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あなたじゃなきゃ⑥

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「ずっと、一生俺のそばにいてほしい。俺と結婚してください」

 彼のコートのポケットから、すっと私の前に差し出されたのは指輪のケースだ。
 彼が私に見えるように開くと、中にはダイヤモンドの指輪がキラキラと輝いていた。

「こんな……こんな夢みたいなことあっていいのかな」

 イケメンの御曹司が片膝をついてプロポーズしてくれている。
 そういうのは映画やドラマの世界だけで、今は夢ではないだろうかと、思わず自分の頬をつねった。
 そんな私の姿を見て桔平さんは小さく笑って立ち上がる。

「美桜、返事は?」

 聞かなくても返事はわかっていて、桔平さんはおもむろに私の左手を取り、薬指に指輪をはめた。
 私は感極まって、堰を切ったようにポロポロと涙があふれて止まらない。

「美桜の名前にちなんで、この宝石にしたよ。“さくらダイヤモンド”って言うらしい」

 外灯の明かりの下でよく見ると、ダイヤの中にピンクの桜が浮かび上がるデザインになっている。
 綺麗、と無意識につぶやいてしまうほどの美しさだ。

「本当ならクルーズ船のデッキでビシッと決める予定だったのにな。こんな場所でプロポーズとか、俺……カッコわる」

 自虐的にそう言って笑う桔平さんに対し、私はブンブンと首を振って否定した。

「カッコ悪くなんてないです! 桔平さんはどんなときもカッコいい。素敵で、私にとってかけがえのない人です」
「ありがとう」
「だから私も……どうしても桔平さんのそばにいたいです。私と、結婚してください」

 はめてもらった指輪を、右手で覆うようにギュッと握りながらそう言うと、桔平さんが私を丸ごと包むように抱きしめた。

「俺はもうとっくに美桜じゃないとダメだから」

 桔平さんの温かい唇が、外気で冷たくなった私の唇に触れる。

 私も同じだった。もうとっくに心は桔平さんで埋め尽くされてしまっていて、ほかの誰も入る隙間がなくなっているから。
 桔平さんじゃなきゃダメなのだ。
 この先ずっと、一生寄り添って生きていきたい。

 そう思える、私には記憶に残る素敵なプロポーズだった。
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