで、長年思いの丈を伝えることができず、だからといってあきらめられずで、ずっと未練がましく彼を目で追うだけだった。
 日鞠の言う通り文化祭当日が最後になるなら、私もありったけの勇気を出してみたい。
 苦笑いしながら「ありがとう」とうなずくと、日鞠はパッと花が咲いたように笑ってくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

実在しないのかもしれない

真朱
恋愛
実家の小さい商会を仕切っているロゼリエに、お見合いの話が舞い込んだ。相手は大きな商会を営む伯爵家のご嫡男。が、お見合いの席に相手はいなかった。「極度の人見知りのため、直接顔を見せることが難しい」なんて無茶な理由でいつまでも逃げ回る伯爵家。お見合い相手とやら、もしかして実在しない・・・? ※異世界か不明ですが、中世ヨーロッパ風の架空の国のお話です。 ※細かく設定しておりませんので、何でもあり・ご都合主義をご容赦ください。 ※内輪でドタバタしてるだけの、高い山も深い谷もない平和なお話です。何かすみません。

恋に不器用な俺と彼女のすれ違い

干支猫
恋愛
高校一年の冬、ひょんなことがきっかけで学年一の美少女・浜崎花音とカラオケに偶然居合わせることになったのだが、主人公の深沢潤と浜崎花音には周囲にほとんど知られていなかった少しばかりの過去があった。 過去、中学時代の一時期だが、同じ中学に通っていた潤と花音は体育委員をきっかけにして知り合った。お互い惹かれていき気持ちを持っていたのだが、素直になれずに言葉にして伝えることがないどころか、心にもないことを口にしてしまう。そうして近付いた距離は知り合う以前と同じようになって中学を卒業することになってしまった。 その後、偶然同じ高校に進学したのだが、中学の時のように話すことはないまま月日だけが過ぎていった。 そんな二人が再び出会い、距離が近付いては離れて、又、潤の周囲にいる人物達を巻き込んで繰り広げられる普通の高校生の普通の恋愛。

処理中です...