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あなたじゃなきゃ④
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「身分違いの恋なのは自分でもわかっています。桔平さんは日本が誇る大企業である志田ケミカルの常務です。そんなすごい方と、一般庶民の私は釣り合わない。住む世界が違うなら、いっそ身を引いたほうがいいのでは、とも考えました。母の事で、おふたりに反対されることも想定していたので……」
一馬さんの気持ちも、あざみさんの気持ちも聞けた。
だからこそ、私の気持ちもきちんと伝えなければと思った。それが誠意だ、と。
「私は、桔平さんを愛しています」
私は他にはなにも持っていないけれど、桔平さんへの愛情は溢れるほど持っている。
「心から愛しています。だから、桔平さんの隣にいさせてもらえませんか」
懸命に堪えていたのに、ついに目から涙が零れ落ちた。ここで泣くのは卑怯な気がして、両手で頬の涙を素早く拭う。
「俺も。美桜を心から愛してるんだ。本人同士が愛し合ってるかどうかが問題だから、俺はたとえ反対されても美桜とは別れない」
私たちの言葉を聞いて、一馬さんの表情が緩んで笑顔になった。
「実は自分も昔、美桜さんと同じようなことを言った。会長に結婚を反対されたからな」
「そうだったの?」
「ああ。どこの馬の骨かわからんやつに、娘はやれん!って」
どうやら桔平さんもこの話は初めて聞くようだった。穏やかな優しい表情で、一馬さんが話を続ける。
「あざみはお嬢様らしくなくて、憎めない性格でね。好きになってしまったから、いくら反対されても、どうしてもあざみと結婚したかったんだ。だから頭を下げ続けた。何度も何度も。身分違いなのはわかっています、地位も名誉もなにもいらないので結婚させてくださいとお願いし続けて、やっと認めてもらえた」
本当だ。言葉は全く同じではないけれど、内容は先ほど私が言ったことと酷似している。
昔の一馬さんも同じだった。
愛しているから、他にはなにもいらないからあざみさんのそばにいたい、その気持ちだけだったのだ。
「野望はなかったの? 会長の周りにいる人たちはみんな言ってるよ。娘婿の青砥一馬は会社を乗っ取る気だった、って」
私は桔平さんの発言に、驚いて目を見開いてしまう。一馬さんがそう噂されていることを、桔平さんはずいぶん前から知ってたようだったから。
「そんな気はなかった」
一馬さんが笑いながらそれを否定する。
「ただ、義父の会社が大きくなればいい、手足になって働きたいと思ってただけだ。誤解されてしまったけどな。それでも、あざみとの結婚を許してもらえただけでありがたかったから。左遷されてもがんばることができた」
本当に、純粋な愛だったのだ。
あざみさんへの、崇高な、深い愛……それが当時の一馬さんの原動力になっていたのだと思う。
一馬さんの気持ちも、あざみさんの気持ちも聞けた。
だからこそ、私の気持ちもきちんと伝えなければと思った。それが誠意だ、と。
「私は、桔平さんを愛しています」
私は他にはなにも持っていないけれど、桔平さんへの愛情は溢れるほど持っている。
「心から愛しています。だから、桔平さんの隣にいさせてもらえませんか」
懸命に堪えていたのに、ついに目から涙が零れ落ちた。ここで泣くのは卑怯な気がして、両手で頬の涙を素早く拭う。
「俺も。美桜を心から愛してるんだ。本人同士が愛し合ってるかどうかが問題だから、俺はたとえ反対されても美桜とは別れない」
私たちの言葉を聞いて、一馬さんの表情が緩んで笑顔になった。
「実は自分も昔、美桜さんと同じようなことを言った。会長に結婚を反対されたからな」
「そうだったの?」
「ああ。どこの馬の骨かわからんやつに、娘はやれん!って」
どうやら桔平さんもこの話は初めて聞くようだった。穏やかな優しい表情で、一馬さんが話を続ける。
「あざみはお嬢様らしくなくて、憎めない性格でね。好きになってしまったから、いくら反対されても、どうしてもあざみと結婚したかったんだ。だから頭を下げ続けた。何度も何度も。身分違いなのはわかっています、地位も名誉もなにもいらないので結婚させてくださいとお願いし続けて、やっと認めてもらえた」
本当だ。言葉は全く同じではないけれど、内容は先ほど私が言ったことと酷似している。
昔の一馬さんも同じだった。
愛しているから、他にはなにもいらないからあざみさんのそばにいたい、その気持ちだけだったのだ。
「野望はなかったの? 会長の周りにいる人たちはみんな言ってるよ。娘婿の青砥一馬は会社を乗っ取る気だった、って」
私は桔平さんの発言に、驚いて目を見開いてしまう。一馬さんがそう噂されていることを、桔平さんはずいぶん前から知ってたようだったから。
「そんな気はなかった」
一馬さんが笑いながらそれを否定する。
「ただ、義父の会社が大きくなればいい、手足になって働きたいと思ってただけだ。誤解されてしまったけどな。それでも、あざみとの結婚を許してもらえただけでありがたかったから。左遷されてもがんばることができた」
本当に、純粋な愛だったのだ。
あざみさんへの、崇高な、深い愛……それが当時の一馬さんの原動力になっていたのだと思う。
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